これは・・・。
グレイの髪の少女は内心ヒヤリと。。。
つまり、生きては返さない、もしくは生かして尋問か。
勝てるか?自問。すでに空気は向こう側についている。
どうやれば自分の「劇場」に落とせれるか考える。
船長室。
最後尾にある船室には、大きな窓とデスク、
その他戦利品だろうか?棚には調度品がこれでもかと置いてある。
そして。
椅子から立ち上がり、剣を手にした船長は威嚇するでもなく少女に近づく。
少女はとっさに杖を手にして。
「こういうのはどうかしら?」
「悪くないな。」
「じゃあ、遠慮なく。」
「レティシア。お前、この船に乗らないか?」
「え?」
不意打ち。
剣が繰り出される。
「あっ!」わき腹に剣が食い込む。
(しまった・・。完全に相手の劇場だ・・・)
続く剣劇に応対するだけの余裕が無い。
魔法で強化するのを失念していたのが災いか。
とりあえず、風の魔法を撃ち放つが効果は見込めない。
(やばい、デジョンなんてしてたら切り殺される・・)
移動術式は発動までに時間がかかる。その間に血だるま確定だ。
その間にも剣は皮鎧を裂いていく。
痛みに耐えながら、なんとか呪を紡ぐ。
ガキっ!剣が砂埃の塊りを叩く。
土の加護を得た少女はそのまま奥の窓めがけて走る。
風の魔法で窓を割ると、海に落ちる。
「ぷはっ・・。死ぬかとおもった・・・。」波間に揺れながら、つぶやいた。
船長室にて。
「おい。アレッサンドロ。」
「はい、カピタン。」
斧使いは船長に問いだされていた。
「あんな小娘に負けたのか?」
「はい・・。」
「もういい。降りろ。」
「は?」
「乗船の許可を無くす。」
「え?」
「今すぐ降りろ。」
「カピタン、すみません。俺も降りていいですかね?」
無精ヒゲの青年。
「なんだ?」と船長。
「いえ、マイスターが負けた責任は俺にもあるもんでして・・。」
「で?」
「その、あの。」
「降りたいなら、勝手に降りろ。ただしお前一人だ。」
「え、いや、その、あの子は?」
「この船の資産だ。お前の自由に出来たのはこの船の中だけだ。」
「では、カピタン。改めて、あの子の身請けをします。」
「ふむ。」
「おいくらですか?」
「お前の覚悟だけだ。いいだろう。連れて行け。」
「ありがとうございます。カピタン。」
船はそろそろリムサ・ロミンサ港に着く。