「せねっちー。ここでいいのか?」
ミコッテの女社長は辟易とした調子で。
「はい。コスタ・デル・ソルで聞いた話ですとこのあたりに・・・」
一面見渡す限りの砂、砂、砂。
「ん?」
なんだか砂煙が・・・・
ごばぁっ!
砂丘の中から巨大な筒のようなモノが飛び出す!
筒とはいえ、ウネウネと動き、その仄暗い内部の入口にはびっしりと鋭い牙がズラリと並んでいる。
「ひええええっ!」
「しゃ、社長!逃げないでください!私もこういうのは苦手なんですって!」
二人してダッシュで逃げる。
「な、なにあれ?」
「・・・アレがサンドワーム、でしょう。」
「キモ・・・」
「その意見には賛成ですが・・・私をほったらかしで逃げたのはどういった了見でしょう?」
「あー・・せねっち?怒ってる?」
「いいえ。責任の所在を確かめたいだけです。」
「・・・悪かったってば・・・。」
ミコッテの二人は「忘れられたオアシス」を目指してザナラーンの砂丘地域に。
そこには、かつての海雄旅団のメンバーがいるのだとか。
そして、いざ着いてみれば見渡す限りの砂。
さらに、先ほどの魔物。ここにしか存在しないらしいかの魔物は、グロテスク極まりない。
女性二人では、確かにツライものがあるだろう。
しかしながら、そうも言っていられない。
「せねっちーオアシスどこー?」
「社長。ご自身で少しは考えてみられては?」
「ふう。そろそろ陽が暮れそうだねぇ・・」
「あんたら、そんなトコでなにしてる?」
「え?せねっち?なんか言った?」「いえ・・」
周囲を見渡す。
人影が。
「こんなとこで。迷ったか?」ミコッテの女性。
「うぇっ!?」「誰っ!」
「そちらこそ。ここはウ・オド・ヌン様の領域。何をしに来たかは知らないが、大人しくお帰り。あっちに行けばこの砂丘は抜けられる。」北を指差す。
「いや、まさにその方に会いに来たのだ。帰るわけにはいかぬ。」
「なら、まずは名乗られよ。わたしはヌ・サンディアン」
褐色の肌のミコッテが名乗る。
「失礼した。私はマルス・ローウェル、こちらは・・」
「セネリオ・ローウェルです。」
「・・・あいわかった。ヌン様がお会いになるかわからないが、オアシスまでは案内しよう。」
「忘れられたオアシス」
砂丘の南に位置する此処はミコッテの一派閥、ウ・オド・ヌンの取り仕切る集落。
そして、彼のハレムでもある。
「失礼します、ヌ・サンディアンです。客人をお連れしました。ヌン様にお目通りを。」
「いいだろう、お連れしろ。」
「は。」
(せねっち、なんかちょっとヤヴァイ感じしない?)(古に曰く、クァールの子が欲しくば、クァールの巣に入れ。という事です。覚悟が必要かと。)
しばらく歩くと、瀟洒な場に・・・
豪華な椅子に褐色の肌のミコッテの男性。歳の頃は人生の半ばを過ぎたくらいか。
「オレがウ・オド・ヌンだ。なんの用だ?子種をせがみに来たか?」
一礼をし、「私はマルス・ローウェル、こちらは腹心のセネリオだ。実は頼みがあって来たのだが、子種ではない。
蛮神タイタンが再び降臨するといわれていて、その討伐を請け負ったのだ。そして、かつて海雄旅団におられた貴殿から少しでもアドバイスを頂けないかと。」
「ほう。蛮神か。なつかしいな。しかし、アドバイスとな?それ以外は何も言われなかったか?」
「お見通しであったか。実はヴェイスケート殿から課題を提出されていてな。なんでも、世界の3大珍味を用意すべし、と。その一つがこの地にあるのまでは突き止めたのだが。」
「見た目で判断してはいかんな。まあ夜までゆっくりしていけ。おい、サンディアン、客人をもてなしてやれ。」
「はい。ヌン様。」
「なんだかなあ、せねっち。」「ええ、少し想像していたのとは違いましたね。」
「ヌン様は今日はいたく機嫌がよいご様子。おそらくは昔の仲間のお話が聞けたからでしょう。そして、今夜は満月です。お望みの物が手にはいるやもしれませんね。」
「ほう。」
「しばしお待ちになる間、わたしがお相手しますゆえ、なんなりと。」
「じゃあ、ヒマつぶしにゲームにつきあってくれ。」
「社長・・・。」
「ここにダイスがある・・・・・・」
日も暮れ、夕飯時に・・・・
「食事をお持ちしました。」ヌ・サンディアンがプレートを2枚。
渡されて、プレートの中身を眺めると・・・「げ。」もしかして・・・・
「これ・・・」「はい。ワームの煮込みとパンですが。」「えーっと。」
「美味しいですよ。栄養もありますし。」
(せねっち、味見して。)(社長、ここは威厳を保つためにも社長から。)
「では、わたしが味見をしましょうか?」「よろしく!」「お願いします。」
ぱくり。
「うん、美味しいです。」
(うわ!マジで食べた!)(ですね・・・)
「いらないなら、わたしが全部いただきますが?」
「いや、お腹が減っているのは確かだし・・ちょっといただいてみようかなー、なんて。」
「社長、さすがです。」
「意外とイケたな。」「ですね。」
さてと。
砂丘の畝にエサを仕掛けつつ。
しばらく様子を伺う。
満月なので明かりがいらないとはいえ、もしも見逃すようなことがあれば、次の満月までひと月も待たねばならない。さすがにそれは頂けない。目を皿のようにしてじっと待つこと数刻。
ごばっ!
砂の中からワームが現れた。
「げっ!」「きゃっ!」
恐らく件のメスワームだろう。が。大きさがそのへんのワームの倍以上はあろうかという。
「でかっ!」「き・・・きもい・・・」
「やるしかない!」「はい!社長!」
奮闘の末・・・
「なんとかなったな・・・」「はい・・・・」憔悴しきって・・
集落へ向かい 「お、仕留めたか。」ヌン氏からお褒めの言葉を頂戴し、ワームの肉を包んでもらった。「残りは俺たちで食うぜ。」「どうぞ。」
さて、これでコスタ・デル・ソルまで行けばいいだけだ。包むのに使った葉っぱは防腐作用もあるらしく、多少は長持ちするのだそうだ。
「では、これにてお暇する。色々と世話をしてもらい、感謝する。では。」
お辞儀をしてから、移動術式を。
淡い光に包まれていく二人。
「子種が欲しければいつでも来い。」
(だれが・・・)
シュン! 姿が掻き消える。
「ふふ、俺たちの時代はもはや過去だな。まあ、今時のやつらのお手並み拝見か。おい!誰ぞ、酒をもて!」
「ヴェイスケート殿。これが約束の品だ。」
「確かに。さすがはアリティアの社長殿。仕事にそつがない。」
「まあね。」