ふふ。
「くふ。」
抑えきれない。これほど笑えるとは。
耐え切れない。これほど間抜けとは。
「はーっはっはっはっはっはぁ!」
赤い長衣の商人。ウグストは。
時間は少し前に。
当初の予定通り、アマルジャ族が2体遺跡の階段を上ってくる。
「良し。予定通りだ。アマルジャ共を引きつけて、一気にケリをつける。」
軍曹が4人の冒険者と部下に。
こくり、と全員が頷き、壁際から出ようとした時に。
「ま、待って。軍曹さん!」ミーランが止めに。
「なんだ?」振り返るが、不滅隊の部下は指示のままに前面に出ていく。
ぐぎぎ。ぎおっ!アマルジャの掛け声に。
ぞろぞろと。数体、いやさらに。
「なんだ?」軍曹が顔色を変え「お、囮は?」と動揺を隠せない。
「エリ!」
「ああ!行くで!」
「ユーリ!」
「あい!お姉ちゃん!」
飛び出す4人。
不滅隊の面々は、動揺する隊長を見ながら指示を待つが・・・次々と現れるアマルジャ族にただ、抜刀すらできない。
そんな中、二人の隊員が。
「軍曹殿!」と。
「どういうことだ?」自身も出ていく・・
「こういうことですよ。くく。」剣を突きつける。
そこに商人、ウグストの高笑いが響く。
「あーっはっはっはっはっは!」
「お前ら・・・。」軍曹の顔が凍りつく。
「なあ、軍曹さんよお?なんで俺が物資の横流しとか出来たと思う?」
「ウグスト、説明は俺たちがしてやるよ!」元隊員、が。
「キサマら!」
「そう、何がどうなってるのか分かってきたかな?俺たちが情報を流し、お代を頂戴する。あの筋肉バカの言いなりでシンドイ思いするよか、よっぽど儲かるんだぜ?」
「ぐ・・・」
「お前らは、この場で返り討ちに会いました、って報告すれば全部終わり。ウグストの旦那は連れ去られました、って事でアマルジャのところでしばらく豪遊って寸法さ。」
シャキン。
蒼い刀身。
それが元隊員の目の前に。
「許せません。」エレゼンの女騎士。
「この、ジュワユースに誓い、あなた方を厳正なる裁きの場に連れて行きます。」
「あ?姉ちゃん。何いってる?お前ら全部貢物だぜ。その前にたっぷり遊んでやるがな。」
「・・・覚悟なさい!この外道!!」
「ミー!こっちはこっちでやるさかい!そいつらブチのめせっ!」
相棒の声に。
「エリ!無茶はしないで!それに、こいつらにはちゃんとした罪を償ってもらいます!」
蒼い剣を。
「なあ、お姉ちゃん?」
「なんや?」
「あっち、えらい熱くなっとるけど?」
「ほっとけ。また騎士様モードになったんやろ。」
「んじゃまあ。」「ああ。」
「「死ねや!お前ら!」」
氷柱がそこかしこに生れ、斧が鈍い光を軌跡を残して振るわれる。
「なあ、サンクレッドさん?」漆黒のエレゼンが。
「ああ・・。」
「お前さん、アレを見越して?」
「いや・・そうでもない。」
「じゃあ、なんですかぁ?」弟子の少女?
苦虫を噛み潰し・・
「保険、だよ。」
「では、加勢に行くか。てぃんく!」
「はい!」
「待て!今は静観しよう。ここで俺たちが出て行ってもまとめて返り討ちになれば、彼女達を誰が救うんだ?」
「その前に、今死んじまったらどうすんだ?」
「多分、だが・・行方不明者もいることだ、ここで殺すより、生け捕りにするだろう。」
「多分、ですかぁ。だめだめですぅ。」
「じゃあ、確実に、と言い直す。」
「なぜ?」黒い亡霊は怪訝に。
「・・・情報があった。裏からの。ただし、完全じゃない・・・。」銀髪を掻き毟るように。
「・・・・しょうがないな。しばらくは見ておこう。だが、後でその話はじっくり聞かせてもらう。」
「ああ。約束しよう。」
3人は裏手から戦いを見定めるべく、移動する。