285書き物。幕間 少女の悪夢と・・・

暗く。

それでなくても、暗い。

まだ明け方までには程遠い、船内。

アスタリシア号。

私掠船免状によって、船籍をごまかしながらも寄港できる、限りある船の一隻。


時刻を少し遡り、一人の船員が酒場に繰り出すことに。
その船員の名は、カルヴァラン。副長にして斧ギルドの統括すら行う。

そして帰ってきたときには。

両腕に抱きかかえられた一人の少女。黒髪がその右腕からあふれている。

意識が無いのか、少女は両目を閉じ眠っているかのようだ。

「副長!何かありましたか?」と部下が聞いてくる。
「気にするな。お転婆のお守りだ。」と返す。


「ふう。」自室に戻り、寝台に少女を寝かしつけると、執務机に戻る。
ああでもない、こうでもない、と執務にうなされながら・・




リッラ!おまえ!
お嬢?

あ・・僕・・。

お嬢!俺たちの仇はとれましたかい? 僕は・・

お嬢。生きててくれててててたたたたたたんでででですねねねねね。

リッラ・・お前!   おやじ!

待って、その・・。  痛っつつてえええええええ!!

お嬢!     待って!

や、ふくちょう・・・セッカ・・。 その・・

今の副長は俺じゃないでしょう・・・ 僕は好きだったんだ!本当だ!

お嬢!     お嬢・・・    お嬢・・・・・・・!
リッラ!おやじ!
       セッカ!
お嬢!
生きてください・・・

「うわああああ!!!ヤメろ!お願いだ!もう僕は出来るだけはしたんだ!もう・・・許して・・・。」


跳ね起きる。

朝日が程近い。

眼に涙があふれる。毎夜の事だが、慣れない。

朝日が窓から見える。最近は森の街だから少し早い気がするが、これが今までのリズムだ。

白い裸身が朝日に照り出され、シーツを寄せようかと思うが、
隣で寝ているエレゼンの男性に遠慮して、そのまま寝台から降りる。

テーブルの水差しから一杯の水を飲み干すと、窓から朝日を眺める。

「僕は・・。許されるのかナ・・。」

「ああ。」
不意に男性の声。

「・・・!」
「リッラ。」エレゼンの声。
「な!なんで!」
隠していた、と言うより捨てた名。
復讐のために。
それが。

「俺だけ、この名で呼んでいいかな?」と、

「いいよ。この女ッたらし。」寝台に戻り、口づけをする・・・

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