767プレセブンス。エレゼンの少女。2

お昼すぎになると。
「う~ん。」

今朝方、お別れしたメンバー(父親含む)が気になる。
朝食の手伝いと、まあ、いろいろあったのだが。
少女の胸の中の希望、というか。熱意なのか。
「ミーも、冒険者になりたいな。」
という想いは膨らむばかり。

瞑想窟の導師達からは、ここグリダニアで立派な幻術士となるように言われているし、友達もそのつもりみたい・・だけど。
自分はきっとスゴイ冒険者になれる、と信じている(友達に言わせれば夢物語だが)自分がいる。
「どうしたらいいのかな?」
まずは・・。
そう、とりあえず両親に相談すれば、だけど。
以前、父には猛反対された。特に相談したわけではないが、もともと父は瞑想窟で修行をしていたそうで、顔が利く、というのか。
どこからかそういう話を聞きつけ、さりげなく。そう、さりげなくと信じて(バレバレだが)注意めいた事を言われてしまった。
わざわざ言いに来るなんて、滅多に無いのに・・・。

それというのも、両親は元々冒険者で酸いも甘いも知っている、と。
で、いろいろと諭されてしまったわけだが・・
あの、自由奔放?な冒険者マユさんの話を聞いていると、どうにも我慢ができない。
「う~ん。」
やはり、母にもう一度。
相談はしてみるべきだ。今はまだ子供だけど・・この先ずっと子供じゃないのだ。
ただ、このままでは言ってもまた・・
よし。
次回の瞑想窟での実地でちゃんとした成果を。
これしかなさげ、かなあ。

「うん。」今日は講義も無いし、お手伝いも済んだ。やる事といえば友達と遊びに出かける事くらい。

「遊びに行ってきまーす!」
「いってらっしゃい。夕飯には帰るのよ!」
「は~い。」
うん。ネーベルと今日は・・・。


「や!ミー!」活発な少女、ネーベル。ヒューランの彼女はイタズラが大好きな同い年の子。
「やほ!」と応え、二人揃って遊びに行くのは水車四辻。
冒険者達が色々な用事?で走り回ってるのを追いかけたり、屋台で買い食いなど。
あれこれと見ながら、たまに外の黒衣森に出かけたり(そして門番の鬼哭隊の衛兵に叱られたり)
「ね、ネーベル?」
「どしたの?ミー?」
「今日は森いこう!」
「あら?珍しい。どうかしたの?」
「うん・・ちょとね。」
「ほーう?」
「実はね・・」
夕べの冒険譚を話して聴かせるには、街の喧騒より、森の中の方がいいと思ったのだ。
赤い髪をオレンジに映えさせ、エレゼンの少女は駆け出す。
「待ってよー。」と、親友が笑いながらついてくる。

ネーベルが見つけた抜け穴?でこっそり森に出かけ、生い茂った草野でしばし遊んだ後、ばさりと寝転がり、こういう話聞いたんだ。って。
「ふうん。面白いかもね。」緑っぽい色合いの髪の少女が。
「でしょ?」ミーランは楽しげだが。
「でも・・。怖いよ。」
「そうかな?」
「!?ミー!」
「え?」
ネーベルは起き上がり、震える声で「ま、魔物・・。」
「!」
遊ぶうち、いつもより遠出してしまったよう。
すぐ近くに大きなキノコがある。やや赤みが強い。
それを見て。「ファンガー?」落ち着け・・ミー・・「あれは。」あれは?どうすればいいんだっけ?
「私が術式組むから!ミー、鬼哭隊の人読んで」構成を編み始めるネーベル。
あ!
「だめ!」
手を出さなければ、アレは何もしない!
「風よ!わたしは声以て約束を!」凛とした声と構成が術式を展開させる。
遅かった!!!
赤いキノコはその本性を現す。大きな胴に顔がついた魔物は受けた傷に対し、怒り、というか、生命の力を減らされた分を吸収すべく走り出す。
「きゃああ!」親友の声が悲鳴に変わり、自分も何かしなければ!と。「風!意に応えろ!」と術式を展開。
焼け石に水、だ。
わかってはいた。
でも。
こっちに魔物が・・・来ない。

「なーにやってんの?子供がこんなとこまで。」
見れば、白髪、黒い肌のミコッテの女性。手には弓。
「あ。あの。」
「ああ、気にしないで。こんなの、狩り以前の問題よねぇ。」矢で串刺しにされたキノコはもう動かない。
「ありが・・」ミーランは声もつづかない
「だからいいってば。くすぐったいから。じゃあね。」
「その。お名前は?」
「あー・・。ま、いっか。パワ。だよ。パワ・ムジューク。しがない狩人さ。さ、子供はさっさとお帰り。」

ちょっとした冒険の後。
ネーベルと一緒に街に戻り、鬼哭隊のお姉さんからも注意を。
そして、しょんぼりしながら二人は別れ・・

「うん。決めた。ミーはやっぱり冒険者になる。そして、大事な人を守れるようになる。」


母、メーヴェには・・ちゃんとした説明とか、いろいろしなきゃ・・。


夕飯の後、母は理解を示してくれた。
「そーね、わたしもねえ。」やんわりと、武勇譚を語りながら。「そうなると思ってたわ。」
斧使いとして名を馳せた(らしい)母は、あれこれと注意をしながら。
「うん。」「はい。」と繰り返しながら。ミーランは父をどうやって説得するか、考えていた。

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