「どうどう!」手綱を引く。
乗っていた騎鳥がクエエエェ、とひと鳴きし足を止める。
「なんとか、日が暮れる前には着きましたね。」
銀髪の青年は、チョコボから降りると、そのまま厩舎へと連れて行く。
「さすがに早いなあ。お姉ちゃん。」「せやな。マイチョコボとやらも欲しいかもしれへん。」
「てぃんくは、死ぬかとおもいましたぁ。」「こっちが絞め殺されるかと思ったぞ。」
「エリ、マイチョコボ欲しい。」「ミー、もうちょっとしてからな。」
「よし、まずは不滅隊の隊員を探してくる。君達は宿でも探しておいてくれ。それと、エーテライトと交感してない人は今のうちに。」青年はそういい残し歩いていく。
こくこく、とうなづく女騎士、その他はわらわらっと好き放題に散っていく。
「うちらは、うまい飯探しに行くし。ユーリ、来い。」「はあい。」
姉妹は早々に離れて行き、「じゃあ、俺達は・・そうだな。ミコッテの女性を探しに・・」「師匠、相変わらず腐っていますね。」とそのまま・・・
「ミー。そんじゃあうちらは宿やな。エーテはどうやった?」「あ、そうね。交感しとかなきゃ。」二人はとりあえず蒼い石まで。
「イセムバード殿。それでは手はずとして遺跡周辺で囮の例の商人を使って待つ、でいいんですね?」
「ああ。そうだ。先行隊がすでに遺跡に出発している。アマルジャ族が出る場所だからな。あまり大人数で連中を刺激しないために分散しての行動になるが。」
「そうですか。でもあの商人、信用できますかね?」
「サンクリッド殿。ご安心を。不滅隊が6名もついています。変な動きなどできませんて。」
「・・・ならいいのですが。」(少し・・不安が残るな。やはり、こちらも二手に分けた方が無難かもしれない・・・)
「おお、そうです。今夜の宿はお決まりに?」
「ああ、それなら仲間が手はずを。」
「そうですか。それでは明朝。日が昇る前に発たれるといいでしょう。場所は・・」
「ああ、大丈夫です。それでは。」
「お気をつけて。」不滅隊式の敬礼で送り出してくれる。
戻ってみれば、二人だけしかいなかった。
「やあ、ミーランさん、エレディタさん。残りの方々は?」
うー・・・と言いながらエレゼンの女騎士は、隣の黒髪の相棒を見て・・
「まあ、アレや。好き勝手に動いとる。」横を向き「ミーのせいやあらへんさかい、そんなに恐縮せんでもええで。」肩をぽんと。
「うん。」
「宿はうちらが確保したわ。姉妹はメシ屋探しに。あの兄ちゃんは女探しに。」
サンクレッドは・・・「女探し?」
「ああ、なんやミコッテの女がおらんか探しとる。誰か悲鳴あげとるから・・2,3人くらいはイラン事して殴られとんのとちゃうか?」
「・・・困った人だ。あの弟子のてぃんくさんは?」
「あの子は・・・本当に弟子なんですかね?」素朴な疑問だが・・・
「そうちゃうか?でもまあ、あんまり師匠を制御する気はないみたいやけどな。」
・・・・・・・・二人の沈黙。そのあとに遠くで女性の悲鳴・・きゃあ!何するにゃああ!ぐおっ!
「ほんま、懲りんやっちゃで・・・。」呆れ顔のエレディタ。
「もう迎えに行かないと・・・エリ。」
「そうやな。兄ちゃんも一緒に行こか。」「ああ・・。」
悲鳴のした方に・・・あんまり急ぎたくはない・・・関係者と間違われても困る。
行ってみると・・・ミコッテの女性に足蹴にされて倒れているエレゼンの青年が至福の表情で・・
「もっと・・」
他人の振りをして、やっぱりメシ屋に行こう、と弟子のララフェル(楽しそうに見物していた)を引き連れて。
周りを見れば、妹のユーリが店の前でモジモジしながら待っていた。
「はやく~」
「どうかした?」ミーランが気遣わしい言葉を。「お手洗いいきたいねん!」
「・・・・ごめん、行っておいで。」 無言で慌ててドアの向こうに消えていく少女。
「なあ、兄ちゃん。こんなんで大丈夫かいな?」「さあ・・・・?」
「なんとかしますよっ!大丈夫だって!」「・・・てぃんく、おうちが恋しくなってきました。」
食堂に入ってみると、すでにいくつかの皿をカラにしたユーニが「お前ら、おそいやんけ。」と出迎えてくれた。
朝焼けの中、7人はチョコボだと少し目立つから、と徒歩で移動を開始して。
「やっぱ、チョコボほしいなあ。エリ、このお仕事終わったらマイチョコボなんとかしようよ!」
「ミー・・せやなあ・・。でもあれ、世話大変ちゃうか?」
「う・・。そうかも。」
「まあ、オッサンに聞いてみよっか。」
「そうね、ユパ様なら持ってるだろうから。」
「うちらも欲しいわ。紹介してや!」「お姉ちゃん!」「なんや?」「うちも・・・」
「賑やかだなあ・・。さすが女の子達だね。」「そうだな。」「昨日の師匠も賑やかでしたよぅ。」
そこで「し、静かに。」青年が指を立てる。遺跡らしく、崩れた壁や柱が野ざらしに。
陽は未だ中天には達していない。
「ここで、二手に別れるとしよう。僕とフィズさん、ティンクさんはこっちに。」右を指差し、「ミーランさん達は、このまままっすぐ。不滅隊の歩哨がいるはずです。」
「はい。分かりました。」「ああ、ええで。」「ユーリ、シクんなや?」「任せて、お姉ちゃん。」
「では、お互いの健闘を。」 「応!」
そろり、と近づく4人。言われた通り、不滅隊の歩哨・・ララフェルがいた。「よろしくです。こっちから・・。」と誘導を始める。
壁際を移動しながら・・一人の中年のヒューランに「軍曹、お連れしました。」「よろしい。では、冒険者の方々。よろしくお願いしますよ。」
「はい。」「ああ・・アイツが商人か・・」「ふん、任されろや。」「お姉ちゃん・・・。」
「・・・このあと、あの商人がおびき寄せたアマルジャが2匹くる。そいつを取り押さえて、件の事件の真相と、誘拐された人たちの居所を聞いて、助けに行く。むしろ本番はこの後、だな。」
軍曹の顔がニッと笑みに。ヒゲヅラのいかつい顔だが、笑うと愛嬌がある。ララフェルの隊員もにかっと笑う。
「そろそろ、だぞ。」囮の商人は、飄々とした風で立っている。
そして・・・・・。