「ええか?」
ブロンドの少女。
「ハウケタ御用邸」
この中で惨劇が行われているのは、ほぼ確定・・・4人はそれを確認させられるしかない。
説明を始めるユーニ。
「これは、うちの推理もはいっとる。それも含めた上でや。手短に済ますで。」
「うん。」剣聖。
「まず主。アマンディヌとか抜かす貴族は、完全にクロ。コイツを始末せん事には、この惨劇は止まらへん。潔白を証明どころか、退治しかあらへん。」
「・・・・」ミーランは唇を噛み締める。
「次いでや。うちらを捕まえよう、としたのと他にも給仕募集と称して呼ばれた娘は、おそらくもう全部死んどるか、残ってても3,4人くらい。
ええとこの娘はさっきみたいな魔物に作り変えられとる。貧乏家庭が娘にせめていい暮らしを、なんて夢見て募集に差し出した、けど使い捨ての何かに使われた、か。」
「・・・・その根拠は?」エレディタ。彼女もこの無鉄砲な剣聖の参謀として、意見はしたい。
「さっきの給仕、見たやろ?アレ、相当育ちがええで。せやから食う側や。どういった術式かわからへんけど、人を作り変えるのがあるんやろ。
うちも師に聞いたことがあるだけやけど、死霊術式(ネクロマンシブ)いうのがあるそうや。
もちろん、使うどころか術式については一切教えてくれへんかったし、聞きたくも無かったけどな。でも知識としてそういうのがあるんや、とな。」
「ほう・・・。」
「ほんで、さっきの戦いでわかったんが、あの給仕が使う黒い霧。アレはまずい。体が言うこときかへん。
治療術式で治った、わけでもないみたいや。つまり、効果時間は短い。でも、あの手下みたいなホネが一緒におったら致命的になりかねん。」
「な!エスナが効かへんやって?」エレディタが。
「ああ。正味、術式が来たのはありがたかったけどな。少し時間差があった。これって、術式じゃ回復できてないって事や。」
「く・・・」
「せやさかい、あの給仕みたいなんが霧を吐き出しそうになったら、全力で走ってでも逃げる。これしかあらへん。もしくは見つけ次第先手必勝でぶっ殺す。」
「な、そんな。彼女達ももとは人なんでしょ?」ミーランがすがりつくような目で。
「もう元には戻れへん。やろな。剣聖様はどうやって助けるつもりや?術式で怪物にされた連中を。それも人を食物にしとるんやで?」
「そ・・・それは・・・・」うなだれる。
「殺してやる方が連中にとっての幸せちゃうんか?人を食うしか生きる事ができひん魔物、怪物にされて。無理やりなんか、選んでなんかわからへんけどな。」
「お姉ちゃんは、黒衣さんからその辺はしっかり教わってたし。」
「黙れ、ユーリ。」
「・・・はい。」
「そんでもってや。まだいるかもしれへん娘どもやけど、うちらの事も疑ってかかるかもしれへん。こんな異常な館や。
人のツラした魔物がうろついてる中、うちらだけがマトモなんて思ってへんかもしれへん。手近な小物でも持って襲いかかるやろ。
抵抗するならマトモなハズや。で、もし見つけたらうちに一計がある。」
「へえ?」エレディタが。
「ユーリに任せる。」
「え?」
「まあ、聞けや。多分、恐怖でパニックになっとる娘連中をユーリに集中させる。そんでもって移動術式で街まで強制的に連れて行かせる。
うちらは3人になるけど、ユーリが戻るまで耐えればええ。街まで行けば娘連中の相手は誰でもするやろ。後はこいつが戻るまでうちらが耐えたらええだけや。どうや?」
「なるほど。効率的やな。」エレディタがニヤっと。
「そういう考えもあるか・・・すごいね、ユーニさん。」素直にうなづく。
「お姉ちゃん、うち急いで帰るのはええけど・・・迷ったりしたら?」ユーリが不安げに。
「術士いうのは、構成だけ編んどったらええわけやないで、拳聖、そんで剣聖。あの魔女がそうやろ?ほんでな、ユーリ。
移動術式で飛んだら最速で来い。時間はさっき測ったからな。遅れたらわかる。ええな?」
「ひえええ。」
「よっし。それじゃあ行きましょう!夫人がクロだったとしても、事件の解明だけでもしないと!」エレゼンの騎士、いや剣聖。
昼前にも関わらず、薄暗がりの邸内を歩き出す。