光は。
闇を払う。
その日も闇を払う光が世界に満ち溢れた。
「綺麗・・・・。」リムサ・ロミンサに住む女の子は流星のような光の群れに。
「すっごー!」ウルダハに住む少女はあまりの光景に。
「流星か?」「そうね。」グリダニアのカップルは甘い蜜月の最中。
その感想が。
間違いだったと気づかされる。
轟音と爆炎。
幾条もの光の帯は。
龍の王の雄叫びと共に各地に降り注ぎ。
その猛威を。
「メガフレア(超轟炎)、っていうのかしら・・。」
水晶の魔力と呼ばれるララフェルの女性は、ただただ見つめるだけ。
「まなん!今のどうおもう?」
親友のララフェルから。
「マズいわね。それと・・あ!」
上空に展開した構成。その魔紋は標的を明らかにこちらにしている。
「えらっち!逃げろお!」
自分も同じく逃げる算段をするが、移動術式が間に合うかはかなり微妙だ。
なにせ時間がかかる。
「お前らもテレポでもなんでもいい!逃げろ!くるぞ!」部隊に指示を。
だが、間に合わない事はわかっている。
しかし、可能な限り・・・・。
その時。
蒼い光が。
ついで爆音。鼓膜が破れるかの勢いで降り注ぐ。
自分で使っておいてなんだが、フレアを食らうとは。
普通のフレアは術式が完成すれば、あとは転移して標的を焼き払う。
しかし、このフレアは光の軌道を描いて。
光の塊が炸裂する。
そして効果、というか、惨状は筆舌に尽くしがたいレベルだ。
だが。
蒼い光のドームがそこかしこに。
ただ、全て、とはいかず、地面に大穴どころか、という破壊を。
一瞬にして消滅してしまった部隊員達に黙祷を捧げながら、この惨状を蒼い光が防いでくれているのを感謝する。
「もしかして、あの?」おじいちゃん、くらいにしか考えていなかった異国の術士。
上空から降り落ちてきた巨大な剣。
黒く、そして幾何学的な青い光が。
それは剣ではなく、鍵だったのだろうか?
鍵が外された炎の球が開放され、かの龍の王が現れたのなら。
もう一度、鍵を。
「ルイゾワ師。私もなにか・・。」カヌ・エ・センナが声をあげる。
だが。
「いや、魔力の供給だけでよい。十二神の御力を借りる。」
残る二人の当主も助力を、としたいがいかんせん、術式にはうとい。
ただ体内の魔力が消えていくのを感じ、それだけで力になっていると。そう思う事しか。
「ち。」「くそう。」
やがて。
鍵が。
かつて小月を封じていた巨大な一本の鍵。剣にも見えるそれは。
十二本の青い剣として、凶龍を封じるべく突き刺さるように。
そして結界が作り出される。
術式構成が素人でもわかるレベルで展開され。
青白い球体となり、龍の王を中心に固まっていく。
そして、十二神の紋様が一斉に現れ。
文様は立ち上がり、各々の剣の鍵に力を注いでゆく。
「たのむ!」老師はひたすらに術式を。
そのあまりにも膨大な構成に、魔力を注いでいく。
そうして龍の王が結界術式に取り込まれようとした時。
咆哮と共に、龍の王は結界を破壊した。
「なんということだ・・・・・。」ルイゾワ師は・・もう精根尽き果て・・・いや。
まだまだできることはある。
目に見える範囲でもいい。移動術式を。
自身はこのままあの龍を抑えなければ。
兵士、冒険者、その他を転移させていく。
「ふふ・・。」
「ルイゾワ師!」角尊(つのみこと)と呼ばれる女性が倒れ掛かる老師を支え。
「カヌ・エ、このままでは!」提督が叫ぶ。
「どうするかな?」と偉丈夫が応える。
そして。
3人は転移させられてしまった。
「老兵は死なず。ただ消え行くのみ、か。いい事をいう作家もいるものだ。」
残された力を最後まで使い切る。