825セブンス。騎士の道とは。

ざっ!
チョコボから飛び降りた4人は館に目を向け。
そして、横合いから飛び出してきた魔物に不意打ちを。
だが。
3人の悲鳴の中、ひとり。

シャリン。
愛剣を抜き放ち、魔物の飛んでくる速度を利用して体重の軽い自分の欠点を補う。

「剣聖」の名を継いだエレゼンの女性、ミーランはデカイ目玉の魔物を文字通り一刀両断にし。
「行こう。」
少しやるせない空気が感じ取れるが・・・


(やっぱり・・・噂どおりなのかしら?)
騎士、ミーランの表情は曇る。


「ハウケタ御用邸」と銘打った表札を過ぎ、玄関へ。昼前にも関わらず人の気配というのがない。
玄関にあるノッカーに手を。
獣を象った、口にリングのついたそれは、極一般的ではあるが。
「ミー!」エレディタが。
「大丈夫。さっきの魔物はたまたま出てきただけだって。それが怖くって静まり返ってるんだと思う。」
「ミー・・・(さっきの魔物。アレしかおらへん。あの遺体の傷。しかも血がほとんどあらへんかった。つまり、ここで食わせた、としか・・)」

コンコン
ノッカーを叩く騎士。
(やりよったな、騎士様。)(せやなあ・・)(あの剣聖を継いだ、のはさすがや。でも・・)(せやなあ)(思慮がたらへん。)

ガチャリ。

「いかがなさいましたか?」エレゼンの給仕娘が出てくる。
「いえ、その。」答えがしどろもどろ。つまりは勢いだけでノックしてしまった。が・・
「その、もしかしてここでの雇用のお申し出でしょうか?」
「あ、その、ええと。」「そうや。」後ろからエレディタ。
「左様でございましたか。それではレディにお話を通しますので、邸内にてお待ちを。どうぞ。」
給仕娘が背を向け邸内へと案内される。

「エリ、ほら。大丈夫じゃない。」ミーランの声に。
(あほ!まんまと敵の腹の中やんか!)小声のエレディタ。
「心配しすぎだよう。」口を尖らせるミーラン。

(こいつら、今までよう生きとったな・・)(ほんまやな・・)姉妹がぼそぼそと。そりゃ確かに自分達に救援めいた依頼を振ってくるわけだ。

聞こえているのかいないのか、そのまま館の一室まで。
給仕娘は「こちらでしばしお待ちを。」と。案内された部屋はドア、ではなく鉄格子。
「ご主人様に捧げられるのをお待ちくださいませ。」給仕服の背中が音を立てて破れる。そして翼が。
「え!?」心底びっくりしたエレゼンの剣聖。
「ほらなっ!いうたやろ!」腰からはいつものナックルではなく、杖。
「くたばれ。」小柄なハイランダーの少女が構成を展開。術式を編む。
「やったるかあっ!」長身の妹が斧を振り回す。

「うふふふ。イキがいいのはメイド長もお喜びですわ!出ておいで、お前たち。」
反対側にある、おそらく使用人部屋から出てきたのは。
古びた燕尾服に身を包んだ白骨。
「・・・・。・・・・・・・・。」
もはや声など出せない体ながら、顎を動かし答えている。

「ミー!とりあえず、目の前の女から落とすで!こいつが一番厄介そうやっ!」
「凍れっ!」ユーニが2回目の術式を。
「あほか!お前死ぬ気!」エレディタが叫ぶ。

「構って欲しいお嬢ちゃんがいるわね。うん。大丈夫。殺さないから。優しくしてあげる。」
翼の生えた給仕娘。
「ほら。」
一瞬で暗い霧が蔓延する。
「わ!?」「離れろっ!」「な!?」「お姉ちゃん!」
3人が霧のようなものを吸い込んで倒れてしまう。

敵を甘く見すぎたか。こいつら・・・夢魔の類か?
エレディタはまず「うちの声が聞こえたら起きてっ!」回復術式エスナを。
「う・・。」立ち上がるミーラン、そして姉妹。
「ミー!、盾でしばけっ!」敵の構成が見える。立て続けにされたら、打つ手が無い。
「うん!」背中の盾を放り投げるようにして敵に当てる。
「つ・・・しね。」一瞬で構成が展開。その一言で発動。宙に浮いていた給仕娘が氷の塊になって廊下に叩きつけられ、砕ける。
「まだやわ。」骨相手に斧を叩きつける。ぐしゃ、と音を立てて。
「もう一体!」ジュワユースが煌き、骨が砕けていく。

「ふう。」剣聖はため息を。
「な?」相棒から。
「ほんま、甘ちゃんや。」術士の少女。
「せやねえ。」斧を背中にしまい込み、その妹。

「・・・うん。でも!って事は、わたし達みたいに雇われた子達がまだ邸内に捕まってるかも?」
「無い、とはいえへんな。」
「・・・その場合、見たくあらへんもん、見るハメになるかもしれへん。ええのんか?」
「お姉ちゃん?どういう意味?」

「まあな。」苦い顔で説明を始めるユーニ。

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