246書き物。とある双子の日記IV

大きな。とても大きな。

言葉で言い表すのはとても簡単で、単純だ。

例えば、一匹の魚を釣り上げた。

この事実には、ひとつの真実があるし、それしかない、ともいえる。

魚を釣り上げた。これは揺るぎの無い事実だ。しかし。

では、その魚はどれほどの大きさなのか?

例えば、ララフェルの釣り師が自身の身長を超える大物を揚げても。

ルガディンの釣り師からすれば小物だろう。

事実というやつは、他人から見てしまえばその評価は変わるものだ。
だが、真実、というのは。

人を圧倒する「事実」を突きつけてくる。




「あいかわらずでっかいなー。」普段?の口調からは考えにくい台詞ではあるが・・。
エレゼンのソーサラーは、懐かしい物を見る表情でその大樹を眺めて。
「ああ、これは見たことあるんだったな?」金髪の少年を見やる。

幻術士ギルドの入り口、「おろち石」を抱えた大樹。その根元がギルドの入り口。

「はい。」殊勝な面持ちの少年。ふわりとした金髪。見た目は繊細な、が、芯はしっかりしている、少し危うい気がしないでもない。そんな少年。

「窟の連中はお堅いがね。実力があれば問題ない。君にはそれを心配するまでも無いとは思うが、おとなしくしておいてくれ。」
「はい。わかりました。」


幻想的な蒼い光。

仄かな点のような燈り。

音も無く流れる、透明な、しかして数多の光を照り返す水のささやき。

(シ・ヴェテックト師・・・。)不思議と、彼女以外に習った師を思い出せない。
(週に数時間しか教わっていなかったのにな。)
そういえば、この口調も師に似たのかもしれない。「ふふふ」

「アルフレートさん?」
「ああ、いや。つい思い出し笑いをね。ここには思い出がありすぎて。」
「そうですか。」金髪の少年は襟を正す・・・ようにして、周りも注意する。

しばし歩いた先。
追憶に耽っていた術士、アルフレートは少しの驚愕を覚える。

「オ・アパ・ペシ。どうしてあなたが?」
黒髪を短くした少年はなんということもなく、その場に居た。
「・・。アルフレート、だったっけ。」
「はい。」
「難問を抱えている、でいいよね?」
「越えられる、とおもっていますけどね。」
「そう。だったら、その横にいる彼もキーワードになりえる、ね。」
「キーワード?」
「文字通り。」
淡い光と共にその姿が消える。

「ウルラ君?」
「はい?なんです?」
「今のは一体?」
「へ?さっきから変ですよ。誰もいないのに呼びかけたり。どうしたんです?らしくもない、と思いますが。」
「あ、・・。ああ。そうだな。少し疲れていたのかな。(アレを見ていない、か。俺が疲れていただけなら、それでいいんだが・・。)」
「あの?」心配げな少年に
「すまん、すまん。まずは紹介しておかなければな。」
「お願いします。(いや、本当に。このコネが当たりだといいんだがな。魔女繋がりも期待できればいいんだけど。)」


「まあ一応、登録の方は問題ない。」
「ありがとうございます。」

(どうにも・・。)
(どうだか・・、な。)

二人の思惑はこの先・・・。

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