965外伝2 某企業の・・・


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>SSは、お話の途中でピックアップしてねw

「うーん・・」
「あ~・・・」
コツコツ・・
「ふーむ・・」
「っく!」

執務室のデスクに積み込まれた書類の山に、あーでもない、こーでもない、イライラは募り、
コツコツと羽ペンをインク壺に入れたり出したり、爪先をデスクの裏側に、或いは床に苛立ちと、焦燥を駆り立てる。

ここ、リムサ・ロミンサにオフィスを構える「アリティア産業」代表取締役社長、マルス・ローウェルは、グレイがかった黒髪を耳ごとかきあげながら。

とある事業の採算と、収益にどうしても出てくる数字の羅列に頭を使いながら。
あーでもない、こーでもない、と、せわしなさを実感している。
そして、傍らには筆頭秘書のミコッテが静かに佇んで、仕事ぶりを見に来ている。
もちろん、彼女も仕事(主に、必須な書類の選別と、自身の差配できる物にはちゃんと目を通し、サイン、ないしは捺印までも的確にこなしながら)をしている。
が、無言故にプレッシャーも感じるのも、この際致し方ない・・と気持ちを抑えつつも、
兎にも角にも「やらなきゃしょうがない」に、アタマから、ミミから、湯気が出そうなほど。

元は、ガーロンド・アイアンワークスとコンビを組んで、遊戯施設の誘致と、経営を企画したあたりから、やる気はもちろんのこと、収益も見込んで頑張ったのである。
当然のことながら、その分仕事は山ほど増えたワケで、いわば自明の理。
わかってはいた、ハズが・・・ここまでハードだったとは・・
「せんちゃん?」
秘書に声をかける。
「・・・・」無言の秘書。
「セネリオ?」
「なんでしょう?」
彼女は、仕事と私事の使い分けをキッチリとしている。頼りになる「片腕」だが、
少し真面目、いや、生真面目すぎる・・・が、そうでなくては困る・・・ので、公私をそれほど気にしない彼女はそれとなく。
「少し休憩しない?」何気なく・・手元の書類は十数枚の束。を無視しつつ。
「そうですね。ですが、社長。まずは、お手元の書類だけでも片付けてください。」
言いながらも、自身で処理できる書類に目を通し、実務をこなしていく秘書に頭が上がらない。

それでも。

なんとか、休憩には持ち込めた・・・

「ふう・・」仮眠室で一息つくはずが・・・


「猊下。此度の仕様、いかが思われますか?」
「そうだな・・早急に手を加えるべき。」
「有り難きお言葉。この身に変えても猊下のご威光を世に知らしめんと。」
「うむ。」

広間には、仄かに蒼い光と、壁自体が白色の光を醸す。
その奥、一際大きな椅子に教主たる自分が腰掛け。
左手側には、白と黒を基調としたカウル(フード付きのローブ)のミコッテの青年が立っている。
「司教?」青年に声をかける
「なに?お姉?」
「・・・この場では、教主、または猊下と呼べと何度言えばわかるんだ?おい!エレン!」
「あ!お姉も今、名前で呼んだ!」尻尾を振りながら「司教」が応える。
ああ、全く・・・。この場には二人しか居ないからいいものの・・・信者達の前では到底不可能な会話をしつつ・・・
「今回、新たな入信者が、拝謁に来る。その時にはお前は一言も喋るなよ?」
「え?かわいい娘がいても?」
「黙っていろ。さもなくば、ツルハシで殴る。」
「わ!ソレだけは勘弁してよー。」
「・・・あの。よろしいでしょうか?」不意に声が。
「ああ。すまない。」教主が言葉をにごしながら・・
「猊下、信者達が入口まで来ております。準備はよろしいか?」
「うむ。」

装飾されたドアが開かれ、新たな信者達が恭しく広間に現れては、かしづき頭を垂れる。
「ようこそ。我がカウル教に。其方らの未来に幸あれ。」
椅子から立ち上がり、洗礼の儀式を施すように、両手を挙げる。
(そうだ。悩める者たちよ。十二神のみに束縛されるだけではない。各々が信じるべきを信じるのだ。)恍惚とした空気が場に漂う。
「使徒、セネよ。新たなる同胞に、心安らぐ道を示せ。」
「は、猊下。」
「よきにはからえ。」



「社長?寝ぼけています?」
セネリオは、社長の寝言にウンザリしながら。
「ふぇ?あえ?」
「なーにが、よきにはからえ、ですか?仕事はまだ溜まったままです。私に万事任せるならそれはそれで構いませんが、言いようというものがあるでしょう?」
「あ?」
「あー。はいはい。ヨダレ。」
絹布を突き出され、慌てて口元を拭う。
「その・・せんちゃん?」
「なんですか?猊下。」
「いや、その・・・」
「では、先に執務室にもどりますんで。顔でも洗って出直してください。今日中にしなければならない書類もまだまだ残ってますから。」
バタン。

ドアの閉まる音で、ようやっと現実に戻った気がする。

「よし、仕事するか・・」
パールで事業の進捗具合を確認して
(よお、社長。こっちは上手く仕上がりそうだ。楽しみにしてなって。)アイアンワークスの代表を務めるヒゲの技師。
(よろしくね!)

あれは・・夢だったのか、いや・・・自室にはカウルが収納タンスに収まりきれないほど・・
パン! 両手で頬に景気をつける。
「やること、やらないと!」

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