てくてくと、森の国からの出口ゲートに向かうローブの少女。
ふわふわした金髪歩くたびにゆるく上下に揺れる。
腰にワンドを挿し、一応のためにダガーもカバンに入れておく。
「ううん、どこがいいかしら?」とポケットからギルドから受け取ったカードを取り出し、眺めながら。
そんなだから、冒険から帰ってきた人達とすれ違う度にぶつかりそうになり、すみません、ごめんなさい、と言うハメに。
もっとも、向うの方はそれほど気にせずスルリとかわしたり、避けてコケそうな彼女を助けてあげたりと。
剣士としてはそれなりの腕前なハズなのだが、どうにも注意が散漫で、兄からは「いつもなにかやらかす。」と評されている。
「こんなんで大丈夫かしら、わたし・・・。」と少し心配になってきたところで約束していたキャンプ・ベントブランチまでやってきた。
柵の向こう、大きな蒼い石が宙に浮いてクルクルと周っている。
何時見ても不思議なものだと感心していたら、不意に後ろから肩を叩かれた。
「ひゃんっ!」
「おっと、なんて声だすんだ?」男性の声。
振り返ればこげ茶色の髪を少し伸ばした男性。落ち着きもあるのだが、どこかにやけ顔がとても似合う。少し不思議な青年だ。
「え?あ。そのごめんなさい。突然で・・。もしかしてわたし、遅刻しちゃいましたか?」そわそわ・・。
「いや、大丈夫だよ。マリー。」
「ファーネさんって、エーテライトって使ったことありましたっけ?」
「ないんだな、これが。なので先に来てその辺の方に使い方を聞いて、さっきこのキャンプとは契約できたんだ。」
「そうでしたか・・・ふぅ、焦った・・。」
「ああ、それとファーネ、でいいよ。さん、とかつけなくて。」
「あ、はい。ファーネさん。」
にこにこしながら、「じゃあどこかいい場所っていうのを紹介してくれるかな?」
「そうですね・・。ちょっと剣技、みせてもらっていいですか?」
「ああ。」そっと剣を抜く。型を舞う。ついで、誰もいないのを確認して、本気の斬撃を空うち。「こんなところかな。」
「そうですね、・・・・・・。少し遠出してモスまで行っちゃいましょう。」
「モス?」
「はい。キャンプ・エメラルドモス。通称モス、です。」
「遠いのかい?どれくらいかかりそう?」
「そこそこ遠いんですけどね。その。手を貸してください。」少し頬が赤い。
「ああ。」手を握る。
「では、飛びます。テレポ!キャンプ・エメラルドモス!」
「おお!」淡い、蒼い光に包まれ始め、青年は声を上げる。
チュンチュン、と小鳥さえずる森の中にあるキャンプ。
「ここは?」と光から抜け出した青年が傍らの少女に聞く。
「モス、です。あっ。」未だに手を握っていたのに気がつき、慌てて放す。
青年は特に気にした風でもなかったようだが。
「とりあえず、エーテライトに触っておいてくださいね。そうすれば今みたいに移動術式でいつでもお手軽にこれますし。」
「了解。」手をかざしに行く。そしてその横でいろんなカードから適当に・・。
「コレでいいかなあ。」魔物退治。カードの指定する魔物を駆逐していくものだ。
「なんでもいいさ。任せるよ。俺は冒険に関しては全くの素人だし。」
「えー、でもさっきの剣の腕前だとそこそこイケるはず、ですし。」
「たいした実戦なんて。ほとんど稽古だよ。呪術に関しては家庭教師まで付けられて、徹底的に叩き込まれたけどね。
導師クラス、なんて言ったけど、まだそこまではきわめていないから。ちょっとした見栄を張っただけさ。」と笑う。
大富豪の元当主の笑いは屈託が無い。
「わたしも剣ならそれなりなんだけど、幻術、呪術とかが言うほど伸びてないのよね・・。」しょんぼり。
「まあまあ。そのための修行なんだ。気を落とさずに明るく行こうじゃないか。」
「はあい。」
一戦目。4匹の魔物を倒してくれ、とのことだったが。最後の一匹が逃げ出し、さらに仲間まで呼び出すという事に。
「護りの空よ!」防御術式。蒼い光が二人を覆う。
「恵みの岩よ!」ちりっとした光とともに一瞬だけ土の壁の幻影が見える。
「サンキュー!マリー!」「後は回復くらいしかサポートできないかも!」
「十分!コツはつかんできた。後は馴れだな!」ヂッガと呼ばれる冗談みたいな大きな蟲。それがあと3体。
手前の一匹。コイツは手傷を負っている。まず数を減らさねば。後ろのマリーが危ない。盾を前に踏み込み、ついで体をひねり下から切り上げる。
「まず一匹!」
横手から来た蟲からの攻撃はいきなり土や小石が集まり盾になってくれる。
「感謝、だな。」剣を振るう。
もう一匹が後ろのマリーの方に飛ぼうとして「コッチだろっ!」と怒鳴る。音に反応してファーネに向きを変える。「いい子だ。」にやっ。
その時、後ろから「きゃあっ!」と悲鳴。「どうした!?」振り返ると野生のモンスターが彼女に気づき、攻撃をしかけようとしている。
「ち。」蟲の相手は放っておき、彼女に近づくと、小蟲の集団が。
「大丈夫か?」剣で払うが、さすがに集団でしかも小さい。効果は薄い。
術を使うか・・。
「チカラの風!」そのとき彼女が呪を先に放った。「ごめん!」
「ケガが無いならいい事だ。」
横なぎの風に追い払われた蟲達はもういない。
「そんなコトより、ケガしてる!癒しの手!」回復術式。
「恵みの岩よ!」もう一度。
「ありがと!しかし、さすがに蟲だらけだな・・。」うんざりと。
キャンプに一度戻り、少し遅めの昼食。
「コレはマリーが作ったの?」
「ううん、カフェで。」
「そうかあ、今度は手作りで頼むよ。」
「ええええ!そんな、まだムリですよお!義姉さんに教えてもらってるところです。」
「姉さん?お兄さんは知ってるけど。」
「あ、その兄の嫁です。年下なんですけどね。えへへ。」
「マリーは?リーダーのベルさんあたりかな?」
「残念ながら。それに・・ベルはルーが想いを寄せてるから。後から来てそれはないかなー、なんて。そういうファーネさんは?」
「また「さん」づけだな。」「あ!」「いいよ。俺は婚約者がね。」
「あ、なるほど。そうですよね。実家が・・。」
「ああ。まあ政略結婚みたいなものだけどな・・。当主ヤメたら一方的に婚約破棄されちゃってな。
ま、その程度の女だったし、別段フラれたからと言ってたいした痛痒もないさ。なので今はフリーさ。」
「そう・・。なんか聞いちゃってごめんなさい。」うつむく。
「気にしないでくれ。マリーの方が何倍も魅力的だね。」
ぼんっ!っと音がしそうな勢いで少女の顔が真っ赤ッかになる。
「からかわないでください。」なんとか声にする。
「そうかな?まあ、今はコッチに専念しよう。」剣を見る。
「ハイ・・・。」
「じゃあ、行くか。」
「はい!」
二人は森に駆け出していく。
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やめてあげて!!カンスト層のストスキはモスのMOBには絶望レベルよ!!
Bob Dalus (Hyperion) 2013年02月20日 15:35
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マリーは
「で、技術だと・・。剣術がようやく40に届きました。それ以外は・・。ぼちぼち・・。格闘は最近LSのグリュックさんとか、マユ義姉さんとかに教わってもうすぐ30くらい。
槍もギルドに友達がいるからおなじくらいかな。あとは、釣りとか、園芸とか。そのへんが30くらい、調理も20くらいなんで義姉さんに教えてもらわないと。」
との事なので幻術はカンスト層ではないと思います。
「書き物。自己紹介?2」より抜粋
Marth Lowell (Durandal) 2013年02月20日 17:06
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>ぼびー。www
マルスさんの言うとおり~w
ちゃんと過去作見ながら伏線とか設定の間違いがないかかいておりますw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年02月20日 18:34
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>マルスさん、フォローありがとw
一応30未満、くらいの設定です。
ファーネは剣が30、呪術が48、その他は未定ですね。まあそれなりに嗜みってことで稽古くらいはしてたでしょう。この世代でカンスト持ってるのはフネラーレくらいかしら。
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年02月20日 18:39