176書き物。海賊船の9

これは・・・。
グレイの髪の少女は内心ヒヤリと。。。

つまり、生きては返さない、もしくは生かして尋問か。

勝てるか?自問。すでに空気は向こう側についている。
どうやれば自分の「劇場」に落とせれるか考える。

船長室。
最後尾にある船室には、大きな窓とデスク、
その他戦利品だろうか?棚には調度品がこれでもかと置いてある。

そして。

椅子から立ち上がり、剣を手にした船長は威嚇するでもなく少女に近づく。

少女はとっさに杖を手にして。
「こういうのはどうかしら?」
「悪くないな。」
「じゃあ、遠慮なく。」
「レティシア。お前、この船に乗らないか?」
「え?」
不意打ち。

剣が繰り出される。

「あっ!」わき腹に剣が食い込む。
(しまった・・。完全に相手の劇場だ・・・)

続く剣劇に応対するだけの余裕が無い。
魔法で強化するのを失念していたのが災いか。

とりあえず、風の魔法を撃ち放つが効果は見込めない。
(やばい、デジョンなんてしてたら切り殺される・・)
移動術式は発動までに時間がかかる。その間に血だるま確定だ。

その間にも剣は皮鎧を裂いていく。

痛みに耐えながら、なんとか呪を紡ぐ。

ガキっ!剣が砂埃の塊りを叩く。

土の加護を得た少女はそのまま奥の窓めがけて走る。
風の魔法で窓を割ると、海に落ちる。

「ぷはっ・・。死ぬかとおもった・・・。」波間に揺れながら、つぶやいた。




船長室にて。
「おい。アレッサンドロ。」
「はい、カピタン。」
斧使いは船長に問いだされていた。
「あんな小娘に負けたのか?」
「はい・・。」
「もういい。降りろ。」
「は?」
「乗船の許可を無くす。」
「え?」
「今すぐ降りろ。」


「カピタン、すみません。俺も降りていいですかね?」
無精ヒゲの青年。
「なんだ?」と船長。
「いえ、マイスターが負けた責任は俺にもあるもんでして・・。」
「で?」
「その、あの。」
「降りたいなら、勝手に降りろ。ただしお前一人だ。」
「え、いや、その、あの子は?」
「この船の資産だ。お前の自由に出来たのはこの船の中だけだ。」
「では、カピタン。改めて、あの子の身請けをします。」
「ふむ。」
「おいくらですか?」
「お前の覚悟だけだ。いいだろう。連れて行け。」
「ありがとうございます。カピタン。」


船はそろそろリムサ・ロミンサ港に着く。

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