890セブンス。戦の始まり・・・

「ちょっとおお!」
ミコッテの白魔道士の悲鳴じみた声を背に、3人が突き進む。
「お嬢ちゃん、彼女達とは初めてかい?」
ヒゲの機工士、シドが問いかける。
「いえ・・でも、いくらなんでも無謀過ぎますっ!」尻尾を逆立てて抗議する。
「わかった。こっちはこっちでなんとかするから、彼女達を優先でサポートしてやってくれ。」

ストーンヴィジル。
宗教国家イシュガルドの防空要塞。だが、先の戦乱によって顕現した竜王こと、バハムートの影響でその眷属が力を増して。結果、この城塞は蹂躙されてしまった。

とりあえず、この先に目的のモノがあるのだ。どんな無茶をしてもたどり着かなければならない。
シドは二人の機工士を見て、そして銀髪の少年を。
「無茶をよろしく、な。」
「ああ。」少年は気安く返事を。


もう二日目も過ぎた。
ここ、帝国の城塞前。
「ねえ・・もう、わたしガマンできない・・・。」
青いローブのミコッテの術士。
「落ち着け。まだたった二日だ。」グレイの髪の女性はミコッテをたしなめる。
「たった!?たったですって?アタマオカシイんじゃないの?あなた!」激昂するトリコロール。
「落ち着け、クソネコ。騒がしくすりゃ、余計にヒマがかかる。」冷静に返答。
「こ!・・・この!」殴りかかる。
「いいから黙って様子を見ろ。」突っかかってきたミコッテの頭を鷲掴みにして、雪の中に。
「レティ・・今更だが・・少しやりすぎ・・と、本題としてはどうなんだ?」
兄弟子たるエレゼンの術士が。
「まだ本題には・・いかないわね。予想している主犯が登場した様子がない。おそらく捕まった連中は監禁状態でそのまま。危害はほとんど無い、と思う。」
「理由を聞かせてくれないか?でないと、彼女との仲は険悪になる一方だ。」アルフレートは困り顔で。
「理由ね。まずは連中は「魔術」に対してそれほどの技術が無く、「モノ」に頼る技術が多い。移動術式や、エーテライトの相関図なんて知識はないでしょう。
ということは長距離移動には必ず「船」みたいなのを使う。その点では、こちらが圧倒的に速度で優っている。もう少しの猶予があるというのはココ。
でも、おそらく一両日には船はやってくる。ただ、それが今日じゃなかっただけ。だから、今夜は徹夜ってコト。」
「・・・いい歳なんだがなあ・・・」
「あら、あたしだってもう孫がいるのよ?」その割には年齢を感じさせない。
「俺の娘は・・恋人ができたかどうか?くらいだよ・・(メーヴェにキツく・・・)」
「いいじゃない。早く孫の見せ合いしよう!」
「・・・あー・・相手はミコッテらしい・・・」
「幻想薬くらい、あたしが用意するってば!」
「そこか・・・」
「・・・ワシ・・・おいてけぼりなんじゃよ~・・・」


「!?」
屋台で国歌だの、恋愛ものだの、歌いまくっている(酒も相当に入っている)ミコッテ女子達を拍手で応えている青年、
リガルドは一瞬背筋にゾクリとした(気のせいかもしれないが)感触を覚え、左肩に頭を寄せてコクリと、うたた寝をしている恋人に目をやる。
(ミーじゃ、・・ないよな?今の)
「なんだ!指輪の!飲め飲め!イケるんだろっ!」社長はかなりいいデキに仕上がってきているようだが・・
「いただきます・・・」(さて・・去った魔女、続いて居なくなった拳聖と姉妹。これは・・)
しかし、肩に頭を乗せてうたた寝をしている恋人を放ったらかしにする訳にもいかず・・
(拳聖が相棒を「あえて」置いていった、そこが肝心、ということか。)「楽しく盛り上げましょう!」


「楽しそうやんか。」
ブロンドの術士、ユーニ。
「せやね、お姉ちゃん。」斧を構える妹。
「あんまし床見とったらエライ目に合うで・・これは。」エレディタが空を見る。

城塞、だが、竜族の猛攻で屋根が吹き飛んでいる箇所が多々ある。
「はぁ、・・はぁ・・大地の加護を!」白魔道士のリトリーがやっと追いついて、防御術式を紡ぐ。
「おおきに。」「あ、そういえば。」「わすれとったなー。」まさに今更ながら。
「んじゃ、行くで。」

「では、僕達も行きましょう。・・・「歌えば、其は静かなりて、静寂の喜びを共に」・・」
アルフィノの声にキンッという音に近い振動が。
「結界を張りました。こちらから手出しはできませんが、向こうからも出来ません。これで彼女達を追いかけます。」
「ああ。助かるね。コイツの出番が無いことを祈るぜ。」懐から鋼の塊を。
「そ、それは?」
「銃、だ。帝国に居たときに色々試作したんだが。やけに熱心なミコッテの女の子がいてな。シックス、とか言ったか。
一緒に色々試してたんだ。まあ、彼女とはその後の亡命の時以来、会ってないがね。」
「そうか。良き再会の日を。」エレゼンの少年はそう応え。「では。急ごう。」走り出す。

「おいおいおい。こりゃ、なんの冗談だ?」
ユーニが皮肉る。
「お姉ちゃん!」
崩れた天井の上から竜族が炎の吐息(ブレス)を。
咄嗟に避けるが、通りざまに放った炎熱は周りを焦がしている。
「くそ!」拳だけでは空にいる竜に手も足も出ない、とはそのまま。
エレディタはまず目の前の竜の眷属を殴り倒すのに集中する。

しばらく先に進み・・
「吹き散れ!」「あーらよっとお!」「こんくらいの蹴りやったらちと足らんなあ。」「もう!皆さん、ムチャクチャすぎです!」

白魔道士の少女の悲鳴じみた文句も気にせず、3人は奥に向かう。

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