894セブンス。戦の始まり~嵐神へと突き進む!

轟轟と風が吹き荒れる竜巻にも似た嵐が目の前に。
「おいっ!」ヒゲの船長が舵を手に。そしてゴーグルをかける。
「手前らっ!衝撃に耐えれるように何かにしがみつけっ!思った以上に!コイツはシャレにならねえっ!!」
もう目の前だ。あの中に何があるのかは全員が承知している。其処には・・荒ぶる蛮神。
「きゃあああっ!」エレゼンの剣聖が悲鳴をあげるが、隣のミコッテの青年が必死に抱き抱え、歯を食いしばっている。
「エリス!楽しいなっ!こういう遊戯を提供するってのは、いい商売じゃないかあ?」「社長!死者が出ますっ!ってか、怖いですっ!なんでそんな余裕あるんですかあ!」
「コイツは・・確かにシャレにならんわな・・」冷静にバーに掴まっている拳聖。
「・・・・・!!!きゃあ!」揺れる船体に翻弄されそうになるのをマストにロープを括りつけておいた白魔道士のミコッテは目を瞑り、
この悪夢が早く終わることを必死に願っている。
「お姉ちゃん、大丈夫?」「楽勝やっ!」大柄な妹はかなりしっかりと棒に捕まっているが、小柄な姉は今にも吹き飛ばされそうだが、意地でもって耐えしのいでいる。

伝声管から「親方!機関部は異常ナシですぜ。もう少し出力はあげれますが・・船体の穴が怖いですね。」
計器に張り付いているララフェルは「こっちも大丈夫ッス。ジブンが吹き飛ばさなければッス!」
「じゃあ、行くぜ!」シドはエンタープライズ号を嵐の中心へと・・・

音はしなかった。ただ衝撃と振動だけが船体を。

右に左に大きく揺さぶられる舵を必死に直線に保つシド。「こりゃ、たまんねえ航海だっ!」
が、次第に風が弱まっていく。
嵐でも海の大渦でも、中心は意外と静かなものだ。
「乗り切った、ぜ!みんな!」
全員が顔を上げる。
「目標はあの浮島、だな。直接着ける時間はおそらく短すぎるだろう。今のうちに降りる段取りしとけよ。
終われば、飛び降りれる場所に船を近づけるからな。俺ができるのはここまでだ。」
岩でできた大きな浮島。石柱がそこかしこに立ち並んだ平面上の頂点が見える。そして、その上には風のクリスタルを思わせる淡い緑の光点が。
それがこちらに気づいたのか、段々膨張していく。
「よし!今だっ!」平面スレスレに高さをあわせ、速度を落とした艇から皆が降りていく。
「じゃあ、幸運を祈ってるぜ!8人分の運賃はしっかり貰うからなっ!」「ッス!」「割高にならねえようにな!」

「言われちゃったね。」「彼らなりの応援なんだよ。」「この経費はアリティアでは持たんぞ?」「社長。今から社員割引っていいんですか?」
「・・・みなさんの命はわたしが・・・」「あんまし、自分を追い詰めんなや?」「お姉ちゃん?」「ぐ・・・酔った・・・」

岩のようなものに見えたが・・・これは岩なのだろうか?そんな円形の舞台のような場所。
嫌な記憶が剣聖に・・・(リガルド・・・今度はちゃんと護るから)

その全員を見下ろすように、淡い緑の光の塊が徐々に形を整えていく。
翼を広げた大きな鳥・・いや、乙女のような形を徐々に・・
神々しいはずの「神」の降臨の後半は・・
邪悪に満ちた眼差しと、悪意に満ちた言葉、そしてその禍々しいカリカチュア。
神の模倣をしたとして、これだけの威圧感と敵意を表現できる彫刻師はおそらくいないであろう、凶悪の女神が降臨した。
「我が領域を侵しに来たクソムシ共。何用とは聞かぬ。ただただ、嬲り殺してやるわ。」
開口一番、暴風が翼から叩きつけられて・・・

「おい、ミー、それにユーリ!ちょっとあいつの視線引きつけてえや!うちらでケツにぶち込んでやる!」黒魔道士、ユーニが叫ぶ。
「ちょっ!下品ですってば!」「任せとき!お姉ちゃん!」
「んじゃ、うちらもケツに火つけたろか。」「エリさん・・271の頁、イフリート・エギ、火炎の欠片よ!」「社長!今回はツルハシ無いですよね!?」
「エリス!次の査定が何時か知ってるよな?」淡い青色の防御術式が張られて「皆に土の加護を!」周りの岩?の欠片が皆を取り巻くように。

「笑止。我が歌に酔いしれるがいい。光栄だろうが!」人間には聞き取れるかどうかの高音域の歌声が響き渡る。
「な!?」立っていられるのが不思議なくらいな衝撃が訪れる。
「マズイ!次、あの歌をまともに聞けば立ってられん!其の辺の岩場に隠れて耳を塞げ!」社長からのアドバイスに皆がうなづく。
「はい!させません!」剣聖が愛剣ジュワユースを構え、背後からの一撃。
「ほほほ!イキのいいコトよの。ムシケラ風情が!」バサリ、と翼を震わせる。すると翼から抜け落ちた羽根が・・・
「ぐ!?」剣聖の肩鎧を貫いて血飛沫を。「ミー!」拳聖が羽根を叩き落としに。
「癒しをこの手に!」リトリーが素早く回復術式で癒し、「こンにゃろお!」斧を叩き込むユーリ。
「132の頁、ミアズマの手を。」リガルドも恋人のいきなりの負傷に術式を展開。「テメエがクソや!」広範囲氷結術式。
「我は癒すもの。」社長の広範囲回復術式。「わたしもいるんだよー!」エリスが近場の岩場からジャンプし、蛮神に拳を振るう。

「おお、愉しませてくれそうよな?もっとじゃ。もっと悲鳴を撒き散らして、我を愉しませるがよい。」その声と共にバサリ、と音を残して姿が掻き消える。
「な!?」「どこに?」「気をつけや!」「これは・・裏手だ!」「まさか!」「いいから岩陰に隠れろ!またくるぞ!」「やるやんけ。」「読み筋や!」氷結術式。

ぶおん。

暴風が吹き荒れる。そして・・・またしても目にも止まらない速度で移動をし、羽根を撒き散らす。

「くっ、たまんないわね!」舞い散る羽根は攻撃担当のメンバーに任せ、自分はジュワユースを振るいながら蛮神の直接攻撃を引き受ける。
少し離れてユーリも斧で攻撃しながら時折おちょくるかのように罵声を浴びせ、交代で猛攻を凌ぐ。

女性を醜悪に、悪意を持って模したかのような蛮神が吠える!
「このッ!その首ッ!その四肢ッ!引き裂いてくれるッッッ!!!」

ぐっと翼を畳むように身に纏うと、一気に広げる。
「まずいっ!!!みんな、隠れて!!!」ミーランの悲鳴のような叫びの後・・・

空間が軋んだような音と共に爆砕する。エリアルブラスト(空間破砕)

「あーっはっはっはっはっは!!!!」蛮神の笑い声が響き渡る・・・

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