291書き物。少年の内面。

グリダニアのカフェ、カーライン。
ここでちょっとした事件が。

二人の少女と一人の少年。
この3人が夜のカフェで・・・。

カウンターには、二人の凶悪な女性と、比較的マトモな折衝役の女性。


ちょっとした寸劇を観ているような感じだが、少年はそんな気分になれない。
ついさっきまで夜間戦闘の練習をしていたのだが・・。

反則だろ。アレ。

少し離れたテーブルで、妹とカウンターの怪物の娘と同席しながら先ほどの対戦に思い返す。

「ね、ウルラ君?」
真向かいに腰掛ける少女はブルーグレイの髪を肩のあたりで切りそろえている。
その少女は「天魔の魔女」の娘、「魔女の後継」とか呼ばれているらしいが・・。
「どうした?」
先の対戦相手、黒髪の少女。「呪眼(オッドアイ)」の異名を持つ少女との森の中での対戦。おそらくその話だろう。
「あの、フネラーレさんだっけ?実際のところどうなの?」

あの女か・・。歳もそれほど変わらないのに、あのセンスは「眼」だけじゃないな。
「ありゃ、普通に手合わせしたら死ねるくらいのレベルだな。」
正直、正気の沙汰ではないような気がする。

練習用の剣と盾(木製)と、練習用の矢、弓は彼女の専用のもだが・・。
矢は金属製ではない。バランス取りのための重りとして少し先端が丸く加工してある程度で、
殺傷力はよほどの至近距離ではないと無い、とのコトだったが。
(なんだって、見えないところから撃ち込んで、盾を貫通してるんだ?)
しかも、綺麗に直線を描くように盾に並んだ矢を見て、さらにあきれ返る。
(遊ばれてた、ってことだよな・・。とんでもない話だ。)

目の前の少女は、少しビックリしたようだが、なるほど・・。と少し考えていた。

(それにしても、魔女の実力の程はたいしたものだ。)正直舌を巻くしかない。

「う、お兄ちゃん・・・。」
妹はふわふわした金髪を彩るカチューシャに手をやり、思い出したのか無事を喜んでいる。

そこにミコッテの給仕がやって来て、オーダーを取る。

ワインとチーズを頼んでしばらくは少女二人の会話だけを聞いている。

不意に妹が。「兄さん、尻に敷かれないようね。」
「はぁ?」何を言い出すのか?
向かいの少女マユに視線を移す妹。
ちらりと見れば、「・・・。」と少し俯いてしまっている。
(はぁ。そういうことか。)

しばし、食事を楽しみながら夜は更けていく。

そして。

「あ、そういえば兄さんは、マユちゃんの事どうおもう?」
「は?」
もうちょっとタイミングなどありそうなものだが・・。
「うぇえええ!」向かいの少女は硬直してしまった。

少し考え。
「いや、すまない。興味がないな。」と答える。

ゴン。
マユがテーブルに額をぶつけて動かなくなる。
「マ、マユちゃん!?」妹が少女に声をかけるが動かない。
皿があれば間違いなく叩き割っている音に、少し気がひける。

「じゃ、じゃあおれはこれで・・・。」
「あ!お兄ちゃん!」

「お前も早く寝ろよ。」と席を立ち、カフェから出る。
(好みとか、そういうんじゃないんだよな。おれには、まだやらないといけない事がありすぎて、構ってられない・・。か。)
少しもったいない事をしたかと思いながら、家路に向かう。

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