「エリ!」
相棒のエレゼンの女騎士から呼ばれ。
(そう来るやろな。)内心思っていたことが確信に変わる。
「ああ。行くで。」
ここは東ザナラーン、キャンプから少し移動したところの遺跡。
アマルジャ族を捕らえて、誘拐や略奪行為の事件の解決。そして「仮面の男」なる不可解な黒幕を探りつつ、
蛮族達の崇める「蛮神」なるモノの対応と、豪華てんこ盛りすぎて、正直イヤになる。
エレディタはそんな中、相棒であるところの騎士、ミーランの世話まで焼くのに手いっぱいだからだ。
でも。
この相棒はとんでもなくお人好しだが・・さらに天然ボケで、もっと言うなら男も知らないし、人を疑う事も無い。
この危なっかしい相棒のサポートをするのが・・・・・・とても好きだ。
実際、過去にも散々してきたのだが・・・今回は。
ミーが悪いわけじゃない。むしろ・・あの団体自体が少し怪しいくらいだ。
元々、ストリートチルドレンとして育ってきた彼女は、まず疑うことから始める。
甘言を弄して近寄ってくるヤツにまっとうなヤツはいない。
いいようにされるだけだ。
今回は、そうでもない、と思ったがやっぱり・・・。
腰に収めたナックル、「グランツファウスト(偉大なる拳)」に手を添える。そして・・ポーチからはみ出している枝にも。
後ろに控えるハイランダーの姉妹も準備ができた、というか出番が来るのを楽しみしていたようで、早く出ろ、と視線を感じる。
そりゃそうか。
ぞろぞろと姿を現す、漆黒の肌をもつ巨躯の蛮族。アマルジャ。
相棒は隊長の軍曹を気にかけているが・・・自分のすべきことはわかっている。
そこに「エリ!無茶はしないで!」なんて声をかけてくるあたり。
ったく、この相棒ときたら。ちょっとは自分の心配しいや・・・。
頬がゆるむ。
「ミー!」ことさらに大声で。
「こっちはこっちでやるさかい!そいつらブチのめせっ!」構えたナックルを目の前に出てきた蛮族に叩き込む。
「よっしゃあ!オッサン?共。いくで!」
周りを囲むように出ている3体だが、ぬるすぎる。
槍と剣で斬撃をしようとしているみたいだが、この遺跡自体それほど広くもない。
場所に応じた武器えらべ!ってなもんだ。
槍なら突きしかできないし、一対一ならともかく3体では得物が邪魔でろくに動けまい。
なので、この槍使いはゴミ同然として、剣使い一人に集中する。
こういった考えは、チルドレン時代には無かったが、今や師と仰ぐオッサンから教わった。
拳一つでリーダーを張ってきた自分としては、痛恨だったが。今となっては、尊敬に値する。
「てりゃ!」
剣を拳で弾くなんて真似はしない。ただ直線的に振るわれる棒を避ける。ガキの頃と同じ理屈だ。
その点、相棒のあの剣は反則だとも思えるが。
剣を振り切った後に出来るスキを巧みに突き、脇腹にえぐりこむような打撃を。
いかな巨躯とはいえ、内蔵がないわけではない。おおよそ人型をしている以上、似たような配置のはずだ。
「ボディがあめえよ!」肝をひねり潰す勢いで。さらに「お留守だよ?」と顎に一撃。
脳震とうを起こさせ、まず一体を倒す。
残りは槍使いが2体。お互い獲物が邪魔すぎて、ろくな行動が取れていない。
単なる突き技だけだが、先の一体をあしらいながらでも問題なく避けれている。大したウデじゃあない。
「ほんなら!相手してやろーやない!」
ぎあああ!
喚いているが気にせず、突き込まれた槍を軽くジャンプで躱す。こうすれば残りの一体が必ず逃げ切れないジャンプ中の自分に上段から突きをしてくる。
「わかってるっちゅーねん!」今度は槍をナックルで弾く。
もうこれで相手はすることがない。突き技は避けにくい分、出してしまえば後は引き戻すしかすることがない。
引き戻される槍を追いかけるように駆け、オスの急所に膝蹴りを叩き込む。
敵が悶絶する仲間に気を取られている隙に、ナックルをしまい込み杖に手を。
「ミー!」
相棒を見る。さすがの剣術か危なげなく敵を抑えているようだが・・一瞬、ヒヤっとした。
「エリ!?」とこちらを気にしているが・・問題ない。
構成を編む。
「!」
何かヘンだ・・・。
そして・・。