836セブンス。冒険者達。4(少女の・・・

「・・・・・以上により、構成とは・・・」
男性教諭が講義をしている。
ここは、学院。
アルダネス教団の運営している呪術士ギルドの、言ってしまえば下部組織。
ここで後裔を輩出し、その利益もあげている、という寸法だ。
実にウルダハらしい、といえばまさに。
その教室の中で、エレゼンの少女ヴァイオレットは少し憂鬱。

なぜかといえば、先日教諭から「お前も首席なんだからな。実地訓練も兼ねて行ってこい。」なんて。以前行ったことのあるダンジョン攻略を。
腕輪を渡され「つけていれば、勝手に移動術式で飛ばされる。」「え?」「以前にお前が攻略した場所だけだ。問題ない。それに、このシステムがどういうものなのか、論文にしてもらう。」
「へ?」「学年首席なんだろう?そのくらいはしないとな?」(なんてこと・・・。実家に無理を言ってまで入った学院で・・だから結果を出さないとダメだと思っていたら・・・。)
「・・・はい。わかりました。」こう答えるのが精一杯だった。

「はぁ・・」
ため息がこぼれる。
授業の言葉が耳に遠い。

ちょいちょい、と腕をこつかれる。
「サララ?」
隣にいるミコッテの少女。
「ちゃんと授業聞かないと、チョークが飛んでくるよ?」
「う。」
憂鬱の一端を担うこの少女は、寮での同室。とにかくお節介というか、根掘り葉掘り聞いてくる。
その先日での自分の失態、というか、転んで下着が見えた、なども言葉巧みに聞き出してきた。あれは自分でも二重の意味で失策だったと思う。
とりあえずは、噂好きな彼女がその事を言わないでいるのは、委員長こと、ミオが目を光らせているから。
彼女は次席ながら、責任感が強く、自ら教室の委員長を名乗り出るほど。そして、次席とはいえ、自分との実力は拮抗している、と思う。論理的な思考は、恐らく自分より上だろう。
ただ、実戦にはもろく、すぐに腰が引けてしまう。そのあたりで次席に甘んじているのだろうが。

「ねえ、ヴィオ!」
あ。
休憩時間。
ミオが声を。
ボンヤリしていたら、気にしたのか声を。
「先日の件。その。どうだったの?論文提出まで言われたんでしょう?」
「だけど。まだ進んでないわ。」
「ふうん。まあ仕方ないか。とりあえず、あの姉妹には要らないこと言わないように釘刺しておいたから。」サララとウララ。
双子の姉妹は同室なので、プライベートは筒抜けである。しかも噂好き。同じく同室のミオはこの二人のブレーキ役としてしっかりしている。
「うん。ありがとう。」そろそろ休憩も終わり、午前の授業もこれで終わる。
「じゃ。」とミオが去っていき、ヴァイオレットは教本を取り出す。タイトルは「巴術式とは」
呪術だけじゃなく、もっと他の知識もいれないと。
半分以上、教本から知識を記憶している授業なんかより、こっちの教本の方が今は楽しい。
(よし!)半分以上読み終えた教本を見て満足。もっと上級の本も買わなければ。
この先は、学者としてやっていけそうな気がする。ミオや双子達がどういった道を行くのかはわからないが、自分のできることはなんとなく道標がついた。がんばろう!

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