黒髪の女性は、なんということはない理由で森の都に来ていた。
数日前に、ちょっとした、依頼、というか。
たまにあちこち歩いていると、パールに警報が入る。
F・A・T・E、通称、「フェイト」と呼ばれる討伐依頼。
そんなもので、つい参加してしまったのだが。
結果はノートリアスモンスターの駆除を成し遂げ、凱旋、と行きたかった,だのだが。
「あー・・・。」
頭から粘液でべチョべチョ、裾は川で水浸し。
お気に入りの着流しや、かんざし、さらには愛刀まで、という有様。
ウンザリとして帰ってきた後、洗濯や水浴び、刀の手入れと、凱旋とはちょっと言いにくい。
というわけで、この数日。着物が乾くまで部屋で素っ裸で過ごしていた。(着物は下着をつけないものだ)
ノック。
「お客様。お食事をお持ちいたしました。」
宿、とまり木の階下にあるカフェからの。
「うーん。いつものとおり、テーブルに。」
寝台でごろごろと。
「はい。かしこまりました黒雪さま。」
グリーンの給仕服のミコッテはそっと部屋に入ると、食事をテーブルに。
まだ朝も明けて早いが、このミコッテは時間にはしっかりとしている。
「それではまた。」と、丁寧にお辞儀をしてから退出し、鍵もかけていく。
食事を済ませ、着物の調子を見る。なんとかなりそうだ。
「しょーがないか・・。」仕事はしないと宿代も払えなくなってくる。
着物に袖を通し、愛刀を佩く。
気合をいれ、頬をたたき部屋を後にする。
「ごちそーさん。また来るから、あの部屋はあけといて。」
「はい。お気をつけて。」
カフェを後にして、さてどうしたものかと。
まあ、森を歩いていれば、な。
途中で黒髪をまとめあげ、適当な屯所にたどり着く。
そこで、ルクロと名乗るエレゼンの隊員(鬼哭隊か?)から声が。
「そこの冒険者さん!お願いがあるんです!今はいないんですが、ケーシャ先輩のためにお願いを聞いて下さい!」
「はぁ?」
「じつは・・・・」
ちょっと独特な匂いがするチョコボ厩舎。その警備をしているエレゼンの青年ルクロが言うには。
「目を少し離しただけ、そう、手洗いに行っただけなんです。でも、その時に先輩が丁寧に扱っているチョコボの卵が誰かに持ち去られていたんです。
僕は手洗いに、先輩は休業だったので、もう、本当に先輩に合わす顔が無いんです。先輩は卵の捜索に出かけてしまいました。
しかし、女性一人というのも心もとない話しですし。お願いです僕はこんな事件があったので、ここから離れる事ができません。
先輩を探して、かつ卵を見つけられれば。お礼はちゃんとします。」
「阿呆が。」黒髪の女性は言葉でぶった切る。
ま、しょうがないやね。
胸元の大きく開いた着流しを翻し「しょうがないね。」とだけ。
大まかな方角だけ聞いて、そっちに駆けて行く。
すると。
「はぁ、追い詰めたぜ?このチビ介。それにお嬢さんよお!」
顔に傷だか、刺青だか。派手な顔の男が一人。
そして、森の妖精と呼ばれる白いふわふわしたもの。そして、短い髪の女性。
「あー、だっるー。」
この台詞には皆が意識を向ける。
刺青男の後ろには、数人の取り巻き。こいつらも。
「あなた!危ないわ!私はなんとかするから、あなたはお逃げなさい!」
鬼哭隊なのだろう、槍を構えた女性。まだ若い。多分自分より少し上くらいか。
「そうクポ。なんとかするクポ。」と白い精霊。
よく見ると、精霊の浮かんでいる下に丁寧にくるまれた卵が見える。
「なんだ?このアマ。」
取り巻きが近寄る。背には弓が。
「はぁ?」と女性は小首を傾げる。その仕草だけなら十分魅力的だろう。視線を除けば。
ちん。
音がした。
男は何の音かわからず、周りを見る。そして、自分の両手首が先が無いのに気がついて、絶叫する。「ぎゃああああああああ!!!お、俺の手!!!!!!」
「ふん。不触(触らず)」
完全に相手にしてしまう。
「て、てめえ!」盗賊団と思しき連中が色めき立つ。
「あ、あなた!」とケーシャといったか?女性もあんまりのことに動けない。
「不可(あたわず)」
襲い来る盗賊に、黒髪の女性は。
一瞬で右わき腹から左肩まで、逆袈裟切り。はらわたを撒き散らし賊が倒れる。
「ひっ!」あまりの惨劇に、「そんな・・」と女性が口元を抑える。
「不答(こたえず)」
切り継いだ後、鞘に入れたらさらに抜刀。
盗賊の首筋から赤い飛沫が噴出す。一瞬の出来事。
「おいこら!やってくれんじゃねえかっ!俺はジャンレミってもんだ、そこそこ名がとおってるんだがなぁ!
イシュガルドって知ってるかよ?今じゃ、もう無茶苦茶だ。その再興のためにやってるんだよお!かつてチョコボ生産で一番だったんだ!」
「バカをおっしゃい!」鬼哭隊の女性。
「あなたのしていることは、ただの盗賊行為だわ!それに、チョコボの卵だけじゃないでしょう?色んな盗品があるはずよ!ヘタすれば、私だって商品にするつもりだったんじゃないの!?」
「お嬢さん、卵だけじゃあ俺達は育てる金がたらねえ。だからしょうがねえんだよ。まあ、確かにお嬢さんを売れば十分な資金は出来る。まあ、俺達が遊んでからな。」
「この!下衆!」女性は激昂して。
「不言(いわず)」黒髪の侍は。
鞘から刀を抜き放つ。
「ほお。」と盗賊が短剣を構える。
「さっきから、おもしれえ技だと思ったが。まだなんかあるのかい?お嬢ちゃん?」
「私の名は、黒雪。冥土に落ちる時、暇つぶしに思い出すでもするがいい。外道。」
「あんだと!」
「壱之太刀から十之太刀までくらうがいいっ!5秒で死ね。」
「その・・・・・。」言葉に詰まる彼女ケーシャ。
「やりすぎクポ・・・。」白い妖精。
「返り血、ついてた?」黒髪をさらりと流した黒雪。
「いや、その。ありがとうございました。」
「ありがとうクポ。」
「お代だけもらえれば問題ない。」
背後にはバラバラに切り刻まれた盗賊が。
完全なオーバーキル。
報酬を受け取り。「では。」と去っていく。
「私達は、あなた達にいっつも見守られていたんだね。」
「あらためて言われると、照れるクポよ。」
「思えば5年前の大戦のときだって。」
「みんなで護るのが当然クポ。」
「ありがとう。」抱きしめる。
「こ、困るクポ。」
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侍か。
いい読み物だったぞ。
Yoshie Sakurai (Excalibur) 2013年10月07日 09:48
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>ヨシエさん、かな?いらっしゃいませv
ありがとうございますw
いちおー、モデルにしている子はいるんですw
あと、コレはメインクエかな?
そして、11での侍、エルヴァーンの女侍が某イベントでまさしく壱から十の太刀を振るうシーンを思い出してw
あ、このモデルになった子が「侍」好きだったので、こうなってますw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年10月07日 23:59