ん?
(あれ?)
黒髪を短く雑に切ったヒューランの女性、エレディタ。
確かに・・
さっきまでは居た。
白魔道士の少女。
「白衣の使者(ホワイトブリーズ)」と呼ばれるミコッテ。
彼女の姿が見えなくなっている。
他のこの「宴」の参加者は気がついていないようだ・・・
「え。その・・ちょっと・・」
神気の指輪と呼ばれるミコッテの青年は、皆にとっていい肴らしい。
なんせ、彼以外全て女性なのだ。
ハレムと他人から言われても文句の出処もない。
「なあ、「指輪」の。彼女とはどこまで進んだんだ?」社長からの一言で火が着く。
「え?あ、いや!?」リガルドは、あたふたとしながら隣の女性を見るが、彼女はうつむいたまま上気した頬を隠している。
「ねー、どーなのー?」鍛冶師のミコッテが頬をつついている。
「うんうん!」アリティア物産社長も隣の親友と同じく、ミコッテの青年をつつき始め。
いよいよ逃げ場がなくなってきた。
「あ、と。そのですね・・」
「ユーリ、酒。おかわり。」「大将!お姉ちゃんにキツイの一杯!」「あいよ!」「お前も飲め!」
「ドコや?」おそらく移動術式で飛んだ以上、ウルダハではなかろう。
白魔道士リトリーが消えた理由を考え、エレディタは。
考えられる理由を探す。
まずはパールで連絡を・・「!」
パールの一つが鈍く濁っている。通信もできない。「こいつは・・」
まさか!? このパールはたしか「暁の血盟」と名乗る女性からもらったものだ。今回の蛮神討伐の連絡用として受け取って以来、それほど使った試しもないが・・
こんな色のパールなんて、見たことがない・・・・まさか・・
破棄された?もしくは・・・・破壊されたか、だ。
ということは、おそらく彼女が向かった先は「砂の家」
理由は色々考えられるが、今はそこじゃない。
周りを見る。
相棒と、その彼氏をからかうのに夢中な彼女達はこっちに気づいていない。(その方がええやろ。)黙って消えた彼女のためにも。
こっそりと場を離れ、移動術式を展開する。
そこに。
「なんや?水臭いやんけ?」「せや、うちらも便乗させてもらうわ。」姉妹が。
「しゃあないなあ。ただし余計なマネだけはせんといてや?」術式が発動し、3人は・・・
ホライズンのエーテライトに。
「なんや?なんでここに?」妹、ユーリが不審がる。
「お前は観察眼が足らん。パール見てみぃ。砂の家のパール、壊れとるやろ。」姉、ユーニ。
「せや。これにいち早く気がついたリトリーが此処に来たハズや。チョコボ借りに行くで。」エレディタが走り出す。
「兄さん・・・」白魔道士としとして、名も馳せるようになったミコッテの少女は、砂の家で勤務している兄が・・・何より、
兄の許嫁の女性とおぼしき術士がわざわざ「天魔の魔女」を呼びに来たのだ。確か、
許嫁の彼女は戦役からしばらく休暇という名目で兄と過ごしていたはずだ。それが・・
コーラル、と名乗った彼女は、銀髪を薄い桃色で少し染め、控えめに見ても魅力的だと思った。
ただ、彼女の素性を知るまでは。
秘密結社の諜報員。
名前や、容姿も変え、各地で活動をする。
そんな女性に心奪われた兄は、心底バカだと思った。どうせ使いツブされるだけだろうと。
でも。
その女性は、自分には素顔で接してきた。兄と同じように。
それすら欺瞞では?と思ったが、しばらくの付き合いの上でそうじゃない、本当の彼女を見てきた。この名前も偽名では無い。コーラル・ラグーン。
トリコロールとか、ティアラだの、ファミリーネーム無しではなく。
生まれはここ、ベイの近く。「碧海の珊瑚礁」と名付けられたのだと。そう笑いながら会食を楽しんだのだ。なので、碧い衣装を気に入って着ているのだ、と。
砂の家に危機がある、恐らく彼女はそう思って持てる情報を総動員したのだろう、魔女の居場所を。ということは。
兄にも危険が。
ベスパーベイに着く。
「!?」
リトリーは、あまりの事に声も出ない。なにせ・・・
「おい。勝手に一人で行くのはアカンやろ?」黒髪の女性。
「せやな。うちらに一言くらい言えや。」ブロンドの小柄な術士。
「お姉ちゃんの言うとおりやで。」斧を背負った少女。
「みんな・・。」
涙が溢れてくる。
今、運ばれていくのは、家の被害者達。ドアは壊され、シーツに包まれた遺体らしき・・
「・・」ガマンできず、走り寄る。
「この中に、男性のミコッテはいませんでしたかっ!」声を荒らげ。
「・・・・・」「そこだよ。」シーツに包まれた一体を指差す救助員。
「!!!!」
まさか・・・。シーツを怖々とめくる。「!?」
冷たくなった兄がいた。
「兄さ・・・」意識が遠のく・・・・・(おい!)(おい・・)
「なあ、アンタ。」隊員に。
「誰の仕業や?」拳聖は殺気すら込めて。
「ああ・・・帝国兵らしい。主犯格はどうも将校クラスで、銃も使うそうだ。」
「なんで、そんなん知ってるんや?」訝しげな目で氷結の娘は、その名の通りの目つきで。
「はよ言わんかったら、氷柱できるで?目の前や無しに。」鋼鉄の嵐がさらに。
「ひ!お、俺は状況説明をしただけだ!ミコッテの術士と・・そう、そうだ!天魔の魔女が現場に行って・・。そう聞かされた!」男はしどろもどろに・・・
「で!魔女サンはどこ行ったんやっ!」3人の女性たちに詰め寄られ・・・
「わ、わからない。ただ、帝国の前線とか、なんとか。言ってた気が・・」
「リトリー。」泣き続ける少女の肩を叩き。「ほな行こか。仇討ちや。」「連中、氷漬けにしたるわ。」「その後、うちが粉砕やな。」
「・・・・・うん。ごめんね。兄さん。みんな。」袖で涙を拭う。
「おっし、そうと決まれば、魔女サマの後を追うで。」「仕切んなや。・・おぷっ!」「お姉ちゃん、飲みすぎやで・・」
「二人で行けるとおもう?」術師のミコッテが。
「ツテを頼ろう。少し待って・・・」
「は?おい?レティ?帝国に殴り込み!?正気か?」赤色のローブを着たエレゼンの術士はまさにローブを脱いで就寝する直前。
「それに・・前衛を一人呼べってか・・ユパは今行方がわからんしな・・あ。居た。」
「ワシに何用なのじゃよ~?」畑で寝ていた剣王は。
「なに~!帝国にケンカじゃと~!正気ではないのじゃよ~!だが!そこに燃えるのじゃよ~!」
「捕まえた。が、アテになるかなあ・・・」アルフレートはもう一度ローブに袖を通しながら。