暗がりだが、なんとなく空気が綺麗だ。
それもそのはず、ここは森の都。樹々が、河を流れる清水が、常に空気を整えてくれる。
夕闇も通り過ぎ、暗くなった夜道を路傍の灯台が足元を照らし、店舗の灯火が今からが本番だ、とばかりに、頭上を照らす。
意外と明るい道を二人の女性が並んで歩く。
二人は、着物と呼ばれる東方の召し物で、黒髪の方は闇に溶け込みそうな藍色に大小の白い雪が舞い散るような。その着物を前を大きくはだけ、裾も少し広げてある。
もう一人は対象的に純白の髪、着物の色合いは臙脂色。無地で、こちらは清楚な感じで着こなしている。
「お姉、どこに?」白髪の女性と黒髪の女性は姉妹で、それも双子。
面立ちは似ているが、髪をただ束ねただけの姉と、結い上げた髪の妹。
「いいから、おいで。」姉、黒雪はスタスタと、妹、白雪を促す。
二人はそそくさと歩みを進め。
しばらくすると、一人の人影が。
「よぉ。」姉の一声に「時間通りだにゃ。」暗がりに潜むように茶色のミコッテの女性。
「ああ、話しを聞こうじゃないか。」「お姉?」「いいから。」
胡散臭げな、ミコッテに着いていく事しばし。
広い場所に出た。
なんだったか?音楽堂とか言っていたか?首を傾げる。妹にいたっては初めて見るらしく、ぼけっとしている。
そこに。
「やあ、お二人さん。」銀髪の青年。へらへらした表情だ。
「じゃあ、キーさん後はよろしくね。わっちは屋台たべてから~。」手を振っていく。
「ったく、ショコラっ!遅くなるなよ?彼女、今日もご機嫌ナナメだぞ!」
「にゃー!」
「コホン。失敬。今回の案件というのはですね。事前のゴミのあぶり出しと始末、なんですよ。」
「は?」「え?」
「明後日に、この音楽堂でグランドカンパニーという物があるんです。」
「なにそれ?」「・・・。」
「高度に政治的な軍事同盟です。」
「そんで?」
「当日には、双蛇党党首カヌ・エ・センナ様がお越しになられる。そして、それを機会だと勘違いする輩が居る、という情報をね。と、いうわけでカヌ・エ様を警護してほしい。」
「ふん、かまわねえがよ?そんな場所、人が集まるんだろぉ?うちらみたいなのが一緒におったら、目だって仕方ねえんじゃね?それに明後日だろ?キャンプでも張れ、ってか?」
「はい。それは問題ありません。今から襲撃をしますから。」
「はぁ?」「え?」素っ頓狂な声の二人。
「先ほどの情報屋からネタは仕入れてありますし。それと僕はその案内までです。戦闘力なんて、皆無ですから。」
「ち。行くぞ、ハク。」「どうぞ。こちらです。」
「でもナンでだ?こっちからだと?」「それは、向うはあくまで襲撃をしようとしているから、まさか先手をとられるなんて思っていない、なので油断しているから、ですかね。
ああ、そうそう。アジトの中で皆殺しにしてくださいね。人数は確認できているだけで10人。
手狭なのでその長いものを振り回すには少々遠慮してる場合じゃあ無いのと、やっぱりこういう種は摘んでおかねば。」
「く。ハクには・・・」「だから、その件はお任せしますよ。トドメを刺すの、貴女でいいじゃないですか。」「お前・・・。」
「おっと。見えた。あの小さいボロ小屋ですね。意外と内装はしっかりしてるんで、崩れることは無いと思います。」
「わかったよ・・・。」「。。。」
「では、ご武運を。」「言ってろ!」
「行くぞ、ハク。とりあえず、お前は手を出すな。もし、うちが危なそうならその時は頼むから・・・。」「うん。お姉。」
こんこん、ドアをノックする。
「なんでぇ?・・おんな?」
「道に迷いまして・・・一夜の宿をと・・。」
「へへ、いいぜ。」目線ははだけた胸元に釘付けだ。
「こっちに・・・・」振り返ると、手招きして廊下へ進もうとして・・・ぐぼっ 血の塊を吐き出し、男は絶命。
背後から心臓を一突き。
「よし、来い。」妹ができるだけ死体を見ないようにかばいながら。
殺戮の夜が始まる。