「そーいえば、最近キーさん、来ないですね。」
「アイツが来テ、なンかイイ話があったか?」
「それはそうですけど・・、お仕事来ないと干上がりますよ?」
「平和でいいじゃねェか。」
グリダニアのとある「家」
黒髪の美女と、茶色いミコッテの会話。
内容的には「日常的」といってもいいが、「本当の内容」は物騒に事欠かない。
茶色のミコッテは「裏の情報屋」、黒髪のヒューランは「殺し屋」
この組み合わせで、いわゆる日常的な「仕事」とは、当然の事ながら「始末」だ。
そこに。
「お嬢様、お待たせしました。」
エレゼンの女性がリビングに入ってくる。
白銀の髪に漆黒の肌のエレゼンの女性は、給仕服に身を包み、かしこまって入ってくる。
漆黒の髪に、白磁のような肌を晒すような奔放なヒューランの女性とは対極的だが、彼女の言う「お嬢様」は彼女ではない。
全身茶色で、碧眼のミコッテだ。
「アー、ベッキィ?その包みはサ、あれだ。傾けたらマズイヤツじゃないのか?」黒髪の女性、フネラーレが。
「え?」斜め45度くらいに傾いている包み袋からは、かなりの量の液体らしきモノがこぼれている。
「あちゃー やっぱり、わっちが行くべきだったかな。」
ベッキィと呼ばれるエレゼンとミコッテのやりとりに「いつもノ事カ。」と、すんなりスルーする。
午後のオヤツ、ということで新しいスイーツを見つけてきたミコッテ・・・ショコラがその話をすると、「明日に買いに出かけます!」とエレゼンの給仕が。
「ったク。」
「裏の」なのに、食べ物関連ばっかりの情報には常に最先端な情報屋。
「給仕」のくせに、食器や食事をダイナシにするのが得意な格闘女性。
「殺し屋」ってのに、ドライになりきれないウェットでソフトな自分。
そこに。
「あ。いやあ・・その。わたし、ああ、その。なんていうかな。ゴメン。」
もう一人の女性。黒い肌のミコッテ。金髪は短く。普段着なのだろうが、やや肌が出ている。
「シックス、お嬢様の前でそそうはなりませんよ!」給仕娘の声が飛ぶ。
「あー、ゴメンってばあ。それにしても兄妹っても全然違うね。」
「失礼をするなと言っただろうがっ!」キレて胸ぐらをつかむ給仕に、銃を突きつけて「あンだ?コラ?」
この、少々どころか、自分とも確執のあるミコッテの女性がなぜに「家」に居るかだが。
フネラーレは、目の前のケンカを楽しそうに見ながら。
(元海賊の彼女は、このテの事は日常で、いちいち突っ込む場面じゃない、と思ってるし、見物する方が楽しいとすら思っている。)
ある事情で「持ち家」を手放し、雇い主からも追い出された彼女を受け入れる事が出来そうなのは、この「家」くらいじゃない?なんて。
かの「迷惑来訪者」がのたまったのだ。
「シックス、ベッキィ。この辺にしとこうよ!わっち、お茶も欲しいし。」ショコラの声に「はい!」「お前は食器にさわんな!」とまたケンカになりそうな二人に、
いい加減面倒くさそうに「僕がやル。」
席を立つ。
フネラーレは憤懣やるかたなしにキッチンに向かい、ポットで湯を沸かす。
適当なティーカップだが、元々一人で住んでいたのに、なぜに「4人目」まで。
ショコラの選んできた茶葉で適当に淹れた香茶は、やっぱり「それなり」な味だが、いい香りはする。「デ?」
二人が買い出しに行っていたスイーツの内容は・・・
袋から取り出したそれは、青い「タケ」と呼ばれる物にはいってる、なんだかゼリーっぽい黒い、いや、紫に近い黒。
「ヨウカンというらしいのです。」
「東方ではポピュラーらしいのよ。」
二人して少しバツの悪い表情で、布巾でタケの器を拭いつつ、テーブルに並べる。
少し目減りした「ヨウカン」だが、味の方は問題なく。
「うまイよ?」「でしょー!わっちの情報力はすごいのにゃ!」「お嬢様、さすがでございます。」「あー、甘いものって、久しぶり・・・」
なんだか微妙な女子会は「今夜の晩飯なンにすル?」という、フネラーレの一言で波乱を迎える。