「ねえ、叔母さん?」
10歳ほどの少年。黒っぽいが、すこし明るい髪。
幼さが残るが、将来的には男前になるかもしれない。
「いだだだだだ!」
向かいにいる黒髪の美女が握りこぶしを少年のこめかみに当て、ぐりぐりと。
「おねえさん、だろ?」
目は真剣だ。
「ちょっと!姉さん!」
白髪の双子の妹が止めに入る。
「白雪は黙ってなさい。躾は必要なのよ。」
「た、たすけて・・・。」
「ごめん。もう無理。」
「そ・・・そんなあああ・・・。」
少年はこめかみをぐりぐりされたまま、別室に連れて行かれた。
ある案件で身請けをした少年を二人で面倒を見ようと。
白雪は、姉からそう聞いた。
「もう。姉さんったら・・。」溜め息ひとつ。これで幸せの精霊をひとつ殺した事になるのか。
双子の姉は、自分とは対象的に黒い髪、装束も胸元をはだけさせた着流しで(自分はきっちりと襟元を閉じている)で、しかも攻撃的な性格。
これほど似ていない双子もそれほどいまい。
「そろそろ助けがいるかしら・・。」
大体、こうやって連れて行かれたら、吊るし上げになっている。
部屋に行くと、案の定腰にロープで天井から吊るされている。
「はあ。」
抜刀。
落ちてくる子供を抱きとめる。
姉はほったらかしでどこかに行ったみたいだ。
「お姉ちゃん、何処行ったか知ってる?」
「わかんないよう・・・。」半泣きの少年を抱きしめてあげる。
「まったく。あのガキときたら。何時になればわたしの事を「おねえさん」って呼べるのかしら。」
黒髪をなびかせ、河のほとりから街の中心街に。
夕ご飯の食材と、子供用にお菓子を買いだしに。
食事は妹に任せて、あとは自分用にライスワインと、肴を。
そこに。
ぽんぽん、と肩を叩かれ。
反射的に腰に手をやる。
だが、さすがに街中。剣は佩いていない。
「誰!」
振り返ると。
銀髪の青年が笑顔で。
「僕ですよ。キーファー。」
「何のよう?」
「いえ、なんか「家」に人が増えましたね。」
「それが何か?」
「いや、まあ、基本的に「家」の管理は所有者任せなんですが。あんまり無関係の人間を入れると、可哀相ですよ?」
「始末すると・・?」
「いえ。さっきも言いましたが、所有者任せ、です。ただし。「仕事」に関して無関係ではいられなくなります。」
「!」
「もちろん、年端のいかない子共なんて、暗殺の仕事なんてさせれませんからね。ただ、貴女がどういった職務をしているか、は知られるでしょうね。
それと、妹さんですか。同じくらいの腕前とお見受けしました。こちらにも案件が舞い込む事は承知願えますかね?」
「白雪に!」
「はい。」
「許さん!」
「なら、何故入れたのです?」
「・・・・。」
「あの「家」に入れば、当然の事。こう言ってはなんですが、僕も「家」に関わってからは、汚れ仕事なんていくつでも。自分の妻ですら、殺害依頼したくらいですから。」
「なっ!」
「密偵だったんですよ。某国の。幼馴染だったんですけどね。いつのまにやら。なので、葬儀屋に頼んで消してもらいました。」
「お前・・・・。」
「ええ、心は痛みましたよ。当然です。ですが、その時に心は死にましたから。と、いうわけで、そういう覚悟くらいはしてくださいね?」
へらへらとした表情は変わらない。
「・・・・。」
「どうなんです?」
「汚れ仕事はわたしが。なので、妹には暗殺みたいな仕事はまわさないで。」
「いいでしょう。それと、例の「樹」の件ですが。そろそろ出番でしょうかね。斥候が「樹」のあたりに出た、という報告が。ま、今日お声をかけたのは、こっちが本命なんですが。」
「それだが・・。あの黒衣とやらは?」
「ああ、彼は今どこかに遊興に。いつもの事でして。」
「あいつ、何者?」
「名前の通り、ですよ。ここだけの話しですから、他言無用でお願いしますね。」
「はぁ?」
「彼は「黒衣」つまり、「黒衣森」なんです。」
「え?」
「彼は、森の意思の具現者。その意志が人の形をとっているんです。」
「・・・?」
「簡単にいえば、彼は人ではありません。精霊ともちがう、か。森そのもの、と言っても過言では無いでしょう。」
「な!なんでそんなやつが!」
「それも、森の意志、って事でしょうね。彼にしか分らない事です。」
「どうりで・・・。」
キーファーはクリスタルを取り出すと。
「他言無用、とは言いましたが、今の記憶だけは消させていただきますね。」
「こいつ!」
「汚れ仕事はわたしが。なので、妹には暗殺みたいな仕事はまわさないで。」
言いたい事を告げると、その場を後にする。
少し頭がくらくらするのは、寝不足だからか。
買い物を済ませた今、さっさと帰るに限る。
なにやら、案件の話しも聞いた気がするが、どうせまたやって来て話すだろう。それまでは放っておけばいい。
着流しを風にゆられ、「家」に帰っていく。
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ラプさんにハクセツのこと「サブ」って言うと怒るんだよねw
うちのセネリオとエリスも双子だけど小説内に似た性格の双子は居ない気がw
Marth Lowell (Durandal) 2013年10月19日 07:40
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>マルスCEO、それはあたしのせいじゃないw
ラプたんの「自分の設定」を聞いたうえでこういう風にw
白髪、知性派、あとは泣きホクロが、って。
セネリオ・エリス姉妹は、おんなじキャラだとつまらないなあ、って。
こっちは、あたしの仕業ですがw兄弟姉妹でも、性格はかなり変りますからねwそういう事でキャラ作りをしていますw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年10月19日 08:09
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追記。
双子の初出は、ウルラとマリーですが。
男女の違いもあり、性格には差をつけたんですがねw
同じキャラ(個性)だと、うーん。ワンシーンは面白いとは思うんですけどねえ。奥が出せない、というか。難しいですね。
一コマだけのキャラなら、面白そうだけど。
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年10月19日 08:42