891セブンス。戦の始まり・・・2

「こっちでええんかいな?」
ブロンドの少女は妹に声をかける。

ストーンヴィジル。イシュガルドの対竜族の城塞だが、今や逆に竜族の巣窟と化してしまっている。

「お姉ちゃん、とりあえず一本道っぽいで。」斧を構えた茶色がかったブロンドの少女。
ハイランダーの姉妹は警戒はしながらも大胆に進んでいく。
「ホンマに面倒やなあ・・・」黒髪を乱雑に短く切った女性。先程の戦闘で竜からブレス(炎の吐息)を受け、火傷に顔をしかめながら。
回復術式で傷は癒されているが、やはりショック状態から立ち直るにはそれなりにメンタルでも治癒が必要だ。
毒づきながらも、足は進む。
「本当・・・みなさん、無茶しすぎですよぅ・・・」白魔道士のミコッテの少女はぜえはあ、と息も荒い。
魔力が枯渇するんじゃないかと本気で心配する展開で、できれば休息が欲しいところでもあるのだが。今は先を急ぐのが先決。
とりあえずポーチからエーテル薬の小瓶を取り出し、飲み下す。
味はイマイチだが、この際文句は言ってられない。

一本道とはいえ、少々曲がりくねった道中で、たまに竜族や、その眷属が待ち構えていて。
その度に斧使いの少女が飛び出して、注意を引きつけながら打撃を加えて。
姉の黒魔道士が氷結術式を叩き込みながら、裏手からモンクの女性が止めを刺しに行く。
この連携には白魔道士のミコッテも舌を巻く。手馴れた冒険者達だと。自分も迂闊なミスはできない、と気が引き締まる。

「お姉ちゃん!宝箱があるでー!」
「デカした妹よ!」
「トラップはあらへんやろな?」
「竜にそんな知恵は無いんじゃないですか?」
「そらそうやな。」

しばらく進むと・・・「お姉ちゃん。こっち、なんか広間があるで?」
「ふーん、なんやトラップくさいなあ。」
「あ、でもなんか結界みたいのがありますよ?進めないようになってるみたいですね。」
「要するに、相手せえ、ってコトやな?」エレディタは腰からナックルを取り出し不敵に笑う。
「やな。」「ですね。」「ええやんけ。」
「ほな、行こか!」斧を背中から取り出し、ユーリが広間に突っ走る。
「お、大物やんけ!」エレディタも突き進む。
「大地の加護を!」リトリーが防御術式の上書きを。
「楽しませてもらうで!」氷結術式を展開するユーニ。

「やれやれ・・彼女達はかなりのハイペースだね・・」
銀髪のエレゼンの少年は少し駆け足気味で。
竜族の死体の横をすり抜けながら、機工士達と先を急ぐ。
「女性に戦闘を任せっきり、というのも心苦しいな。」ヒゲの天才機工士。
「僕達にはまた違った役割がある。分担するというのはそういう事さ。」
「そうだな。」
「親方あ!足が棒になりそうッス!」「ウェッジ!情けない声だすなよ。」
前方で戦闘の音が響いてくる。

「む?」シドが見上げる。「アレは・・まずい!」

グアァッ!!!
広間で竜族と戦闘に集中している彼女達はこの襲撃に気づいていない。

「シブトイやっちゃな!」「鱗が硬いわ、ホンマに。」「風の術式まで使いよるしな!」「皆に癒しを!」

そこに飛竜が・・・

ドガガガガガガッ!!!!轟音が響く。
「な!?」「なんや?」「ちょっと?」「え~?」

「危ないところだったな。」対空カノン砲を構えたシド。城塞に備え付けだった対竜族用兵器。
「さすがシドだね。僕じゃ扱いきれないよ。でも・・今ので結界が効果を失った。張り直すのに少し時間がいるけど・・まだそのカノン砲が入用かも知れないしね。
できれば、目の前の竜にも使いたいところだけど・・」
「ああ。だがこれは角度的に上空用だ。水平撃ちはできそうにない。」

「ビックリしたー!」「ナイスアシストやけど、あぶないで?」「凍れっ!」「本当、危ないですから下がっていてください!」

しばらく後になんとか竜族を退治し、結界を解除。しばしの休憩。

「どこまであんねん?この城塞。」「さあ?」「そんなアホみたいにデカくないやろ?」「ですよねえ。」「そうだな・・構造的に考えて、そろそろ終点じゃないか?」
「親方、さすがッス!」「シド、この先にエンタープライズがあるとして、修理にどのくらいかかると思う?」「アルフィノ、それは見ないことにはわかんねえぜ。」
「俺達がなんとかしますよ!」「ッス!」

「まあ、うちらにはようわからんしな。任せるわ。」エレディタの声に
「任せとけ。」シドが応える。

遅めの食事を済ませ、最深部へと。



「ふふ。来たな。楽しませてもらおうか。」黒いカウルに仮面の男が呟く。

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