465書き物。それから・・・・・・終局。そして。

「リッラ!!!くそっ、こんなつまらない死に方がよかったのかっ!?」

グリダニア郊外の館での一室。

壁に血の跡を残し、壊れた人形のような少女に声をかける。
深紅の液体をこぼれ落としながら、命の灯を今にも消そうとしている。

「あたしは死体を増やさないって言っただろう!!」
だが。
回復術式、蘇生術式もほとんど効果が無い。
ゆるやかに少女は死に向かいつつある。そして、それは・・。自分の宣言に反する。

「空の声響け!あたしはここにいるっ!」
交霊術式。

黒衣森の一角にて身につけた、というか知ってしまった術式構成。
単純な、だけど幾重にも積み重なる構成に魔力を吹き込む。
削られていく生命がわかる。だけど。ここで魔力を枯渇させるわけにはいかない。
ポーチから薬瓶を取り出し、フタを開けるのももどかしい勢いで液体を飲み下す。


ほんのりと。明るい赤色のローブのミコッテが現れる。その姿は透けていて、今生のものではありえない。
(どうやらまた無茶をしているようだな?レティ。)
「お師さんっ!お願いです!この子を助けたい!手を貸してくれませんか?」
(レティシア。逝く命はとどめるべきではないよ。森に還してやるべきだ。)
それでも。
グレイの髪を振り乱しながら、魔女と呼ばれる女性は最後の一糸にしがみつく。
「お師さんっ!」
(レティ。もしそれが叶うとして、お前は何を代償にするのだ?)
「寿命、でしょうか・・・。」
(ばかもの。そんな事を私が望むとでも思ったか。)
(お姉ちゃんカタすぎー。)青いローブのミコッテが隣に。
(ヴィントっ!)
そして、一人の婦人。
(レティ。)
「かあさん!」
(あなたが助けたい人がいるのね。母さんに任せておきなさい。ね、ヴィント。お願い。)
(はあい、アナスタシア。あ、でもレティちゃん、私たちは魔力を出せないから、術式構成を編んであげる。
そこに魔力を通してね。ちょっと高位の術式になるから・・)
(ヴィント!それに貴女までっ!・・・仕方ない。もう猶予もなさそうだ。私も構成を手伝おう。
だが、レティ。しくじるなよ?この構成は本来無いモノだ。ゆえに失敗したときのダメージは相当だ。だからやめろと言ったのだがな。)
(俺の存在でダメージを減らせばよいんじゃな。)
(ご老人!)
「師匠っ!」銀髪のララフェルを見て。
「わかりました。お願いします。」
壁にもたれかかるように座り込んだ少女にはまだかすかに息がある。急がなければ。
術者二人が構成を編み上げていく。

ふぁさり、と婦人が肩を抱くように。「かあさん・・・。」
構成が出来上がる。緻密な。そして複雑な。蘇生術式を数倍上回る構成。アレイズ。
「ありがとうございます!」
魔力を流し込む。
呪を紡ぐ。
「我は語る!命の今ここにあらんとし!果て無き道標の印とする!!」

魔力が注がれ、呪は形を作り、そして・・。
金色の、そして蒼い、どちらとも取れる光が今、まさに死に瀕した少女に。

「ぶ。ごほっ・・。」
少女の口から血の塊りが零れ落ちる。
だが。
確かに生きている。

「魔女・・?」少女は薄く眼をあけ・・。
「ああ、なんとでも呼ぶがいい。お前はウルラの、マユの夫の命を救ってくれたんだ。これでチャラだな。貸しは消したぞ?」抱きしめる。
「そう・・ごふっ、がふっ!」
力なく抱きしめられたままの少女は、そのまま眼を閉じる。
「おい?」
「だ、大丈夫・・がふっ」血の塊りを吐き出す。

(では、さらばだ。我がバカ弟子。次、こんな無茶をするようでは破門にするからな。)
(じゃあね~。お姉ちゃん、あんな事言ってるケド。見捨てるようなら最初から来ないって。)
(でわな~じゃな。思ったより削られなくて俺もまだまだ、なのよな~。)
「みなさん!感謝します!」頭を垂れる。

(レティ。いい子に育ってくれて母さん、鼻が高いわ・・・・自慢の娘よ・・・・)
「ありがと。」
だが、彼女だけはうっすらと存在を消していく・・・
「え?」
(魔力の底上げに力を使っちゃった・・・・素人がやっちゃ駄目だよね・・・でも最後に・・・力になれてよかった。
    もう、お話はできないけれど・・・ずっと貴女を応援している・・・わ・・・・・レティ・・・わたしの・・・愛しい・・子。」
「かあさんっ!!」
しかしもはや虚空でしかない・・。

「おい、フネラーレ?」
「大丈夫・・ダ・・って・・。」
血に塗れた少女を連れてどうやって帰ったものだろうか?

バン。かしゃん。パリン。

窓が破られる音。

「お前・・・。」
魔女レティシアが窓に振り返ると、そこに居たのは。
「天魔の魔女、いえ、「目」ですか。そこに居る少女をお渡しください。」
紺色の給仕服の漆黒のエレゼンの女性はオレンジ色の瞳を眼鏡の奥に隠し、告げてくる。
「それは構わないんだけどさ。一つ聞いてもいい?」
「どうぞ。」
「結局、コレは誰が描いたシナリオなんだ?」
「申し訳ございません。ワタクシには解りかねます。」
「クォ、か。」苦々しい笑み。
「ご主人様を!」拳を振りかざし、魔女に突進する。
直線的な拳をかわし、足をはらう。
「アっ!」
滑りやすい血溜まりと足払いで転ばされた給仕娘に、一瞥をくれると。
「あたしの相手には10年早い。出直せ。それと、この子。あたしが心血注いで治したんだ。
もし、このまま捨て置く、もしくは抹殺なんてことになったら。」
魔女の笑み。
「わかってるよな?」
「承知いたしました。レティシア様。」
姿勢を正し、お辞儀をする。

「んじゃ、オサラバするわ。」割れた窓から身を乗り出す。

そこに後ろからの突き。

さらりとかわす。そして
「悪くないわね。ただ後ろからは避けやすいから、魔物相手かチンピラ相手だけにしておきなさい。」

「天魔の魔女・・。」給仕姿の女性は、この不意打ちにも・・。
振り返り、呪眼の回収をしなければ。
「忙しい夜ですね・・・。」


----------コメント----------

妖怪?のララフェル師匠が高性能すぎる件w
Marth Lowell (Durandal) 2013年02月11日 08:54

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>マルスさんw
ええ、彼はまさしく妖怪ですwww
あの師匠にして、この弟子、というw
まあヴェテックト師がマトモすぎる件についてw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年02月11日 08:59

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カボチャの王様が、
カボチャとスカートめくりの秘儀を使って
アレイズとか、レイズ以上の事をするのかと思ってたので残念。
ザンネンw
Eraru Control (Hyperion) 2013年02月11日 09:24

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>えら-っち。えろっちて呼んじゃうぞw
カボチャ王はお昼寝してるからw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年02月11日 10:04

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バカな!、アレイズだと!?。
あれは神(運営)が封印したはずじゃ!?

3回読んで気がつきました。
Marth Lowell (Durandal) 2013年02月12日 17:28

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>マルスさん、3回も読んでくださってありがとうございますw
ヴェテックト師が「本来無いモノ」と言い、母、アナスタシアが存在をかけて成功させた術式。ということです。ヴィントの方は「やったるぜ!」の感じですがw
ララフェル師匠はバックアップにしか参加できてませんが、やはりオーバーしたみたいでダメージは幾分かあるみたいですね。
規格外の魔法を使うにはこの位のリスクは必要で、それをやっちゃう魔女に焦点をあてましたw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年02月13日 02:49

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ワシの頭の中の種を使ってスカート乱舞の術を使うと
種が新しい臓器にかわるんじゃよ~w
そうじゃ!どっかの学者にこのことを教えなければならんのじゃよ~w
Syakunage Ise (Hyperion) 2013年02月18日 18:14

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>おうさま、ご乱心めされたかw
どんな種ですかw11だと、頭に「芽」が生える青魔法がありまするw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年02月19日 12:23

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