「私、世界が見たい。」
一人のミコッテの少女。
「お姉、どうしたの?いきなり。」
歳の離れた弟が疑問符たくさんの顔で聞いてくる。
「だって、こんな小さい島国だけで、私の人生終わらせたくない。」
「そんなあ。出て行っちゃいやだよう。」
「心配するな。成功すればお前も呼んでやるよ、エレン。」
サベネア島の都市国家、ラザハン。
ここに居を構える家族の長女、マルス。
父母は共働きで、公務員に就いている。
しかし、いかにも退屈な仕事だと常に思っていた。
そして、自分もそんな生活と、伴侶を迎え、退屈な人生を送るのか、と思うと寒気がしてくる。
そして思い至ったのだ。
この島を出て、一旗揚げるのだと。
15歳といえば、十分に大人扱いされる割に、できることは少ない。
だが、決意はできる。
「お父さん達には悪いけど、もう準備はできてるの。」
資金は日雇いの鉱石集めでなんとかリムサ・ロミンサ行きの船のチケットを手に入れた。
後はちょっとした手荷物・・・着替えやその他。
泣き顔の弟の頭をくしゃくしゃ、と撫で回した後、玄関へ。
「さあ、マルス・ローウェルの一世一代の冒険と行こう!」
自身を叱咤する。
船着場にやって来て、「よし!」と気合を。
チケットを買いに来たときにも思ったのだが、やはり男性が多い。
ルガディンや、ヒューラン、エレゼンなど。
ミコッテはかなり少ない。特にミコッテは男性が少ないゆえに、自分はかなり目立っているだろう。
「そこのお嬢ちゃん。船に乗るのかい?」
船乗りが聞いてくる。
ヒューランの男性で、潮焼けした肌に髯を蓄えた中年。
「ええ、そうですけど?」
「はは、一人で乗るとは中々大したタマだ。」
男は空を見上げると「もう半刻後に出航だ。乗り遅れると次の便は3日後になる。今のうちに船室に行くといい。」と手を振り去っていく。
「どうも。」と見送ると、乗船する。
船内をキョロキョロと見渡し、キャビンを探す。
「あ、どこかしら?」船員を捕まえ、チケットを見せる。
「ああ、このチケットは・・」
三等船室。
一番安いチケット。
船のキャビンで一番高いのは、やはりデッキに近いし、広いのだが、安いのは一番下にある倉庫のワンフロア上。窓すらなく狭い。
そこに案内されると、少しガッカリする。たしか食事は一食だけつく、という話しだが、どうにも期待はできそうにない。
だが、少女の手持ちの資金では、これで精一杯だったので、あきらめる。
食事に関しては、家から魚の燻製と、持ちのいい硬めのパンを持ってきた。水筒もあるから、なんとかなる、か。
狭い部屋に寝台が一つだけの殺風景なところだが、荷物を置き寝台に腰掛けると少し気が緩んだのか、涙がこぼれた。
「だめだめ。ここからよ!」
笛の音とともに、船体が揺れる。
波の音と共に揺られながら、寝台で寝そべるくらいしかすることが無い。
二日後、目的の街リムサ・ロミンサに到着した。
「はぁ・・・。」
船から降りると、うぷっ。
戻しそうになる。
胃がどうにかなったかのように暴れている感じ。
初めての船旅で、酔ってしまった。
持ち込んだ食事以外に食べたものは、パンと豆のスープだけだった。
やはりと言えばやはりだが、それでも戻すのはさすがに・・・なんとかこらえる。
「ここが・・・」港街。
青い空の下、白亜の塔が立ち並ぶ。
その光景に、ポカンと見上げてしまうしかない。
「おい、お嬢ちゃん。この街は初めてかい?」
出航前に出会った船員。
「え?あ、はい。」
「そうか、なら気をつけるこった。この街は海賊の街でもあるからな。」
「へ?」
「だから、お嬢ちゃんみたいな世間知らずがあちこちウロチョロしてると、人買いに連れて行かれるって話しだよ。」
「えええ!?」
「まあ、とりあえずは、あの真ん中のでかい塔があるだろう?」
「うん。」
「あそこに溺れた海豚亭って酒場がある。そこのマスターに話をつけてきな。」
「酒場?」
「ああ。そこのバデロンってヤツだが・・最近買い取ったらしくてな・・・。まあいい。ソイツは信頼できるやつだ。俺もたまに行くんだが、気のいい男さ。」
「そう。」
「まあ、気をつけて行けよ。ああ、俺の名前を出せば、いいように取り計らってくれるさ。」
「あ、ありがとうございます。」
「俺の名は、カンタール、だ。バデロンによろしくな。」手を振り去っていく。
何人かに声をかけられながら、なんとか酒場にたどり着く。
(こ、こわかった・・・)
そして、カウンターの向こう側にいる髯のマスターのところへ。
「あの・・・」
「どうしたい?お嬢ちゃん。ここは子供の来る場所じゃあないぜ?」
「あの、その・・・・カンタールって人から紹介されて。」
「アイツか!あの野郎、また厄介事持ち込みやがったな!」
「え?その・・とても親切でしたけど・・。」
「ツケもまだ払いきれてねえし、こんな子共紹介しやがるし・・・。おい、ウルスリ。お前の部屋毛布余ってたな?」
「はい、マスター。」
「しばらく面倒みてやれ。」
「はい。お嬢さん?お名前は?」
「マルス・ローウェル、です。」
「そう、マルス、しばらく私の部屋で寝泊りしながら街の事を知ればいいわよ。」
「はい!ありがとうございます!」
少し年上のエレゼンの女性は優しく微笑む。
「まったく、厄介事ばっかりだな。」
「マスターほど厄介な方も珍しいですが。」
くすっ。
少女が笑う。
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気になったところ
”ミコッテはかなり少ない。特にミコッテは男性が少ないゆえに、自分はかなり目立っているだろう。”
男性が少ないと書いてあるのになぜ女性の自分が目立つと書いてあるのか気になった。
Marth Lowell (Durandal) 2013年10月21日 17:29
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姉の寝台にもぐりこんだり、姉の旅立ちに泣いたりするあたり、
エレンはお姉ちゃん大好きか(´人`)
Marth Lowell (Durandal) 2013年10月21日 17:33
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>マルスCEO、それはですね。
総数として波止場にはミコッテが少ないうえに、女性自体が少ないから。
男性ミコッテが多ければ、まぎれるような感じだけど。
なので、女性ミコッテは目立ってしまう、という流れに。
そして、エレン君はシスコン疑惑が出てきましたw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年10月21日 18:40
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ラザハンってレリッククエに使う”ラザハン焼入油”の産地かな?w
これが輸入できればかなり儲けが出そうだw
(本物はエクレアだけど)
Marth Lowell (Durandal) 2013年10月22日 19:27
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>マルスCEO、ソコまで到達できてません、あたしw
で、過去にサベネア島にあるラザハン、この前話しましたが、おそらくそこじゃないかしら?
リムサの西にある、という設定だったのを使いました。(ゲーム内での)
ちょうどアリティア社があるのがリムサでしたので。
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年10月22日 23:29