970外伝2 悩みどころ?

う~ん。う~~ん・・・

最近、なんというか、刺激がない。
かと言って、今の暮らしが嫌いなわけじゃない。

裏手の小川で身体をすすぐと、タオルで水気を拭き取ると、かけてあった小袖に腕を通す。

穏やかな朝日が梢から覗き、一日の始まりを告げる。いつもどおりの一日。

「なんだかねぇ・・・」
傍らにあった木剣を手に、型を構える。
本当の刀を使う、などということは今となっては無いと言っていい。
たまに手入れをする程度で「妖刀 村正」が大人しくしてくれているのだから、これは平和と言ってもいい。
「妖刀」というだけあって、持ち主を祟った、人を殺めずにはおれない、抜けば意識を保つことができない、
気が付けば家族を皆殺しにしていた、主君を殺害した、と陰湿な噂が絶えない。

そんな物騒な刀を持っているのは、東方との貿易ができるようになった某商社から・・
もちろん、自分で購入したワケじゃない。
とあるスジというか・・「天魔の魔女」と呼ばれる、女性からの差金というか。
黒髪の女性は、ぼんやりと「そういえば、あの魔女ってなにやってるんだろうな~。」とつぶやき、木剣を振る。

「おっと・・」少し上の空だったせいか、木剣がすっぽ抜けそうになる。「ヤバイなあ。」やはり、木剣とは言え、気が緩んでるのかもしれない。
村正の手入れでもして、気を引き締めるか・・。
黒雪は、結わえていた髪を解くと居間に。

しばらく前に「某商社」からせしめた「コタツ」という東方のテーブルなのだが・・・背が低いため、今まで使っていた椅子が使えず、
仕方がないので居間を改装までして置いてある。
ついでに作った「床の間」にくだんの妖刀が飾ってある・・・

居間だけを見れば、なんとか東風だが・・・モトが「魔女の隠れ家」だっただけに、外見とのギャップが・・・
まあ、来客もめったに来ないので、ソコは突っ込みが入らない・・・と思いたい。

ここで朝食を、としたいところだが・・戸棚から筆と紙を持ち出し・・「う~ん。」と、思案。
(あの魔女ともう一戦、したいなあ・・)と筆を進めようとして、その内容を考え・・
なんと一筆したためようか・・
「う~ん・・・」

純粋に模擬戦でもいいけれど、真剣で勝負となればこの妖刀で相手をするというのもなぁ。

あのガキといい仲になってからというもの、どうも気が緩んでるのかしらねえ・・

「あー、もうむしゃくしゃする~・・」
このまま昼寝をしよう。コタツの火は入っている。
どうせ厨房に行けば朝食の準備もできているだろう、あの世話好きめ。たまには女らしいことを自分にもさせろっていうのに・・・

うとうと、と足元からの暖かみに、まどろみに浸っていく・・・。

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