245書き物。とある双子の日記III

「あ、どうもすみません。」

カウンター席に案内されたヒューランの少女は改めて店内を見上げる。
荘厳なステンドグラスに彩られた店内は、陽の光でさらに色彩を深めている。
「はぁ。」ため息。
(そういや、お兄ちゃんが礼拝堂みたい、とか言ってたけど。わからなくはないけど、カフェなのよね・・。)
圧倒的なボリュームに気圧されていたら。
「いらっしゃい。」

いきなりの声にしどろもどろになってしまう。

エレゼンの女主人、ミューヌ。
「う。あ。その。あの。」
「どうしたの?」
「い、いえ。そのなんだ。ええと。」
「まずは落ち着いて、お茶の一杯くらい飲んだらどうかな?」
「は、はいぃ。」


「ごちそうさまでした。」一杯のお茶だが、今まで飲んだ中では最高に美味しかった。
とはいえ、リトル・アラミゴの中では嗜好品など、ほとんど無いのだが・・。
「で。どうしたの?」
口調は男っぽいが、やさしい表情で訊いてくれる女主人に、当初の目的を告げる。

「その・・。兄さんが来ていませんでしたか?」
「ああ、あの金髪のね。なるほど。よく似ているね。その金髪。」
「あ、いえ、というか・・。」髪を押さえて、カチューシャを忘れていたことに思い至る。
コレがないと、兄のふわふわ金髪と混同されがちだ。

「アルフレートさんと一緒だったよ。まあ、この二人なら行くところは幻術士ギルドじゃないかな?」
女主人はなぜかニコニコとした、そんな表情だが・・。

「ありがとうございます。」
「そこに行くのかい?」
「えーと?その?」
「行くのなら、案内できるし、そうじゃないのなら、リーブ、ってわかるかな?」
「あの、さっきも言われたんですけど・・。なんなんですか?」
「そうか。まあ、簡単に言えば「なんでも相談所」の、問題解決係、かな。」
「はぁ?」正直、なんのことだかサッパリだ。問題解決なんて、キャンプじゃみんなでやってきた。
自然と役割が決まってはいたけど・・。

不思議そうな表情の金髪の少女を見守るように、ミューヌは。
「見たところ、それなりに腕はありそうだね。試しに一つ二つ、やってみればいい。」
「うぇええ!」
「そこ、そんなに驚く場面かな?」
「あ、その、ええと。兄さんも探さないと・・。」
「そのへんは僕にはなんとも言えないけどね。」
「はい・・。」
「お兄さんの事が大事なんだね。」
「はい!お兄ちゃんは、私が見ていないと、とんでもないことばっかりやらかすんですっ!今でもどれだけの災厄を撒き散らしているか・・・。」
「ふうん。まあ、アルフレートさんもいる事だし。大丈夫だよ。そうそう、リーブは似たような依頼が多いから。
まあ、それくらい問題が山積みってコトなんだろうけどね。まずは、キャンプのエーテライトに登録して廻るのもかねて、リーブの一つでもこなしてきな。」
「それってどうすれば?」
「ああ、となりに青く光るカウンターがあるだろ?」左の方に視線を向ける。
「ええ。」
「あそこに行けば、カードがもらえる。それが契約書だ。」
「契約書?」
「そう、こういう依頼をこなしてほしい。そして報酬はこれだけ。ってね。」
「その・・。失敗したときは?」
「さてね。僕はこういう荒事や、依頼は「提供」する方だから。「始末」まではなんとも。
基本的に自分の力量次第、じゃないかな?それが分からないなら、そこで打ち止め。違う道を勧めたいね。」
「シビアなんですね・・。」
「当然。」
少しの間、お茶の残り香が消えていく頃。

「ミューヌさん。」
「どうかした?」
「その、リーブをこなすのに、必要なことって、なんでしょう?」
「そうだね、まずは仲間、かな。先日も一緒だったメンバーがいただろう?」
「はい。でも・・その・・。」
「わかるよ。あの子達はまあ、以前からの付き合いも長いからね。なかなか輪に入れない、とかおもってるんじゃないか?」
「はい・・。」
「なら、話は簡単だ。ここはドコだ?」
「へ?」
「冒険者ギルド、だよ。」
「ああ、はい。」
「周りにはヒマな連中もいれば、おせっかいな世話好きまで、いくらでもいる。マリー、だったか。手を伸ばせ。僕が言えるのはこのくらい。」
「マルグリット、です。マルグリット・コリーナ。」ゆるいウェーブのかかった金髪をステンドグラスからの光が色彩を添える。
「そうか。マルグリット。いい世界が見れるように。僕が全ての冒険者に伝える言葉だよ。君は冒険者に間違いない。」


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右、右・・・
ミューヌさんからなら左だけど!
Eraru Control (Hyperion) 2012年07月18日 12:39

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>エラルちゃん、いらはいw
そうねー「向かって右」って言うのが正解かもw案内するほうとしてはwつい、うっかりってことでwww
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年07月18日 14:41

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