ん。。
ふぁあ・・・
んんん・・・。
あれ・・
チュンチュン、と小鳥のさえずりと、ゆるやかな日差し。
そして・・。
隣でスースーと、寝息を立てている銀髪のミコッテの少女。
あ、そうだっけ。私、ルーの部屋で寝ちゃってたな。
そっと、彼女を起こさないようにシーツから出て服を取り出し身につける。
(後から聞いた話だが、バレバレだったようで・・。とっくに彼女は起きていて、逆に起こさないようにしていたんだとか・・。)
さてと、そろりそろりと足音を抑えながら部屋を出る。
寝台で横になっている少女に頭を下げるだけの軽い挨拶・・。
尻尾が動いたが・・まさか返事?て事はないだろう、多分。
借りている部屋を軽くノック。
返事は無い。カギは自分で持っているので開けてみる。
寝台ではなく、床で寝ている青年?を発見。
夕べはあんまり見れていなかったせいか、服自体は、というかその服のまま寝たようだ。
その服だが・・。豪華というか、高価というか。
パッと見た目だけでも値段が張るのがわかるけど・・。
問題は。
「もしもし?おはようございます。あの、わかります?」
仮に寝ているのではなく、・・だったりしたら、すごくやばい。
「あの?」
「・・・グーテンモルゲン、フロイライン。ああ、おはよう、だったかな。お嬢さん。」
グリダニア語?の後に共通語(コモン)で挨拶。
「はぁ。」と気のない返事・・というか、生存していてくれてありがとう。うん。納得いく結末。だといいけど・・。
「あの・・。」という青年の言葉を遮り、
「大丈夫?ですよね。良かった。ところでお名前は?何処にお住まいでしょう?ご家族は?パールはお持ちです?」
と矢継ぎ早に質門する。このくらいはいいだろう・・じゃないと、またルーに叱られちゃう。
青年は頭を振りながら、
「名前はって、いきなりの質門攻めだね、少し待ってくれるかな。名前はファーネ、家はグリダニア市街だよ。
家族は親と弟、親類が居る、パール?冒険者なのかな?君は。生憎、僕は持ち合わせていないね。」
「ええ、そう。」としか答えようが無いが・・。
「っと悪かったね、部屋に入れてくれて。ほとんど意識がなかったもんだからさ。少し飲みすぎたかな?はは」
と軽快に笑う。
うーん、運命の出会い、はたまた偶然、あっち?そっち?こっち?ってどっち?
どうなってんだ?
一度整理。
夕べ倒れこんでた男性を自分の借りてる部屋に放り込んだ。翌朝、くたばってないか確認しに来た。以上。
うん、運命でもなんでも無く、酔ったにーちゃんを部屋に入れた。そりゃルーも怒るわよね・・。しかしながら助け?た以上は面倒はみないと。
「あの、ここどこかわかります?」
「ああ、君の部屋だね。おそらく。」屈託の無い台詞。
「まあ、そうですけど。寝台を共に過ごしたワケじゃないので、ご安心を。」
「そうだろうね。だから床で寝たんだけど。」
「意識あったのね?」と問い詰めて・・。
「まあね、騙したようで悪かったよ。ちょっとワケありでね。
こんな僕を拾ってくれる冒険者を探していたんだ。どうだい?依頼として受けてくれないかな?」
「え?その・・私ひとりじゃ決められないの・・。」ベルに相談しなくっちゃ・・。
まずはルーかな、そろそろ起き出してるだろうし。彼女の部屋に行く前にもう一度確認しなきゃ。
「あの、ファーネさん?」名前の確認。
「うん?どうかした?誰かに相談ならもちろん待つよ。ただできるだけ早いほうがいいな。」
「あの、その。ワケあり、のワケって、今大まかに聞かせていただいても?」これは重要だ。ルーに叱られたポイントもここにある。
「・・・そうだね、家庭の事情、ってヤツかな。よくある話、だといいんだけど。
ちょっとばかり複雑でね。この先は依頼を受けてもらってからじゃないと話せないね。」
「うん・・、あ、ちょっと待ってね。パールから・・。」
(マリー?事情は聞いたけど。一度彼に会わせてもらおうかな。それから決めよう。)
(うん。まずルーに直接話すね。)
(聞いてますにゃ。)
(あ、おはよう、ルー。夕べは・・。)
(おはよ、マリー。気にしないでにゃ。)
(うん・・。)
(シケた話じゃなんともだ!俺もソッチに飛ぶぜ!)
(あ、うん。グリュック、おはよう。)(おう!)(おっす、グリュック。)(おはにゃー!)
「あ、ええと・・。」パールでのやり取りを不思議そうに見ている彼に「メンバーが揃いそうだから、下のカフェで待ってて。」
「や、そうしたいんだが。例の事情であまり顔の指す場所は避けたいんだ。
できればこの部屋を少し借りてもいいかな?もちろん依頼を受ける、
受けないに関わらず代金は前倒しで支払うよ。それでいいかな?」にっこりと笑う青年。
「まあ、それなら。」とうっかり?OK返事をしてしまった・・。
青年を部屋に残し、ルーの部屋に。
カギは開いていたので、そのままノックだけして入る。
「ルー?」
「うん、聞いてたにゃ。その人、すぐソコにいるんだよね?ベル達と合流するにしても、マリーの部屋かにゃ?」
「うん。人目は避けたい、みたい。あと、家庭の事情とか言ってたけど・・。」
と、少し弱腰に・・御家騒動とか?巻き込まれると確かに厄介な予感・・。
「間違いなく御家騒動にゃ。これは絡むと大変にゃ。今のうちに撤回しておくにゃ。深入りすれば火傷モノにゃっ!」
「あ、ええと。その・・。あの・・。」おっかなびっくり、ルーの顔を見る。
本気で勘弁して欲しい、と綺麗な顔に縦書きしてある。横書きでもいいけど。
「ベル、なんて言うかなあ・・。」
「ソレが心配なのにゃっ!ベルって、絶対この手の話は断らないにゃっ!」
そうだよね・・。いい人だもの・・・。ベル。
こうなれば・・。
私一人でも請け負う、か。
「今。」へ?「勝手に自分だけで解決しようと考えたにゃ?」と、目を真っ直ぐに向けてくる。
「ええ?」見透かされ、戸惑う・・
「やっぱりにゃ。ベルと似てるトコなのにゃ。お兄さんもそういう所があるんじゃないかにゃ?」銀髪の彼女はイタズラを成功させたような笑顔で。
「もう、決まりにゃ。作戦はあたしが立てるから、まずは内容を聞かないとにゃ。」
「ベルは・・?」
「さっき言ったとおり、にゃ。ベルなら受けちゃうにゃ。なので先回りして作戦を立てるのがあたしなのにゃ。」
「なるほど。」さすがのコンビネーション。舌を巻く思いで大方の方針を聞く。
「了解。なんとかしてみる。」うん。乗りかけた船を沈没させないように。
「とーぜんにゃっ!」と笑顔でハイタッチ。
さてと、まずはお話聞くところからね。