石の壁に映える、灯火のほんのりとした、暖かさと少しばかりの寂寥感。
居城、とも言える場所を確立したとはいえ、ただ安寧に身を委ねる訳にもいかない。
淡い色合いの金髪を後ろに束ねた、碧眼の女性は今日も情報の収集に事欠かない。
「今日はこんなところかしらね・・。」ミンフィリアは、髪をかき上げるとホッと一息。
ただ、雑務のみならこれほどまでに疲れることはないのだろうけど。
蛮神対策として、一番に必要なのは各国との協調であり、そのリーダーシップを求められる立場になった。
が、その事を誇りに思えど、後悔はしていないし、する気もない。
過去に、少々行き過ぎた、強引な処置を責められたこともあるし、今はその反省を活かし、十分に立ち回れている、と思いたい。
少し、弱気になりがちかもしれないが、そうも言っていられない。
「石の家」その名の通り、岩窟を表現したかのような佇まい、とはいかないが、意思だけはそうでありたい。
メンバーからも「砂の家より、こっちの方が硬いです!」と言われ、「じゃあ、次は・・」で盛り上がったものだ。
「じゃあ、最終的にはアダマンタイトの家ですね!」とは、さすがに行き過ぎだ!と茶化した覚えも。
でも、そのくらいの心構えはいるだろう。なにせ・・
そこに。
コンコン。とノック。
書類の束をデスクの脇にどけ、ミンフィリアは「どうぞ。」と、来客を促した。
「ミンフィリアさん。ご無沙汰しています。」
入ってきたのは、二人のミコッテの女性。共にローブ姿で一礼を。
「まあ。しばらくぶりね。コーラル。リトリーさん。」
「はい。長らくお暇を頂いていまして、すみませんでした。」コーラルが会釈を
「あ、義姉さん。私が・・」リトリーが後を
「気にしないで。あの時は大変だったし。幽霊船退治の任務もこなしてたんでしょ?」
ミンフィリアの言葉に、少し面はゆいリトリー。
「じゃあ。」
一瞬の緊迫した声音。
「二人に、お仕事。お願いしようかしら。」
「はい?」「え?」
「アルフィノかウリエンジェさんに聞くと詳しく説明してくれるかな。蛮神の新情報なのだけど。」
「はい。」「はい!」
「私は少し雑務で追われてて、報告しか聞けていないの。なので、現場の情報には少し疎くなっちゃって・・って、言い訳しちゃうわね。」
「いえ、そんな・・」コーラルは申し訳なさそうに「わたしの都合で手を煩わせてしまって・・」
婚約者を亡くした引っかかりが、どうしても・・・でも、支えになってくれた彼の妹が。
「任せてください。」義妹はにこやかに。
「じゃあ、よろしくお願いね。」暁の血盟の盟主は頭を下げる。
「よっし。行きましょう!義姉さん。」
「そうね。やるか!」
二人は情報を集めにかかる。
「そういえば・・」コーラル
「?」首をかしげるリトリー
「リトリーってば、白衣の使者(ホワイトブリーズ)って、二つ名あるけど。」
「あ、あああ!少し照れちゃいますよ?ソレ。」
「私もって、思ったんだけど・・」少し憂鬱な表情で「やっぱ、ムリね。」術士としては、
上級な彼女だが・・「偽名まみれで、裏の仕事」が板についていたあの頃を思い出すと、どうしてもそんな華やかには一生、お目にかかれない。
そのくらいには、自責があるのを否応無しに。
でも、そんな自分を愛してくれている兄妹がいて・・(うん。これだけで満足すべき。よ。)
「義姉さん?また、自己嫌悪でしょ?大丈夫。そうね、わたしが良いの考えるから。あ、でも。」
「でも?」
「わたしだけの二つ名って事で、誰にも内緒って、どうかな?」
「!?」
「いいでしょ?」にっこりと笑う義妹。
「うん。お願い。」
「じゃあ・・・・「紺碧に祈る者(プレイヤー・コバルトブルー)」ってどうかな?」
「いい名ね。ありがとう、リトリー。」
紺碧色のローブを翻し、お辞儀を。
「どういたしまして。」同じく腰を折ってお辞儀をする。
(あとは、紅い色があれば、トリコロールなんだけど・・それは、二人の情熱があれば言うまでもない、か。)
「じゃあ、いっちょがんばろ!」
「うん♪」
足取りも軽やかに、二人のミコッテは旅路につく・・・