ストーンヴィジル。
イシュガルドの誇る対竜族城塞だったのだが、先の大戦で破損し、逆に竜族に席巻されてしまった。そんな「元」城塞を攻略するハメになったのは、更なる驚異。
嵐の蛮神ガルーダに対抗しうる「船」を手にせんがため。
エンタープライズ号と呼ばれる高速飛空挺。その設計者であり、稀代の機工士と呼ばれるシド・ガーロンド。
その彼と弟子達とこの「不時着した」場所がこの城塞だったりするわけだが。
どういった訳か彼らは散り散りになり、合流を果たすもこんな状況だ。
つまり。
「なあ。アレ、さっきのヤツやんな?」
目の前に大広間があり、黒髪のヒューランの女性はボヤく。
先の戦闘で上空から炎の吐息を吹き散らし、対空砲?とやらで撃退された竜。
青い鱗に長い首。コウモリのような翼を持つその姿は、幼少の頃に聞かされた英雄伝にでも出てきそうだ。まあ、彼女はそんな英雄伝など知らない。
「やっかいだな・・」ヒゲの機工士。
寝ているのか、はたまた先の砲撃での傷を癒しているか、ぐったりとした竜。
そしてその先には。
大きな船体が。
「親方っ!エンタープライズッス!」「バカ!声がでけえ!」ララフェルとルガディンの機工士達。
「お前ら、二人共声がでけえ。アレか・・しかし・・まだ記憶が・・ん・・触ってみないと、な。」
「わかったで、おっさん。とりあえずあのデカブツはお休み中や。うちらが注意しとくさかい、はよ直してトンズラ決め込もうや。」
ブロンドの少女ユーニに「せやね。」と妹ユーリ。
「どっちにしても、早よせんとな。」エレディタは警戒を。
「こ・・・怖いです・・・」白魔道士のリトリーは尻尾を震わせながら。
そこに。
せっかくの舞台じゃないか。楽しませてもらうよ。
「震えろ。」漆黒のカウルを纏った人物の声と共に竜が目覚める。
「なんやアイツ!」エレディタが吠え。
「くそったれが!おっさん!走れ!船さえなんとかすれば、うちらはうちらでなんとかするっ!」ユーニの声に
「任せとき!」とユーリが斧を構える。
「もう!ホントにムチャクチャなんですからっ!(でも・・兄のためにみんな・・)」
リトリーが防御術式を組み上げる。
「任したぜ!お嬢さん達!おっさんの意地ってヤツを見せてやるぜ!」
「おう!」「ッス!」「すまない、君達。」
「コイツは・・・見たことあるぜ。いや。知っている。」シドが冷静に。
「こっちは任せてくだせえ!」機関室に走るルガディン。ビッグス。
「こっちもッス!」ララフェルのウェッジが計器類をいじり始める。
「俺もうかうかしてられねえな。挫傷した部分は今はなんとも出来ん。が・・動くか?」
シドは操舵版周辺をチェックしている・・・
「早くしてくれねえと、コイツはマジでやばいぜ?」ユーニが氷結術式を展開するが、この竜は氷属性らしく効果があまりない。
「うちも引きつけるだけでいっぱいやでー!」ユーリの悲鳴に
「うちかて!こんな硬いの叩くのはしんどすぎやって!」エレディタもつい弱音が。
「皆さんを助けてくださいっ!」広範囲回復術式でサポートをするリトリー。
「女の子の悲鳴なんて、聞きたくないな!てめえら!」シドの声に。
「もちろんでさあ!」「ッス!」
「彼女達に栄光を・・・」魔力回復術式を唱える少年。
「まだかっ!」ブロンドの少女はこの一声でフリーズの術式を放つ。取っておきの一撃。
竜の攻撃が一旦止まる。
「お嬢ちゃんに言われると、猛るね!」シドが応え「親方!もうすぐッス!でも今のは・・」「同感。」
「よし!お嬢ちゃん達!こっちに走れっ!すぐにでも飛べる!」シドの叫びに。
「助走もナシかよ!」エレディタが笑いながら駆け出す。白魔道士の少女の手を引っ張って。
「うちらも行くで!乗り遅れんなや!ユーリ!」「わあ!待って、お姉ちゃん!」
ガアアアッッ!!!
氷の城塞と化した、ストーンヴィジルの主。巨大な竜が、起動したエンタープライズ号に襲いかかる。
「まってましたよ!ってんだ!」巨大な砲を構えたルガディン。先の広場にあったカノン砲を持ってきたようだ。
ドガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!!!!!
「弾はこれだけ、だな。が、落ちるのに十分だったみたいだぜ。」「ッス!」
「お前ら、すげえな。」「親方ほどじゃねえッス。」「ですよ。隠し玉、持ってるでしょ?」
「ち。バレてたか。」落ちていく飛竜に止めの一撃を。
ばうん。
長大な棒状のそれは・・・
「対物狙撃用ライフル。ヘカーテ。まあ、人に使えばミンチ確定な武器なんでな。あんなバケモノにしか使わないように、ってシロモノだ。」
「よくいうよ・・・」アルフィノはウンザリした顔で。
「さて。そのえげつない武器自慢はええ。この先どうするんや?」
「エレディタさん。ガルーダの討伐です。それと、ミンフィリアの救援も必要です。ミンフィリアに関しては、レティシアさん達が動いているようですし、
彼女に任せておけば問題は無いと思いますが・・万が一もあります。とりあえず、僕達に出来ることをしましょう。」
「わかった。ガルーダ、やな?」エレディタは決意を示す。
「ええ。シド。このままガルーダの嵐に突入できるか?」
「ったく。ムチャクチャしやがるのはてめえらにお似合いだぜ。エンタープライズは多分この速度を保ってる以上、突っ込むのは問題ねえがな。
そのあとバラバラって事もあるぜ?」
「うちらがバラバラやっちゅう事もあるけどなあ。」ユーニの声に
「お姉ちゃんは、ホンマに言うことエグイわ。うちはかんべんやで。」
「私は・・ミンフィリア救援を優先したいのですが。皆の意見を尊重します。」リトリーが沈んだ声で。
「まあ、そんなおちこむなや。すぐに終わらせて、そっち行きゃいいんやろ?」エレディタが肩を。
「よっし!舵は決まった!ビッグス!方角は!」「もう少し東です!」
「ウェッジ!機関はどうなってる?」「最高速までもう少しッス!」
「頑張ってくれよ!エンタープライズ!俺の・・艇!!」
「ん・・・sdhjsdれhjdfjわjdgkzfれjmkdgkhys・・・?」
記憶が混乱している。まずは言葉を整えなければ。
「わ・・れ・・」
「ん?」
「ああ。そうか。」
「我は再びこの世界に呼ばれたのだな。」
「・・・・は・・・い・・・・ガルー・・・さ・・」
「貴様は何者や?」
「・・・おわ・・・です・・イクサ・・・の・・・」
「おお。我にクリスタルの。」
「はい・・・我ら・・長久の・・め、ご顕現・・・ます。」
「よい。汝らの勤め、しかと解った。」
「あり・・・しあわ・・」
「では、な。(クソどもめ)」
世界を、十二神と名乗る輩を壊して参ろう。
深緑の羽が舞い、嵐が吹き荒れる。