292書き物。少年の落しどころ。

グリダニア。森の香りかおる夜気。

その居住区の一軒。
そして、その一室。

時間はもうすぐ夜明け前だろうか?かすかに東の空が明るんでいる。

「おい?聞こえるか?ネルケ。」
金髪の少年はパールで今までのPTで一緒だった少年を呼び出すが・・。
「ふぇ?」
「まあ、いい。今朝、カフェで少しメシでも食おう。」
「・・ん。」

さて。
「師匠?」
「なんじゃのかの~?」
「今朝、朝飯でもどうですか?」
「めずらしいの~。どうしたのかなじゃな~?」
「いえ、鍛錬の前にいかがかなと。」
「それは、お前のオゴリなのじゃな~?」
「・・・。まあ、いいですよ。」

さて、仮眠だけでもしておくか。


明け方。身支度を整え。
ここに来るまでのローブではなく、久しぶりの鎧を用意する。
剣を二本あしらった盾に、青い魔剣と、業物の長剣。
城塞都市でもあったアラミゴ。武器や防具には事欠かない入手先があったとはいえ・・。
この品揃えはなかなかのものだろう。

一応、杖も用意しておく。

一まとめにすると、一旦部屋においておく。
ドアを開けると、家の主人のエレゼンが声をかける。
「長いのかな?」
「そうですね・・。たぶん。」
「家内や娘には挨拶は無しかい?」
「いえ、昼食には戻りますよ。」
「そうか。ではご馳走を用意しておこう。」
「やめてくださいよ・・。いつものがいいんです。」
「そうか。」
「では、少し出てきますね。」
「ああ、部屋は開けておくよ。俺の書斎がいつまでも占有されているのも、少し悔しいが。」
「言いますね。」
二人は笑いあう。


朝方のカフェ。やや遅くなったか?と思いながらも、まだ朝日は木立からは見えていない。

「いらっしゃー・・い・・ませ。」と黒髪のミコッテの少女。
「やあ。」金髪の少年は軽く返事をして、特に気にせず、奥のテーブルに向かう。

「おう。少年、これはおいしいのじゃよ~。」金髪の髪を括ったララフェルの男性は年齢を伺わせない。
そして、山積みになってる皿。4,5枚どころではないだろう。
「周りをみたところ、もう一人がいませんね・・。」
「まずは、次のデザートなのじゃよ~。」
「まあ、何を食べてもいい、とは言いかねる財布ではありますが・・。その財布の持ち主が来ていないと困りますね・・。」
少し表情が引きつっている。


「あ!」
振り返る。すでにテーブルについて、同じく食事を始めているウルラは。
「よぉ。遅かったな。最後に来たやつが全額支払いっていうルール、忘れてないよな?」
「え!?」
「お前、だってちゃんと説明したら、返事しただろ?」
いきなりの新ルールを、寝ぼけていた少年に押し付ける。
「ええええええ!?」
「少年。ご馳走様なのじゃな。お礼に稽古に付き合ってやるんじゃな~。」
「しゃ、しゃくなげさん?」
「そういうことだ。今のおれの師に稽古つけてもらえるんだ。安い買い物だろ?」
「ウルラ?」
「どうした?ネルケ。」
茶色い髪の少年は返事も無い。
「お前、剣使えるのか?」
「たまにはな。試すか?」
「ここの代金を賭けて、挑ませてもらおうか。」
「ほう。」
「おもしろそうなのじゃな~。」


「お前。マユちゃんより強い。と認めざるを得ない・・・。」
「それほどでもないさ。「二つ名」を持つほどでもない。試しに「呪眼」とやってみたら、手も足も出なかったしな。」
「呪眼」って、おい。

「アレ、本当にいるのか?」
「知らなかったか?少し甘やかしがすぎるようだな・・。母君に聞くといい。」

「ワシでも勝てるかなのじゃ~。」
「師は少しお歳が。」
「魔女は常勝なのじゃろう~?兄弟子としては、なんとかしたいのじゃよ~。」
「ムリでしょ。」
「ひどい弟子なのじゃよ~。」
「あんたら、どんだけ?」槍使いの少年は呆気にとられるばかりだ。
「ネルケ、少し修行してこいよ・・。」
「うん・・・・。」

「さて、少しの暇を頂くために、もう一人の師にも挨拶をしなければな。」
「のう、ウルラ。どこに向かう?」
「そうですね。とりあえずクルザスあたりから攻めてみようかと。」
「そうか。ワシは付き合えんのじゃよ~。死ぬなよ。」
「ネルケも来るか?」
「たぶんムリ。」
「だろうな。ああ。呼んだのは他でもない。妹達によろしくな。と言っておいてくれ。」
「自分で言えよ。」
「言いにくい事情があるんだ。カフェの子に聞いてみればわかる・・。」
少し苦い顔。

「さて、これから極上の昼食と、師に挨拶と、忙しいんだ。石楠花師。次に逢うときはもう少しマシになっているかと。」
笑顔の金髪の少年、ウルラ。
「うむ。楽しみなのじゃよ~。」

手を振る。

「これから、だな。」

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