「ねー、お姉ちゃん。ココどこー?」
ハイランダーの少女、ユーリは深い森の中を姉と彷徨いながら。
「アホか、お前が地図なくさへんかったらすんだやろうが。」
姉のユーニ。
色違いのブロンド、背も姉は低いが妹は高い。一つ違いの姉妹だが、見た目はかなり違う。しかし瞳の色は同じく蒼い。
顔つきも、姉ユーニは吊り目で、ヤブ睨み、細もての美人タイプだが、その目つきが台無しにしてしまっている。
妹のユーリは丸顔のタレ目で愛嬌がある。
ここは黒衣森。二人はザナラーン出身だけに、この土地には疎い。
そして、とりあえず探索をしようと繰り出したわけだが。
先の騒動で妹が地図を失くしてしまい、この有様、という訳だ。
移動術式で帰れるのは承知しているため、森の中で飢え死にすることは無いと分っているので、そういう意味では気は楽なのだが。
鬱そうと茂る森の中で、迷子になるのもあんまり気分がいいものじゃない。
まだ陽は高いし、それほどでもないが、このままだと夜まで迷子になるかもしれない、と考えると少しへこむ。
だが。
「ん?」
頭二つ分は背の高い妹、ユーリが。
「なんや?」姉には見えていないよう。
「お姉ちゃん、なんかあんで。砦?」
「おう、よう見つけた。ほんならそっち行こか。」
「うん。」
姉妹はそろって駆け足・・・ではなく。
二人ともが、特に姉は背が低いのをコンプレックスにしているため、かなり厚底のブーツを履いている。なので、走るのが苦手なのだ。
妹の方は普通にハイランダーらしく背が高いのだが、装備的にブーツを履いているため、さらに背が高い。もちろん戦闘用のブーツなので走りにくい、というわけではないが。
姉にあわさないと、何を言われるか、いや、されるか分らないので、こういう事になる。
「あれか。」ユーニにも視認できた。
「なんやろな?砦・・?監視塔?」妹が。
「そんなもん、行ったらわかるわ。」
「そらそうやな。」
ほどなくしてたどり着く。
ユーニが衛兵をつかまえて、「なあ、おっさん。ココどこや?」
「な!」鬼哭隊の衛兵は目の前の少し背の低い、といっても目線が少し下の少女に。
「なあ、どうやねん?」と凄まれて。
「ここは、ガルヴァンス監視哨だ。君達みたいな少女は危ないから、中にはいりなさい。」
「ナメてんのか?」
一瞬で展開される術式。
「ま、待て。悪かった。冒険者だね?それなら奥にいるフィンネアという隊員に事情を聞くといい。案件があるみたいなんだ。」
あまりの術式に声もおどおどとした隊員に「おおきにな。」と二人は奥に。
「なんだったんだ?あれは。」隊員には理解できないクラスの緻密な構成。しかも膨大。あんなものを一瞬で組み上げる、なんて、それこそ理解ができない。
驚愕と共に二人を見送る
「このヘンかな?フィンネアはーん。おらんか?」
するとユーニの声に。
「私だが。」仮面をつけた隊員が現れて。
「なんや、あんた案件があるんやって?うちらが始末したろうやんか。報酬はでるんか?」
「ああ、そのことか。私は森の巡回もしているのだが、ここでの職務もあるゆえ困っていたのだ。できればお願いしたい。もちろん報酬も出そう。」
「ほな、契約成立やな。ほんで、なんや?」
「実は、タムタラという墓所がある。そこには5年前の大戦で命を落した者たちが眠っているのだが、その英霊達に手向けられた花を、魔物達が食い荒らしているのだ。
一度は駆除してみたものの、また増えて手におえないのだ。たのむ。連中も悪意あっての事じゃないのは理解している。だが・・。やるせないな。」
「ほうか、そら難儀な話しやな。ああ、あと地図をおくれ。このアホな妹が失くしよってな。場所がわからへん。」
「ああ、それなら・・・・」
「お姉ちゃん、何もあんなトコで言わんでも・・・・。」
半泣きの妹に
「アホ。これでユーリかて自分がどんだけアホな事したか、わかったやろ。これで学習できひんようやったら、ほんまにアホじゃ。」
姉は容赦が無い。
陽も暮れはじめる中、なんとか目的の場所に。
「この辺、か・・・。」魔物を引き寄せるための物、古くなったエール。
これを巻くこと少し。
「な!」「ちょっとお!」
二人して悲鳴をあげる。
やってきたのは、ヌメヌメとした一抱えもあるかというサイズのナメクジ。
「聞いてねえぞお、コラアァ!!!」
ユーニが叫ぶ。彼女はこういったものが特に苦手で普通の人差し指サイズでも悲鳴をあげて逃げていくのに。
「こ、コレ、斬るの?」同じくあんまり得意ではないユーリ。
斧を出したのはいいが、手が震えている。
とりあえず、魔物達はこちらに気づいたらしく、ヌメヌメとやって来る。
「恐怖しろ!」
一瞬の術式で身体の半分を氷付けにされ、動きが鈍るナメクジ。
しかし、ナメクジは一体やそこらではない。ぞろぞろと。
「くっそ!」斧を振り回すが、きりがない。
「絶望しろっ!」
確実に数体が凍りつく。が、まだいる。
そして、3匹ほどが体を持ち上げるかのようにして、いきなり粘液を巻き散らかした。
「ぎゃあ!」姉が絶叫する。
まさかの攻撃に二人ともが粘液まみれになる。
頭から粘液をかぶされ、口元を拭おうにも袖すら粘液まみれ。呪が紡げない。
「こんのくそったれ!」妹が斧を振り回すが、やはり粘液で手元がすべるのか、致命的な打撃を与えるには至らない。
(ええやんか、やったるわ。)
袖を振り払い、なんとか口元を拭う。口の中に粘液が入らないようにしてから
「死ねっ!」膨大な構成と共に術式が展開され、残りのナメクジ達が自らの水分で氷付けにされていく。
さらにそれを斧で叩き割っていく妹。
全てを始末し、二人とも無言で報告に。
「ご苦労だった。」と隊員。
「・・・・・・・。」口を開けば、粘液が入りかねない・・・・。
「ああ、そっちの厩舎の裏に水浴び場がある。入るといい。着替えも用意しておこう。」
「・・・・・・・・・・。」頷く。
水浴び場にて
「なあ、ユーリ。」
「なんや?お姉ちゃん?」
「サイアクやったな。」
「せやなあ。」(むしろ、最後のあの術式展開はかなりイカレてた・・・全く理解できないくらいの構成をあの一瞬で。)
着替えて、元の装備は洗濯してくれるそうだから、一晩は此処で過ごすことに
そろそろ夜も更けている。宿代もいらないらしいから、コレ幸い、と。
「んじゃ、明日は街に帰ろうか。」
「せやね。」
二人は宿舎で眠りに落ちていく・・・・・
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うぇ…ゃぁ~…ぺぺ。想像したくない状況…。
ゲームの中じゃ、たいしたことないのに…。
Ephemera Mitoa (Durandal) 2013年10月09日 19:59
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タンクと後衛の構成で後衛に敵の接近を許すのはどうなんだw
Marth Lowell (Durandal) 2013年10月09日 21:34
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>エフィたん、マジでイヤw
でも、この攻撃食らったら、喋る事はできなくなると思うwリアルだと。
さすがに見た目はともかくナメクジのヌルヌルが口に入るのだけは、絶対防衛ラインだね!
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年10月09日 23:55
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>マルスCEO、見ての通りw
嫌悪感丸出しで術式使いまくって(パニック状態)ヘイト稼いでいますw
しかも、初見の敵なので、特殊攻撃が何か知らない、というのもこの結果ですねwユーリは最初から震えてるんで、そんなにタンクとしては機能してませんw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年10月10日 00:07