「いや、今回はエフェメラ。貴女の殊勲賞に乾杯を。」
カーラインカフェにて、弓術士ギルドマスターの女性、ルシアヌが。
茶色い髪のミコッテ相手にワインを片手に。
ぐいっと。
「あ・・と。その、ですね?ワタシ・・・。」と言葉が続かない。
目の前の鶏肉・・ドードー?リムサまで行かなければ獲れないそうだけど・・。を見ながら。
「いいじゃないか。さあ。」と、勧められ。
気前のいい話である。
とりあえず、ナイフとフォークを・・・
「なあ、スゥ?」
「なによ?」
「いい話はある。でしょ?」
「何を言ってるのよ、ホント。貴女が関われば、ただの風も颱風になっちゃうわ。」
スウェシーナは困った顔で。
「全く、ダな。」ケーキをつつく黒髪の美女はようやっと本題に触れたようだ・・・
3皿、いや、4皿目のケーキの最後のひと切れを頬張りつつ、「おかワり。」と、ミコッテの給仕娘に。
「その?フネラーレ?」と、左目を黒い前髪で隠した美女に声をかける鬼哭隊の隊長。
「ン?僕は仕事をしタ。」とだけ返され。
「太らない?」とは、魔女。
3人の中で一番若いはずの美女が、一番年かさの美女に「ちゃんト働いテるかラ。」とだけ。
「どうぞー!」と、馴染みのミコッテの給仕オーアが。
ケーキをテーブルに乗せると、それまで無愛想だった黒髪の美女は、天真爛漫な笑みで「ありがト。」と。
「そんで、本題よ。スゥ。」真剣な眼差し。
そんな親友に応えるべく・・「あの・・盗賊団、ね。」
「ええ。本来なら・・彼女達は、極刑。」
「心配しないで。そうならないように手配はしてる。」
「だといいのだけど。」と、ウィッチケイオスはワインを煽る。
「ったく。相変わらずのムチャクチャ振りで、しかも直接殴り込みに来るなんて。」
「そう?」
「審議会の連中、キモを冷やしてたわよ。それに、カヌ・エ・センナ様の名前まで出てくれば。」
「あのくらいのパフォーマンス、いるでしょ?」
「よくいう・・・。あの場で審議場が沈黙しなければ、本気で呼んだでしょ?」
「さて?ね。」
端のテーブルに腰掛ける二人の女性にワインを奢るようにオーアに伝え、「今日はお前の奢りだし。」なんて。魔女が付け加える。
「ねえ。フネラーレ。正直にね。この、コイツ。どう思う?」
「魔女・・・・。」ケーキのおかわりを注文しながら。
「あの?」
と、自分では・・未熟だとおもって・・でも。
プレゼントされた短弓は、意外と重く。でも。しっかりと馴染んだ。
(リーナさん・・。)
思い出に耽るとでもなく・・。だけど。
目の前にワインを出され、「あちらから。」と。3人の女傑が座るテーブル。
目の前のギルドマスターは、丁寧に会釈をしているわけで・・・。
ならって会釈。
すると・・。
グラスを片手に、エレゼンの女性は。
「貴女。商いをしてるんでしょ?」
へ?いきなり・・?話の展開が読めないエフェメラに。
「詩人、ってわかるかしら?」ルシアヌは、グラスの赤い液体を飲み干し。
「その?えーっと。詩を吟じるヒトですか?」グラスはそのままに答える。
「そうよ。伝説に数えてもいい。そんな方がいる。」
「・・。」
「貴女は。弓を扱うには、少し優しすぎる。だから、かしら。唄を。詩を。放つのはいかがかしら?」
「それって・・・。」
「吟遊詩人として・・。かつての英雄がいた。彼は戦いに疲れ、詩を愛でる事を、矢を放つが如く繰り返し。
そんな彼に、ギルドのメンバー達も憧れ弓の術を学びに。でも、彼は相手にしなかった。理由は「自分が放つのは、矢ではなく想いだ。」と。」
少し・・・。胸が・・・。リーナさん・・・ハウンド・・。
「貴女は。私の見たところ、だけど。何か想いがあるんじゃない?だから、彼も話を聞いてくれるかも知れない。」
「なぜ?」
「なんでしょうね?憧れだった人だから、かな。ごめん。お酒が過ぎたかも・・。」
夢見るような少女みたいな笑顔のギルドマスター。
「・・・グリダニア・・いえ。黒衣森に帰ってきてるそうよ。お話だけでもいかが?」
「その・・・ルシアヌさんは?」
「いいわ。私には、その資格もなさそうだし。」悲しげに・・うつむき・・席を立つ。
「それじゃ。お疲れ。」
お、「おつかれ・・です。」
ポカーンと一人。
その向かい側。
「えふぃー!ごめーん!」と。ミコッテの親友が。「いやほら?さっきの人ってさ。ええと、弓?ギルドのマスターじゃない?もう、声かけたかったんだけどさー。無理じゃない?」
「エリス・・。」
「あ、私にもワイン!」言いながら、目の前の鶏肉に最後の一撃を決めるべく攻撃を始める。
「そうだ!コタツ!」
うわ。そーきた・・。
夕暮れ前のカフェ。そして、ほどよく進むお酒。ここに来て・・・そう来るか。
「せっかく休みとったのに!エフィったら、連絡しても返事ないし。明日からは仕事だから、今夜はレイのトコでコタツ!」
「・・・意味がわかんないよー・・・・」
だが、誘惑には・・・
結局。
「コタツで丸くなる。」の意味を十分に堪能した。
ちなみに。
「ママ。辛すぎ。」淡いグレーの髪の少女。
緑色のカリーを・・最初は甘かったのに、と。
娘、息子。そして親友夫婦、その息子。さらには夫にまで。
「マユ。これは。美味しい。よ。でも。」と金髪の青年。
「えー。ウルラ。カリー好きでしょ?」と妻。
何故か汗だくの6人を見渡し、マユはう~ん。「ミーラン達、食べれるかな?」なんて。
「ムリ。」
自分以外の満場可決の審議が下った。