「なあ、ビッグスー?」青い作業着にゴーグルのララフェル。
「なんだあウェッジ?風邪でもひいたのか?」ルガディンの青年は相棒を見て。
「んでよ。アル・・なんだ、いいや。坊ちゃん。結局のトコ、どうすんだ?」ブロンドの術士の少女が尋ねる。
「アル・・まあ、いい。シドの記憶を、とりあえずは戻さなくては。そして、それには多少のショック療法も必要かもしれない。」銀髪の少年が応える。
「まずは、なんや?ガルーダか?船か?順番から言えば船やな?」黒髪の女性が横から。
「ああ・・そうだ。我らが暁の血盟としても、エオルゼアの民にとっても、この荒ぶる蛮神を野放しにはできない。
そのためには、彼の「エンタープライズ号」は必須だ。その足跡は、把握している。」
「じゃあ、はよ行こうよ。」斧使いの少女はあっさりと。
「わかった。」少年はうなづく。「シド!」
「え?俺・・?」ローブ姿の彼は当惑気味に。
「ああ。君は、シド・ガーロンド!君の船を取り戻しに行く。これ以上の興奮を君に送る事はできない。着いてこいっ!」
「って、ココどこ?」白銀の世界。
さっきまで黒衣森の北方にある、といってもグリダニアから少し。フォールゴウドと呼ばれる町に着いて、休息もしばし。
アルフィノはカンパニーの兵士に話をつけ、さっさとチョコボに跨り。
「行きますよ!お姉さん達!」と駆け出していった。
「あー、やっぱ、ガキ苦手。」「お姉ちゃん・・」「まあ、ええやんけ。楽な案内係やと思っとけ。」「・・俺は・・お姉ちゃん、じゃないよなあ・・」「・・・(シン兄さん・・)」
「この先にある、イシュガルドの城塞。ストーンヴィジル。その先にかの船が不時着した、との話だ。」銀髪の少年が言い出し、唇を噛む。
ここはホワイトブリムという町。かつてはその城塞の兵士達で賑わったものだが・・今は冒険者で賑わう。
理由はいとも簡単。かつての城塞が「宗教国家イシュガルドの天敵である竜族に乗っ取られた」からである。
不意を突かれたとはいえ、竜騎士を多数抱えるイシュガルドが前線とも言える城塞を陥落せしめられた。この屈辱をイシュガルドは黙って見てはいなかった。だが。
結果は・・いかんともしがたい状況に。
「まあ、そういう事だ。」エレゼンの少年。
白銀の世界の中にある町で、オレンジ色の灯りに揺れる銀髪。
「この夕食が、最後の晩餐にならないように、あなた達に期待しているよ。」
「くそ、縁起でもねえ!」「お姉ちゃん、暴れすぎ。それでなくても寒いのに。」「るっせえ!」
「なあ、リトリー?もし、もしや?この親玉見つけたたらどうするねん?」「・・・わかりません。」「ほんなら一言、言うといたるわ。手加減すんな。」
「え?」「自分の命の値段、いくらか知ってるか?」「・・・いえ・・」「値踏みがきちんとできるのかが、生き延びる秘訣やで。」
かつてリムサ・ロミンサで「チルドレン」のトップを張ったエレディタは笑う。
「シド・・本当に僕の事も忘れたのか?」「・・・記憶が・・曖昧に・・なんだ・・?何かが足らない。記憶を・・パズルに例えるなら・・ピースが足りない・・・」
「シド。逆に言えば、それさえあれば、記憶が戻る。だね?」
「・・・例えただけだ・・今は・・雲の合間に出る、日差しだけを手繰り寄せてる。そんな感じだ。」
「十分な前進だ。そのままでいい。さあ、寝るとしよう。明日も早い。」「ああ。」
皆が防寒着を購入し、「元」城塞の前に。
「この先には竜族が蔓延る城塞です。冒険者達でも突破はできてない、という難関ですが。僕達ならできると信じています。」
銀髪の少年は悲愴、ではなく、希望に満ちた目で見つめてくる。
「あったぼうよっ!」ブロンドの少女に「さっすがー!お姉ちゃん!」妹がしがみつく「うゼえ!」
「じゃあ、一丁やったろうやんけ?なあ?リトリー。こっからがスタートやで?」「・・うん。」
グランツファウストを打ち合わせ、黒髪の・・応える白魔道士。
そこに。
「お、親方あああっ!」ララフェルの技術士がローブの男性にしがみつく。
「なっ!?」うろたえる男性、シド。
「ガーロンドワークス、未だ活動してますぜ!シドさん!」ルガディンの大男までもが。
呆気に取られた面々。
「おいおい。ウェッジ、ビッグス。大げさすぎるぜ?俺がそう簡単にくたばるか?ってんだ。
それに、男に抱きつかれるのもレディの前じゃ勘弁してくれ。誤解を生むだろう?」
「親方ーーー!」「ううううう!」
「野郎どもの滂沱の涙よりは、美女の一滴の涙の方が百万倍の価値があるってんだ。さっさと泣き止めろよ。
ああ。会いたかったぜ。ウェッジ。ビッグス。」抱き寄せる。
「なるほど。彼の最後のピースは彼らでしたか・・」少年は眩しそうに。
「で?」
黒髪の「拳聖」は冷静に。
「この状況は、想定外や。どうするつもりや?」
確かに。困難な状況が確定している攻略にお荷物まで連れて行くとなれば、踏破はまず不可能。
だが、彼らがいなければ、目的の「船」が手に入っても意味がない。
「申し訳ありませんが。僕は彼らの援護だけに廻らせてもらいます。できるだけ、サポートはするつもりですが・・あまり期待は・・」
「シミったれた事、ぬかしてんなや、ガキ!」周囲の氷の魔力を右手に集め、結晶化させている「ジ・アイス(氷結の娘)」
「せやな。」妹。
「困った姉妹やで。」言葉と逆に、楽しそうな・・・「拳聖」
「私も!任せてください!」この言葉を呪にして、防御術式。リトリーの杖が振るわれるのを合図に城塞に飛び込み面々。
「ああ!まだ、土の防御術式があああっ!」リトリーの叫びが響く中、それぞれが果たすべき事のために。
成すべき事のために。
突き進む。