927セブンス。少女たちの日常的な・

ミコッテの少女、ナオ・ガムドゥラの朝はそれなりに早い。
どちらかといえば、朝は苦手なほうなのだが、目覚ましにドアがノックされる。

ここは森の街、グリダニア。
裕福な家庭ならば、窓にガラスを貼ったりするものだが、ここの家主は「この空気が好きだ。」と言って、
窓は獣が入らないように細めの切れ目が入った木戸になっている。
先の大戦で家族と家を失った彼女は、居候のためこの点で文句を言える立場でもなく、そして家主である彼女にも大変な敬意を払っている。
そこそこ広い個室、衣装棚、寝台に食事もつけば、他に求めるものがそうそう思いつかない。しいていえば、連れ添いの男性だが・・・さすがにこんなことは・・

そして、目覚ましのノックが続く中、寝台から降りる。
スッポリとした短衣に下着だけというおざなりな、そしてボサっとした髪を意識はしつつ、そのノックの「相手」には、それほど遠慮はいらない。
そのままドアを開けに行く。もはや、毎日の行事のようなもの。
「おはようございます、お嬢様。」

ナオは、この家。ミューヌという女性の家に居候をしている。
そして、彼女には内縁の(正式に婚姻したわけではなく)主人と(今は冒険にかかりきりで基本、別居だという)の間に産まれた娘との3人暮らしだ。
そして、何もかもを失った彼女は、彼女の経営する「冒険者」達のためのカフェ・カーラインに自分を雇用してもらい、かつ、家の一室まで提供してくれた。
この恩義に報いるためにも、職場での勤務以外に、ハウスキーパー、というよりは、子守の手伝いもしている。
すでに、1年は経つが・・この、息女の行動力たるや凄まじい。

とりあえずは、幻術士ギルドを兼ねる瞑想窟に併設してある学校に送り届けたあと、カフェで仕事をこなし、迎えに行く、のが基本ではある。
だが、応用編として、やけに目覚めの早い今年で3歳だろうか?の女の子はまず起きた(主人は寝ている)その時に、自分を起こしに来る。
そして、学校に行くまでの遊びの相手をねだるのだ。

起きたての幼女、ローゼが夜着のまま廊下に立っている。
「ナオ、起きてる?」彼女の声に「はい。お嬢様。」と答え、自身も寝着のまま、ますは一緒に顔を洗いに。
そして、着替えを手伝い(自分も着替え、ついでにいえば、ローゼの服の半数以上は自分の部屋にある)
「今朝は何をしますか?」「んー。だっこ!」「はい。」小さなエレゼンの子供を抱えながら、次の予定を考える。
もう少しすれば朝食の時間だ。それに間に合うように準備と、この子を大人しく主人の元に戻してあげないと。

ミューヌは、この「遊び」を知ってはいるものの、自分ではあまり参加したがらない。
家族を失った彼女が、家族を実感できる時間、と考えてのこと。もちろん、自分も参加したい事この上ないが、そうすればナオは遠慮して、ただ見つめるだけだろう。
ならせめて、その「見つめる役」は自分がすべきだと。娘との対話はちゃんとしているし、このわずかな時間くらいは、彼女の心を癒すべきだと。
ミューヌはいつものパールでの連絡で、アルトに(今日も和やか、だよ)と伝心した。

(それはいい話だね。近いうちに会いにいく)とだけパールから。受けて身支度を始める。
なにせ、カフェの朝は早いのだ。

ナオがいろんな仕事?をこなしてから出勤、そして、夕暮れ近い頃。
「ナオ、おっつー!」と、黒髪のミコッテの先輩であるオーアが。
彼女と、イーリスという赤毛の少女が、主に夜間の出勤で。
彼女たちは、どちらかといえば、「天然」「奔放」な性格を文字にして、ヒトのカタチにすれば、こうなるだろうな、なんてナオは思う。

他人から言わせれば、以前に寿退職したエレゼンの美少女カナーリエンフォーゲル(通称カナル)
みたいな毅然とした態度+「私って、看板娘ですよ」な高め目線が「イイ」そうだが。
もちろん、それはカフェの常連の(オーアは知っているが)の評判であり、彼女自身は知らない事でもある。

「それでは、お先に失礼します。」
一礼して。
店主、ミューヌにも頭を下げる。

この後はローゼ嬢を迎えに行き、夕飯の支度。
軽く息を付き、エプロンを外して、もう一度メンバーに一礼。

瞑想窟まで行き、ローゼと手を繋ぐと「今日はご飯は何がいいです?」
「んとねえ。おさかな、まーまみたいなの。」
それはつまり、カーラインカフェ自慢の「ミューヌ手作りフィッシュフライ&タルタルソース」ってことね・・
ハードル高っ!とは内心で「わかりました」と、なんとか、市場に行って食材の仕入れを。


「娘さんとナオ、結構仲いいみたいじゃないんですか?」
少し手のすいた時間に。
「ああ、そうだねえ・・ホントは家族そろって団欒がいいんだろうけど・・ああ、わたしの事じゃないよ。彼女の。」そうミューヌが告げる。
彼女は、対外的には男性めいた言葉遣いをするが、オーアを前には少し珍しい。多分、内容が内容だけに、か。
「ですよねー・・」(わたし的には、それこそ生き分かれに近いミューヌにも、団欒がほしいんじゃないかな~なんて。思いつつも、自分もそろそろ相手がほしい・・)
「まあ、みんな協力してなんとかやってる。それはいいことだよ。」締めくくるカフェの女店主。
オーアは納得して、頷き「ですね。」

そろそろ、トラブルメイカーの少女、イーリスがやってくる・・・

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