寝台から降りる。
大きく伸び。
振り返ると、寝台には「黒猫」と呼ばれる大商人の青年。
彼は満足したらしく、動かない。
自身も身体の相性は良いとおもう。
湯浴みに。
「ふう。」
こんな大層な湯浴みの施設があるなんて、さすがだが。
火照った身体を癒すように。
「このまま妾、か。」
この出自だと、正妻にはなれないだろう。
仕方あるまい。
だが、やるべき事は果たす。そのパートナーとして抜群だ。
帝国への報復。そして、帝国に売り渡した両親への報復。
ミコッテの女性は暗い笑みを浮かべる。
そこに。
「どうした?」
と。
浴室で、もう一度。
一度、自室に帰り、木箱の在庫の確認を。
「ひい、ふう、みい・・・」
そして、余分にスタックしてある木箱から。
黒い鉄の固まりを。
「見つけた。」
あの「黒猫」の情報はすばらしい。やっと復讐の相手を見つけられた。
「やっと、親孝行できるんだね。」
ダイスを振る。
出目は・・・4
「いいね。」
4=死
小麦色の肌に金髪の彼女は、銃を腰に。
リムサ・ロミンサの街を歩く。
途中海賊達に絡まれるが、銃を見せ付けると逃げていく。
そして、逃げないヤツ達には、「黒猫」の名前を出す。
当然逃げていく。
「たしか・・このあたり・・。」
周りを。
露店があったり、冒険者達が賑わいだしたり。
まだ明け方から少し、というのに大したものだ。
その一つの露店。
「居た。」
露店の店主。間違いなく父親。そこに。
「ねえ、一品、なにか。」と。
「はい、おねえちゃん!」
「自分の娘すら見分けがつかないんだ?」
「あ?」
パン。
パンパン。
銃が火を吹く。
その音を聞きつけ、母親も。
「あ!貴方!」
「お前もわたしの事すら覚えてないんだね。」パンパンパン。
二人を葬り、復讐の一つを。
次は帝国だ。
「おいっ!お前っ!こんな街中でこの無体!許されるとおもうなっ!」
冒険者が数人ほどシックスを囲む。
「あ?コレが見えるか?」
羊皮紙、丁寧な印刷がなされたそれは。
「殺人免状」
「お・・お前・・。」
「ああ。わたしは殺人許可証を持っている。お前ら、死にたいか?」銃を魅せつける。
「い、いや・・。今のは見なかった。それでいいか?」
「賢明だ。」
銃を懐にしまい、去っていく。
あの男との関係も、この許可証が一番欲しかったからだが。
まあ、商売相手としても、寝る相手としても都合がいいのは間違いない。
これからもしばらくはお相手願おうか。
ダイスを放り投げる。
出目は・・・3。
「現状維持、ってところね。」
ガラス細工のダイスを拾い上げると、ポーチに。
「はぁ、メシ食う気失せた・・。」
そのまま、宿か、屋敷か。
どうしようか考えながら道を・・。