1037トリニティ。 ミコッテ達の思惑だったり、違ったり。(オチ。

「探しものはなんですか?」
有名な叙情詩の一節。
つづいて、「見つからないものですか?」ときて、
「それでは、その「何か」を見つけに参りましょう。」
と始まる、今でも好まれる詩。(特に女の子に。)

酒場に常駐している吟遊詩人や、流しの詩人でも定番といっていい。
最後には、「それは、貴方の中にあり、それを広げる事で貴方は本当の自分を知るのです。」
と締めくくる。
(ココの「貴方」、を「貴女」に置き換えるのは定番ながら、グっとくる。)

寝台から転げ落ち。
私は目が覚めた。
この詩は、たしか1年前くらいにクラスメイトと一緒にリクエストをしたのだ。
理由は、詩人がカッコヨカッタから。


私、レオナ・レオンハートは、恋というものに憧れてはいるものの、こう。「きゅん?」と言うのがない。いや、あったかも知れないが・・・・

例1 カッコイイ先輩エレゼンだったが、(勇気を出して)喋ってみたら、女言葉で妙にシナを作ってきて、「あのスカート、いいよねェ~」と来たもんだ。
思わず、「ゴミが。」と蹴ったら「ひど~い!」と言って泣き始めたので、収めるのに時間がかかった。

例2 ヒューランの斧使い。筋骨たくましいけれどムキムキじゃなく、しなやか爽やか系。
港で見かけて、気になったのでしばらく見ていたらどうやら船員らしい。船に貨物を運び込んでいる。
なんで斧使いとわかったかといえば、このリムサ・ロミンサでは船乗りは大抵そうだから。
職業的に荷運びというのもあるが、その指示を出してかつ船にも頻繁に。
 話しかけてみた。(がんばった)
「ああ、どうかしたかい?お嬢さん。 ちと今は立て込んでいてね。 ああ、長旅になるから・・4,5ヶ月は戻らないかな。」
没。そんなに待てない。


例3 ~~~~ 例4 ~~~ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「探しものは何ですか?」


しかしだ、脳細胞諸君。聞き給え。私の中では「コレ」が到来したのだ。
寝着のまま、床を転げ回る。

そして、ゴツっ!という音で(衝撃も)本当の意味で目が覚めた。

「いつつ・・・」
目の前には、寝台の足。
落ちるだけでは物足りなく、ゴロゴロした結果、寝台から「そろそろ起きなよハニー♪」と言われた感覚だ。
「ちぇ。」

窓を見やれば、日が昇ってまだ少し。我ながら早起きだとおもう。ということは時間がある・・

「あの人、アリティアさんかあ・・・」
とりあえず、名前は知らないが手がかりはできた。
こうなれば後は行動あるのみ。

ただ・・・。

どういう行動に出ればいいのかがサッパリ思いつかない。
ただ単に、商社に出向いて。コレコレこういう人いませんか?
いや、無いわ。
となれば・・・

ぶっちゃけ本番!
うん。そう!!コレだ!!

ただ、何にぶっちゃけるのかが決まっていないのは内緒だ。



顔を洗い、朝食をたかりにビスマルクに。

「レオナ、今日は早いな?」
「うん、早起きしちゃった。」
「参ったな、コレは嵐が来る。」
「なんでよっ!今の暴言に対して、私は朝食を無料で供出することを所望するっ!」
馴染みの給仕のエレゼンの男性は。
「はいはい。嵐が来たらオレの勝ちだからな。明日はパーティーの予約がある。そこでタダ働き。」
「えー!!!ありえなーい!!!」
「うるせえ。」
「お客様に対して、その言葉遣いはどうかと思うの。」ぷんぷん。
「それは、金払ってから言え。」

確かにそうですね。はい。


出てきた朝食は、普通のセット以上に豪華。 コレは、ガチで明日の手伝いをタダでやらせる自信が・・・あるんだろうね・・・・・

「ごちそうさま~」
エレゼンの給仕にこっそり。(明日のパーティーって、どちら様?)「あ?アリティアさんトコと、ウルダハの重鎮さんだって。っと。この話はヨソに漏らすなよ?」
「わかってるって!」

ふ~ん、なるほど・・・では先日のアリティア産業の面子はこの打ち合わせに・・なるほど・・

コレは、逆に「嵐!嵐!!来い!!」リムレーン様に祈りを。(不敬かな?)

いやまあ、そうじゃなくても人手はいるんだろう、なのでサービス朝食。でしょ。
いよっし!



場所は、アリティア産業本社、社長室。

「本日の業務ですが、物産に納入などのチェックリストの確認です。」

濃いグレイの髪のミコッテの女性は、黒髪の同じくミコッテに。

「ああ、セネリオ。わかっている。もう、毎日がそればかりだ。・・・・正直、視力が落ちそうだ。」
「老化。」
「待って!せんちゃん!?ソレって、ヒドくない?」
「私は気になりませんでしたが。」
言って、両手で抱えた書類は腰から胸までもある。

「ああ。わかった。」社長、マルスはこんな朝っぱらから大量の書類に「認印」をしなければ。
ウルダハの資産家に一口乗って、遊戯施設を。 
ハイリスク、ハイリターンだが、上手く立ち回れば大丈夫だろう。
なにせ、かの「剣聖」が婚儀の式場としているのだし。
広告費はタダ、出すのは建材でコレも売上に計上。問題は、出来上がった「容れ物」の運営費。
10年いや、5年で儲けを出して、後は売却。
廃れる前に売り抜ける。

考えが浮かんでいるところに・・・
「あの、社長。」濃い桃色の髪のミコッテ女性。線が細い見た目だが、なかなかどうして。
「ああ、ユキネ。なんだ?」
「はい。明日のパーティの件です。」
セネリオ付きの次席秘書。
「ああ、マンダヴィル卿と、な。かの御仁は本当にお一人で参られるのか?」
「ええ。らしいです。」
「・・・・卿らしいな・・が、正直あの御仁は、たまに何を考えておられるやらわからんしな。」
「社長?」横から氷点下の声。
「あ、せんちゃん?今の、アレ、なし。ナシ。ね?」
筆頭秘書の眼は笑っていない。
「・・・・ユキネ、明日の社長の衣装合わせは任せる。それと、お前も出席だ。」
「はい・・ぇ・・?」怯えきっている彼女に。
「秘書だろう?」てきめんな一言。
「はいっ!」
一拍。
「エレン氏はどうされます?」
セネリオの一言に、社長は苦虫を噛み潰して・・
「・・・」

「分かりました。彼は「急病」にて欠席。」
「できれば、今日中にドコかの街に・・・エールポートあたりにでも使いに出すか・・」
「賢明な判断ですね。」
筆頭秘書は、ささっと書類を作ると、「これをエレン氏に。」部下に渡す。

ユキネは、戦々恐々・・・。でも。
これで。

社長室は、通常運転で仕事をこなしている。



「え~!エールポート?何?美味しいものあるの?」
桃色のミコッテの青年。尻尾をゆらゆら。

「社長、直々の、お仕事、の依頼、です。」ゆっくりと噛んで含めるようにユキネは、社長の実弟でもあるこの気まぐれな青年に、仕事を伝える。
「あ、じゃあさ!ユキネちゃん。一緒に行かない?」あけらかん。
「・・・エレンさん、申し訳有りませんが、この後も仕事です。」
「ちぇ~・・」

仕方がないので、そのあたりをぶらぶら。
昼過ぎに船出、ね~。
そこに。



う~ん、う~ん、
私はだね、そう。こう、ビビってきて、グっとくるのが、恋愛の醍醐味だと思うわけ。
かの叙情詩にあるような。

そう思うと、明日のパーティーで一人の給仕は。
今思うとピンと来ない。
午前の授業をそんな考えで過ごしながら(授業の事は・・・後で兄にでも・・・パールで。)
試験も近い中(なんだかヒマさえあれば試験、試験と言ってくるあの連中は、絶対オカシイ。)
昼休み。

東の空を見る。
嵐の予兆みたいな雲は見えないし、潮風も南風だ。嵐の来るはずもない。

明日のバイト代はしっかり頂いて、朝食代はタダ!
最高のシナリオ!
ふふふ。 給仕のエレゼンの悔しがる顔が目に浮かぶ。

調子に乗って。

「お昼、いい?」
「お前な?」
「賭け、勝ちっぽいしー?」
「なるほど。本当にいいんだな?」
「ったりまえ!」自信満々。
だって、この天気から崩れる理由がない。

「吠えとけ、レオナ。泣きっ面かくぜ。」
エレゼンの給仕はしばらくしてランチを持ってくる。
「いただきまーーー~す!」
「ああ。」

うん、やっぱ美味しい。さすがのビスマルク。
ランチとはいえ、そのへんの店のディナー程度の値段を取るだけはあると言うものだ。
「じゃ、ごちそーさま!」

「ああ。」
サービスマンにあるまじき、無愛想な返事が来る。
しかし、賭けに勝ったのだし。ソコは、こちらもドヤ!って返す。


そして・・・午後からの課題は、エールポートでの実地だったかな?

小腹休憩を挟んで、移動術式を・・・


現地に居た師から、カーバンクルの使役をなんやかんや。討伐手帳、ね。
まあ、カー君と戯れてこい。

楽勝すぎるうえに、ほとんど自由時間。コレはアレだ。
明日のための準備期間だね!

陽が少し傾きかけた頃。
なんだか、風が強くなってきて・・?

ん?ヘンな雲行き・・・・?


ぶふッ!!アッチ・・・リムサ・・・なんで黒雲が来て・・・って、嵐?
なんてこと!
いやいや。まだ決めつけては。 
カー君を呼び戻し、手帳の対象の残りのカウントをしていく。

そこに。

じゃり。

イヤな音と、予感。

動いてはだめ。黙って、静かに過ごすのだ。でも。
つい。
振り返ってしまう。

そこには・・・・

黒光りする兜。
おそらくは、ルガディン用だろう。私じゃ大きすぎて、かぶるという発想すら浮かばない。
が、その下から覗く黄色ぽいハサミと、視点がドコなのかわからない眼。
コレは・・・出会ったらダメなヤツ・・・「死の兜(ダークヘルメット)」

完全に硬直・・・・ああ、こんなコトなら。もっと贅沢して、彼(桃色の!)にアタックしに行けばよかったあああぁぁぁっ!!

逃げたらダメなのはわかっている。
そんなことをすれば、たちまちのうちに襲いかかられる。
この凶悪な甲殻類は、常に動くもの、それもヒトを襲う。

聞いてはいたけど、目の当たりにするのとは全く違う。

限界。

「きゃあああああぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」
涙まじりの絶叫が・・

背後から、ガザゴソという音が聞こえてきて、主を守る術式を組み込まれているカーバンクルが健気に足止めをしようとする。

しかし。

「きゅん。」という声と共に精神感応が切れる。
その間に逃げれたのは、一歩だけ。

次は、自分の番。

ああっ!リムレーン様!明日からは食い意地張ったりしないから、たすけて!!!



「護ってあげて。」
優しい声。そして、防御術式が・・

周りの砂利達が目の周りをクルクルと渦巻きながら展開。
え?

「う~ん、カワイコちゃんに、悪さはよくないなあ。」
この声を元に術式を展開、暴風が甲殻類に襲いかかる。
「だから、大人しく転がってよ。」
次々と術式が展開していき、兜をかぶった魔獣はそのネーミングにもなった兜すら吹き飛ばされ、もはや起き上がる気配もない。

まさか。

今のは・・・
声がした方を向いてみる。
そこに居たのは・・・・

麗しの彼。

「あ、あの・・」ダメ、なんて言えば?ああ!もう!!!!!

「あ、大丈夫?」飄々とした声。

「はいぃ!どっこも怪我なんてしてないんで、抱っこして介抱してとか、言いませんよ!」
あ?
「ん?」
「ああああ!!!いえいえいえいえ、何でもないんですうううう!!!!ありがとうございましたあああああ!!!!!」
もう、パニックだ。

「ああ。いいよ。ヒマだったし。君は?」
「あ?うぇ?あああ、私、レオナ。です!」
「そう、レオナちゃん。この辺りはタマに危ないのが出るから深入りしちゃ、ダメだよ。」
「あ。。あの・・・」
「あ?ああ、僕?エレンだよ。」
「ありがとうございました!!(やった!名前が聞けた!)」
「うん、どうせヒマだし。明日からはしばらく此処でお仕事だって。困っちゃうね。あ、君には関係ないよね。」


・・・・・・関係大有りです。しかも、リムサで嵐が来てるとなれば・・・・・・

しかしせっかく。
(恋人は居ますか?)なんて、聞くのはムリだ。

「あ、うん。僕のことなら気にしないでね。年下は好みじゃないんだ。」

は?

「あれ、コレは言ったらダメなんだっけ?お姉も、この辺はしっかりと説明するべきなんだよ。」

彼の独り言は、風に溶けて消えていく・・・・

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