リムサ・ロミンサにある豪邸の一室。
一人のミコッテの男性がパールで伝心をしている。
そろそろ夜もふけてこようかという時間。
月明かりが窓から見え始める。
灯りの燈されていないこの執務室に、仄かな月明かりに影を抜き取られたかのように立つミコッテ。
彼のパールには、余分な装飾などされていない。デスクに転がるパール達はどれも一様に同じマークが入っている。
どれがどれだか解らないが、それは余人のみで彼は全てを把握している。
箱に収められた最後から二つ目のパールを抜き出し、「悪運」に連絡をつける。
「うん。そうだベッキィ。呪眼の回収を頼む。Dead or Alive(生死を問わず)でかまわない。
御当主が存命なのは少しやっかいだが。うん。そうか。だが、彼も「銃」を使えて満足できたんじゃないかな。
ああ。そうだ。売った甲斐もあるってことだね。ふふ。え?楽しんでるかって?ははは、もちろんだよ。
まずは明日の調印で彼は間違いなく「失策」を指摘され、承認されないだろう。
晴れてご子息が当主となる。あの兄弟はなんだかんだでよくできてる。グランツよりはね。
ああ、そうそう。ファーネ君でもヴァッペン君でもかまわないよ。おそらくヴァッペン君になるだろうしね。
彼はいい友達になれそうだよ。それと、マダム・グリュツィーニエ・フリューゲルにも事の顛末を説明しておいてくれ。
脱出経路はそれで確保できる。そして報酬の方は、そうだな。明後日、くらいにでもと。
それと君への報酬も考えておくよ。何がいいかな?」
「かしこまりました。ご主人様。ありがたいお言葉、頂戴いたしました。」
漆黒の給仕娘は、血に塗れた黒髪の少女を担ぎ上げ、部屋を出る。
「・・・・。」
黒髪の少女が何か言ったようだが、そのまま気を失ったらしい。
「フネラーレ・・。正直、生きていてくれて嬉しいです。」
くすり、と笑う。
この後、館の正妻に会い、報告すれば堂々と帰れる。それで今回の「仕事」は終わりだ。
伝心していたパールを箱に放りいれ、他のパールも入れていく。
ミコッテの青年、「黒猫」こと、クォ・シュヴァルツはデスクに腰をかけながらパールを放り込む作業を楽しんでいる。
「さて、次回は・・。どうしようかなあ。」尻尾を振りながら、暗闇から月が射す部屋で独りごちる。
リムサ・ロミンサから半日ほど歩いた先にある灯台を目指し、少女二人とその夫たちは牧歌的な風景を楽しみながら賑やかに。
「ここはね、あたしが最初?にラノシアに来たときにあのヒゲ親父からというか、ウルスリさんから受けたミッションで来たんだよね。」
ブルーグレイの髪を夕風に吹かれながら、華やかな笑顔。
「へぇ。」「まあ、近い、といえば近いね。」「あたいははじめて見る景色だけで感動にゃ。」
三者それぞれ。
「でね、戻ったらウルスリさんにめっちゃ遅い、って叱られて。」
あははは!と笑いが起こる。
「ヒゲにもいわれたんだよ!」さらに笑いが。
でもね。
「その「遅い」理由がこの先にはあるのさ。」
小振りな胸を精一杯張り、自慢げに語る。「こっち。」
少女が指差した先には、海岸の絶壁の向うにそびえ立つ、リムサ・ロミンサの尖塔。
白い建物が夕陽に当てられてオレンジに輝いて見える。
これにはさすがの3人も感嘆のあまり声も無い。
「でも、マユ。まさかコレだけ見て遅刻した、ってことはないだろうね?」
夫のウルラからのツッコミに、「マユちゃんならありうるにゃ。」「うんうん。」と
「そ、その前にモコモコした羊さんたちと遊んでたんだもん!」
「さらに駄目な点を自白したね・・。」「解る気がするにゃ・・。」「・・・。」
「しかああしっ!君たち!さらに驚愕するがいい!明日の朝イチで食べれるであろう、至高の朝食にっ!」
「まあ、そういうことにしておこうか。で?野宿はあそこの灯台かな?」
「うん。あのおじいさん、まだ居ればいいんだけど。」
「さすがの無計画ぶりにゃ。」オレンジの髪のミコッテの少女は夫の手を握りながら嘆息する。
「マユちゃん、もう少し先にいけばキャンプがあるんじゃ?」妻の手を握り返し、悪友?に告げる。
「まあ、ほら。なんていうの?あたしのこの冒険の軌跡ですよ?そのツアーでもあるんだから!」少女は頬をふくらまし、反論。
「はは、まあいいじゃないか。これはこれで楽しめそうだよ。」妻の反論に賛成票のウルラ。
やがて夜の帳が降り始め。
黄昏の中、灯台にたどりつけば、例の老人がいた。
「おお、おじょうちゃん、また来たのかい。それも大勢だ。いいよ。泊まっておいき。毛布は無いが、それは勘弁だよ。」
「ええ、もちろん。」
月夜の中。
「ね。ウルラ。」隣を見る。二人づつ寄り添うように寝ながら。
「母さん、どこに行ったか本当に知らないの?」
「ああ。」と夫は静かに。
「朝方、寝台抜け出してどっかにいってたくせに?」
バレていたか・・。カンはするどいなあ。「潮騒で目が覚めて。宿の窓の外を見ていたらチンピラさん達がね。うるさいんでご退場いただいたのさ。」
「うそつき。」唇をとがらせる。
「心配しなくていいよ。君のお母さん、もうおれにとっても義母さんだけど。きっと素敵なことを思いついたんだろ。
おれ達はその結果だけ知ってればいいさ。素敵な魔女の活躍を。」
「そっか・・・。そうよね。」
少し離れた隣では、シャンがネルケの胸に頭をあずけ丸くなって寝ている。
聞かれてなければいいけど・・。
安心したのか、頭を夫の肩に預け、眼を閉じる・・・・
そして、朝日は昇る。
この日、エールポートにたどり着いた4人は、マユいわく「毎日3食はイケる。」カニ料理にハマってしまった。
「う、うますぎにゃああ!」「これは確かにウマイな。マユ、でかした。」「でも、ボリュームありすぎですよお!」
「ネルケ!文句いわないの!ここでしか食べれないんだからっ!」「マユちゃん、コレ一人で食べたのかにゃ?」「もちろん!」「・・・・。」
「・・・う・ん・・」
白い天井が見える。
目が開く。だが、閉じたい誘惑。
でも。
体を起こそうとし、激痛に身をよじる。
「ぐううっ!」
「今は安静にしていてください。フネラーレ。」エレゼンの女性の声。
「なンだ?どうなッタ?僕は・・・ぐふ・・・なンで生きていル?」
「おそらく魔女が蘇生術式を成功させたのでしょう。ワタクシの意見ですが、あなたは致命傷を負っていました。
それを癒した、というところでしょうか。普通ではありえない事です。さすがは魔女ですね。賞賛いたします。」
「チ・・・。」寝台に体を横たえながら。
貸し、とかナントカ言ってやガッタな・・。みんなに謝らないとナ。また生き延びちゃったヨ。僕。
「お嬢!生きてください。」その言葉が脳裏に。
「ちっ!」
やってられねェ・・。でも。
その日、調印は行われ、フリューゲル家当主として、ファーネが選ばれた。弟のヴァッペンも参加し、その事に心からの賛辞を。
そして、新当主ファーネの最初の訓示。
「この俺。ファーネ・フリューゲルは、今、この時点で当主から降りる。
そして後任として弟のヴァッペン・フリューゲルを当主とする。異議ある者は申し立てよ。
いないか?なら、そういうことだ。よろしくなヴァッペン。俺は少し自由に生きたくなった。
お前もこの役どころはまんざらでもないだろう?」
こげ茶色の髪の青年は礼服を放り出し、唖然、呆然とする会場を後にした。
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え・・・美食屋に転職したの?
Bob Dalus (Hyperion) 2013年02月12日 13:40
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>ぼびー。・・・
誰が?wwwwww
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年02月12日 13:53