689セブンス。黒衣。

深緑の街、グリダニア。
この街は精霊に愛されて、それゆえか。
幻術師のギルドもある。
その中に。
一人の男が。
「ふん、退屈な話しだな。」
年齢を思わせない男は、受けたクエストを。
メモと地図を受け取り、独り言を。
それを聞きとがめた導師の一人が「おい、お前。無礼にも程があるだろう?名前は?」
黒衣の男は。
「僕、ですか?」
「他に誰が居る!」と激昂する導師。
「マヤ、ですが?」男は慇懃に礼を。
「では、先ほどの無礼はどういうつもりだ?」
「その前に、ご自身もお名乗りになられては?」
「む・・。レオン、という。」エレゼンのフォレスターはミッドランダーに対して何か思う事があるのか、苦々しく。
その返答に応えて、「どうも。レオン導師。」と同時に術式を展開、構成を見せる。
「ば、バカ者!この場で!」と焦る導師。
「ふふ。」と微笑と同時に構成が霧散する。
「お、お前・・。」
展開された術式は「聖術(ホーリー)」幻術でも最上位にあたる術式。
「大変失礼を。それでは僕はクエストをしてきます。」
黒衣を翻して去っていく。
「なんて野郎だ・・・あれなら導師クラス・・・いや、先ほどの暴言も・・・」
あれほどの構成をほとんど一瞬で編みこむなど。
自分でもできなくは無いが、やはり数秒はかかる。
「無茶なヤツがいやがる・・・。」
導師は他に言葉が思い浮かばない。



「ん?」
グリダニアに、いや、黒衣森にあるハーストミルと呼ばれるキャンプ。
そこに居るであろう、依頼者に声をかける、というのが今回の依頼ではある。
ただ、依頼者とはエメリア、というエレゼンの女性らしく(好みではなければ破棄するつもりだ)が、見た目は悪くない。
黒髪に、緑の瞳。控えめに見ても美人、と呼べるだろう。
ただ。
先客が居たのは想定外だったのだが。
黒衣の男は、キャンプの入り口付近で話しこんでいる二人の冒険者をどうしたものか、と考え。
「失礼。お嬢様方。僕の名はマヤ、といいます。立て込んでいる中、こちらの女性の依頼を受けまして。そちらをお伺いしたいのですが、席を外していただけませんか?」

「はぁ?ああ、うちはエレディタ。こっちはミーランな。アンタ、すこしは遠慮せえや?」
黒髪の女性はぶっきらぼうに、だが、名乗られた以上は名乗り返す程度の作法は心得ているようで。
「おや?失礼を承知でお声を。」黒衣の男は。
「あの、その・・・。」オレンジ色の髪の女性がおどおどと横から。
「こちらの女性がお困り、との依頼を受けましてね。」
「ああ!そうなんです!」と、件の女性。
「え?」とは、ミーラン。
実は今夜の宿は?という話題から、ここの名物だのなんだのと、話題が弾んでいたのだが。
実は依頼しなければならないほどの事件を抱えているとは思いも付かなくって。
「なんや?ヘンな目に遭うてるんか?」とは、相棒。
そこに。
「それを解決すべく、僕が来たのですが。」と黒衣の男。
年齢を感じさせない顔つきに、黒いローブ、そして帽子。
絵本に出てくる魔女のような装束だ。
とんがった帽子からは黒髪があふれている。
整った顔立ちは声色が無ければ女性、といっても通じるかもしれない。
ただ、まとった空気が異常すぎる。
エレディタは緊張しながら問いを続ける。
「マヤ、さんやっけ?アンタ、どんな依頼や?」
「何、そこの女性が不審物を送りつけられ、迷惑されていると。」
「あ、はい。そうなんです。」とエレゼンの女性。
ぽつぽつと語りだす。
聞いてしまった以上は、これは自分達も、とミーランが相棒に耳打ちし、当然や。と返される。
内容はこうだ。
いつの間にか、自分の家の(アパルトマンだが)の宅配に、宝飾品だの、衣類だの、何かと入っている。
頼んだ覚えも無い物なので、管理人に聞いても知らない、隣と間違えたのでは?と同じく宿を借りている住人に聞いても知らない、という。
どうしようもなく、冒険者に依頼をして、噂を集めてもらったところ、盗賊の一人の名が出てきて。
名を「アイルバート」というらしい盗賊が盗んだ品と、送られてきた品が妙に一致している。
これでは自分が窃盗をした、と疑われるのも無理も無い。なので、返すわけにもいかず部屋に置いてはあるのだが、どうにも。
困り果てて、すこし値段が張るが、冒険者に依頼を、と瞑想窟に相談に。
「なるほどね。まあ、僕がなんとかするから、安心してくれたまへ。」と、黒衣の男。
「あ!話しを聞いた以上、わたしたちも!」ミーランは素直な。
「せやなあ。(ミー、返り討ちやな。)」
「あ、はい!ありがとうございます!そして・・・その。」
一通の書簡。
手渡されて、男は。
「ふむ。」
と書簡を二人の女性に。
「南東の木立にて待っている。いつでもいい。」
と書かれていた。
「コレはこわいわね。」「せやな。」
「いい度胸じゃないか。僕は好きだね。」
「「えー!」」
「まあ、まずは彼に会いに行こう。」
「うん、じゃあ、エメリアさん、ちょっくら仕事してくるね。」
「すぐ済むわ、このにーちゃん、只者やなさそうやし。」
「そうかな?過大評価は好きじゃないな。」
「よういうわ。」
「では、お気をつけて。」依頼者の女性は頭を下げ。


「にーちゃん、アンタ、マジで只者ちゃうやろ?」
森の中。
「エリっ!」
「ミー、コイツはあんな賊とはちゃうで。殺気がハンパない。」
「そうかな?殺気は無くしてるハズなんだけどね。気が付くとはなかなかだね。」と笑い。
「ミー!逃げろ!コイツ、殺る気だ!」
自身は広がる術式構成の展開を見て、唖然としながらも地面を転がって逃げる。
「土」
一言。
その呪で土砂が吹き上がり、砲弾のように降り注ぐ。


トレントに。

「な?」エレディタは意味が分らず。
「僕が女性に手をあげるわけがないよ。」と。涼やかな。
(さっきの構成、明らかにミーを狙ってたハズや。まさか、一瞬で的を変えたやて?どんだけの腕前や、コイツ!)
「な、なに?」と、ミーランは。
「コイツ、よーわからん。けど、言うてるコトがほんまやったら、あの賊は悲惨な事になるやろな。」
「そうだね。女性の敵は僕の敵、だから。」
「言うやんか、色男。」
「よく言われる。」帽子の鍔を下げて表情を見せないように、ではなく、上げて薄笑いを魅せつける。
「ほう。」


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ゲーム内クエにそったストーリーって久しぶりだなぁ。
マユリさんの初期の小説は結構ゲームよりだったよね。
Marth Lowell (Durandal) 2013年09月05日 11:49

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>マルスCEO、そーですねw
やっぱ、初期はクエがメインのネタになって、そこから話を膨らませていく、ってのが、あたしのやり方だしw
実は「風見鶏Ls」だって、グリダニアの「どんぐり遊園」から始まっているのですよwこの街、公園あるんだっ!て。このクエはもう一話、つなげます。
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年09月05日 12:28

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