暗く。
それでなくても、暗い。
まだ明け方までには程遠い、船内。
アスタリシア号。
私掠船免状によって、船籍をごまかしながらも寄港できる、限りある船の一隻。
時刻を少し遡り、一人の船員が酒場に繰り出すことに。
その船員の名は、カルヴァラン。副長にして斧ギルドの統括すら行う。
そして帰ってきたときには。
両腕に抱きかかえられた一人の少女。黒髪がその右腕からあふれている。
意識が無いのか、少女は両目を閉じ眠っているかのようだ。
「副長!何かありましたか?」と部下が聞いてくる。
「気にするな。お転婆のお守りだ。」と返す。
「ふう。」自室に戻り、寝台に少女を寝かしつけると、執務机に戻る。
ああでもない、こうでもない、と執務にうなされながら・・
リッラ!おまえ!
お嬢?
あ・・僕・・。
お嬢!俺たちの仇はとれましたかい? 僕は・・
お嬢。生きててくれててててたたたたたたんでででですねねねねね。
リッラ・・お前! おやじ!
待って、その・・。 痛っつつてえええええええ!!
お嬢! 待って!
や、ふくちょう・・・セッカ・・。 その・・
今の副長は俺じゃないでしょう・・・ 僕は好きだったんだ!本当だ!
お嬢! お嬢・・・ お嬢・・・・・・・!
リッラ!おやじ!
セッカ!
お嬢!
生きてください・・・
「うわああああ!!!ヤメろ!お願いだ!もう僕は出来るだけはしたんだ!もう・・・許して・・・。」
跳ね起きる。
朝日が程近い。
眼に涙があふれる。毎夜の事だが、慣れない。
朝日が窓から見える。最近は森の街だから少し早い気がするが、これが今までのリズムだ。
白い裸身が朝日に照り出され、シーツを寄せようかと思うが、
隣で寝ているエレゼンの男性に遠慮して、そのまま寝台から降りる。
テーブルの水差しから一杯の水を飲み干すと、窓から朝日を眺める。
「僕は・・。許されるのかナ・・。」
「ああ。」
不意に男性の声。
「・・・!」
「リッラ。」エレゼンの声。
「な!なんで!」
隠していた、と言うより捨てた名。
復讐のために。
それが。
「俺だけ、この名で呼んでいいかな?」と、
「いいよ。この女ッたらし。」寝台に戻り、口づけをする・・・