841セブンス。少し先の話・・・ある日・・・

小川のせせらぎの音が目を覚ませる。
寝台から起き上がり。
隣に恋人はいない。朝稽古ということで昨夜の情事の後、早々に帰ってしまった。
「ふう。一晩中でもいいのに・・・」
さすがにそれはできないか、と納得もする。
「ヒマだな・・。」
とりあえず、寝台から起き顔を洗うついでに水浴びもしようと。
黒雪は屋根裏の寝室から降りる。
ついでにいえば、この寝室には階段なんかない。飛び降りるか、付属のロープのみ。
なにせ、元が「魔女の家」見た目平屋だが、こんな部屋を寝室にしてるあたり、さすがと言える。
元は幻術士の師匠が使っていた別宅だったらしいが、魔女が住むようになってからかなりの改装をしたらしく、もはやカラクリ屋敷の呈そうを。
玄関には3重にも及ぶトラップが仕掛けてあるし、見せかけだけの寝室にもトラップが。リビングにすらトラップがあり、
安全に過ごすためには、相当にコツがいるが今の自分には丁度、といえる。
なぜなら、今の自分は「死人」扱いなのだ。余人に見つかるわけには行かない。
なので、半年近くここで隠遁生活をしている。たまに魔女がやってきて土産や、鍛錬に付き合ってくれるが。
半月ほど前に魔女が娘を連れてきたときはびっくりだったが、恋人がその娘相手に全く歯が立たなかった事で、朝晩の鍛錬メニューを増やし、そのせいで逢いに来てもすぐ帰ることに。
愛刀、「雨の叢雲」を譲渡し、「刀の主」となれ、と言い渡した以上は仕方あるまい、か。

水浴びを終え、体を拭きながら「今日はなににしようかな・・・」と遅めの朝食を考える。
魔女の計らいで、リムサ・ロミンサの酒場や、ウルダハの酒場では自分は他人として扱ってもらえる。
ただ、他にいる冒険者達のクチに戸は立てれないので、せいぜいバレないようにな、とも釘が刺されている。
確かに、長い黒髪に着流し、なんてこの国では珍しい。かといって、他に持ち合わせもない・・・
とりあえず、妹みたいに黒髪を結わえあげ、かんざしを。(これだけで十分目立つが・・・)
パールを取り出し、魔女に連絡を。
(ねえ、今いい?)
(どうした?)
(目立たない服がいいんだけどさ。なんかない?)
(そんなの、どこにでもあるだろ?)
(街に買いに行くまでが目立つっての!)
(あー、東方風の服なら、今イベントやってからさー。持ってってやろうか?)
(本当!?)
(ああ、飯は?)
(あ。じゃあお願いしても?)
(分かった。その代わり昼回るかも。)
(そのくらいは。ありがと!)
(お前がそんなに可愛げあるとはな。まあ、いいか。マユに頼んで服はとってこさせるとして、飯、どんなのがいい?)
(おまかせで。)
(わかった。じゃあ待ってな。)

昼過ぎ、魔女が。
「待たせたね。」
「お腹すいた・・・。」
「んじゃ、これ。」お皿には少し冷めてしまったようだが煮込み料理と、パンが添えられている。
「ありがとう。」
だが、これが本命ではない。
もうひとつの包み。どんな着物なのだろう?
「ところでお前、下着はどんなの履いてる?」いきなりな魔女の質問。
「へ?」
「いや。だからさ。下着だよ。」
「そんなの持ってない・・・・」
「そうか。まあ、せいぜいコケたり、階段じゃあ気をつけることだ。いい?注意はしたわよ?」
軽く手を振り、魔女は術式の光に包まれていく。

なんのことだろう?着物というか、東方では女子の下着なんて売ってるどころか、そもそも身につけない・・・
そんなことより、着物を拝見!っと食事そっちのけ。
「おおー!」
白地に赤い刺繍の入った少し派手目だが、可愛らしい。「ミッター、喜ぶかな・・・」なんて。
ただ。
「うぇ!?」
長さが圧倒的に短い。
太ももくらいまでしか丈がない。
「こんなの・・・丸見えじゃない・・・。」
確かに、こけたりしようものなら、エライ事に・・・・
むー。いや!街中じゃなければ問題ない!むしろ、ミッターに見せびらかして、そのまま・・なんて。
うふ。
パールでさっそく今夜に来るように呼び出しておく。

るんるん気分で昼食をいただくことに・・・・

<<前の話 目次 次の話>>

マユリさんの元ページ