「私たちも頑張りましょう!」
エレゼンの女騎士、「剣聖」ことミーラン。
先の部屋で囚われていた少女達を救出するために重傷を負ってしまった仲間のためにも。
その頑張りを。
彼女はガラス欠片で体中を刺されながらも、そのことを仲間には気づかれないように移動術式で少女達を救出してみせた。
「ユーリさん・・・。」ミーランは決意を新たに。
ぽん。
3人の仲間が肩を叩く。
「やったろうやんけ。」彼女の姉、ユーニ。「ミー。」相棒、エリ。「僕も頑張るカ。」葬儀屋、フネラーレ。
「うん!」ミーランは明るく応える。仲間がいるのだ。
先の部屋で魔物を倒したときに、落としたカギ。これでさっきは入れなかった部屋に入ることができるかもしれない。まずは行動だ。
「コレ、かな?」「さあな?」「まずハ、音。そこかラ。」「ミー、慎重にな。」
ガチャリ。開いてしまった。しかし、中の音は無かったので問題は無い、と思うのだが・・・
「ようこそ。ハウケタ御用邸へ。しかしながら、いささか淑女としての嗜みに欠けておられますね。ここは、わたくし、給仕長の部屋でございます。
賓客をもてなすのが仕事とはいえ、勝手に入られては。躾、が必要なようですね。レディには到底会わせる訳には、いや。是非ともレディのためにその生き血を捧げてもらいましょう。」
「貴女っ!」ジュワユースを抜き放つ。
「コイツはやっかいやな。」構成を編む。
「ミー。気つけや!さっきの霧がでたら!!」防御術式を展開。
「ふうン。僕が始末してやルよ。」棺桶製造者を構える。
「ほほほ、イキがよろしくて結構だこと。」バサリと、服を破り翼を広げると構成を編み始める。
「殺しはしませんことよ?」いきなり空間に金属の礫ができ、正面に雨あられと降り注ぐ。
「ぐ!」なんとか盾で身をかばったものの、細かい金属欠片はいくつか体に中っていて苦痛をもたらす。後ろを振り返ると、他の3人も自分以上にダメージを負ったようだ。
「おほほ。甘い鉄片、いかがです?もっと嬲ってから、レディに会わせてさしあげますわ。」
「させるかあっ!」ジュワユースで切り込む。
「ミー、回復はまかせとけ!」「凍れ、クソ!」「チ。」
それぞれの役割を。
淡い光が優しく皆を癒し、給仕長の羽を氷で凍てつかせ地に引きずり落とす。鋭い矢がその顎を射抜く。
「・・が・・・ががががガガ。」給仕長は声が出せない。黒い霧も消えていく・・・・
「貴女は、道を踏み外してしまったんですね。ノフィカ様のもとへ一度お尋ねに。わたしには、そうとしか。すみません。」
一閃。
切り倒した給仕長にミーランは黙祷を捧げ・・・
「行こう。」
「待て。こいつ給仕長なんやろ?鍵束とか持ってへんか?」エレディタはボロボロに破れたエプロンをまさぐる。
「え?エリ?」「あった。・・・・でも一個だけやな・・」
「コイツの鍵だけでもめっけもんや。さて、どこやろな?」
「ま、僕の勘だト。セラーあたりカ、二階はナいね。」
「セラー?」エレディタはピンと来ない。
「ワインとかの保管庫。わたしの家にもセラーあったんだけどね・・・この前の大戦で焼けちゃったから・・・あはは・・・。」
「意外とお嬢なンだ。」
「お母さんがグルメっていうか、作る方にこだわってたから。」えへへ。
「まあ、そんな話はええ。その勘とやらで行ってみようか。葬儀屋。」
「そうダね。」
階下に降りる最中でも戦闘があり。
「この館、本当に腐ってやがる。男爵夫人とやらも相当なモノやな。」ユーニが吐き捨てる。
そのセラーには、腐敗した少女達の死体がワインの代わりに陳列されていて。それを魔物どもが食べていた。
「ぐ・・・。」吐き気を催す光景にミーランは・・。
「とりあえず、魔物共を一掃しましょう!そして、この子達にちゃんとした埋葬をしてあげないと!」
「せやな。」「ああ。」「うン。」
魔物を一掃し、とりあえずエントランスまで。吐き気を催す臭気の中での戦闘は思った以上に疲弊して。少しの休憩を。
階段を見上げる。
なんだか、モヤのようなものがわだかまっている。
「何?あれ?」
ミーランの問いに、ユーニが。
「あれは、結界や。ちょっとやそっとじゃ会えへんらしい。どっかにおるはずや。あの結界のキーみたいな魔物が。」
「よし。じゃあ、そいつを探そう!」
一同がそれに応える。
貴族の邸宅での戦いはまだ終わらない。