945セブンス。プランニング。その1

「なあ、シド殿。まずはコレからとりかかってもらえないだろうか?」

ザナラーン郊外にある広大な敷地で、資材の搬入や、下地固め、土台になる基盤の設置など、いくつかの大型施設のための工事が進む中。

このプランを持ち込んだやり手と噂の女社長が珍しく耳をピコピコさせながら、銀髪のヒゲの男に図面を見せている。

「ん?観覧車、か・・・まあ、最初に手がけるのは構わないが・・これは相当大きいからな。
まあ、コースターなんかよりは負荷が少ないから、試験もそれほど時間はかからないと思うが・・設置までに時間がかかる。が、どうしてだ?」
「若い連中の、門出に使いたくってね。」マルス社長はニッコリと。
「ああ、そういう事か。任せとけ。ただ・・ほかの施設は先送りになっちまうぜ?」
「そのくらい面倒みたいじゃない?」
「はは!いい女だな!アンタ!」
「そのくらいのお世辞じゃ落ちないから。」にっこり。

「よーし!野郎ども!気合いれろー!」シドが気合を入れる。
「野郎じゃないぞー!」と女ミコッテ、カレン・ルイが喚いてるが気にしない。
「じゃあ、イドゥン。後はシド殿と連携を取って、可能な限りの期限を報告しろ。私は本社に戻ってまた書類と取っ組み合いだ。シド殿、よろしく頼む。」一礼。
「ああ。任せときなって。お嬢さん達の、ましてや未来の若者達のためだ。全力でやるぜ。」
そこに。
「あ。ぼくもまぜてよー!」走り込んできたミコッテの青年。
「あ、こら!エレン!お前、遅刻したあげくに、挨拶もなしか!」ガシっとピンクの髪の頭を押さえつけ、頭を下げさせる。
「シド殿、申し訳ない。コイツは、私の実弟でエレン・ローウェル。実務だと役に立つかどうかは微妙だが、試験起動の際に実験台に乗せてやってほしい。
こんな性格だから、もしかすればいいアイデアくらいひねり出すかもしれない。」苦笑い。
「はは!よろしく、エレン君。シド・ガーロンドだ。」握手のために手を。
その手を両手で握りこんで「うん!よろしく!お姉は、キツイからね!ぼくはもっとふんわりだよ!」ケリが入る。
「やかましい。」
無言で見守るエレゼンの新社長。(もしかして・・・秘書って、社長の?)
ローブ姿の青年を蹴り飛ばしまくっている社長を呆然と見ながら、(あの性格で、しかも実弟?・・どうすればいいの・・・?)

「では、よろしくお願いしますシド殿。イドゥン、業務報告は定時に。それと、コイツの扱いは今みたいな感じで大丈夫だ。
何かしでかしたら「蹴れ」それで少しは大人しくなる。」
「あの・・・?」
「ああ。問題ない。ただ、コイツはたまに・・天性のカンを発揮する。それは見分けるのが難しいが、勝手にやってくれるから、その時は放置すればいい。」
「はあ・・。」
「では、よろしくな。」
片手を挙げて少し離れた場所に。

ぱたぱたぱた・・・・・飛空挺が迎えに来た。


「社長。」筆頭秘書のセネリオ。
「ん?」
「どうして移動術式で帰らないんですか?」
「いや、ああいう場面ってさー、こういう演出もいるじゃない?ポンって飛んだら威厳っていうのかなあ?」
「まあ、このチャーター代金も社長のポケットから出るんで問題はありませんが、私の事務処理が残業確定になってしまいました。」
「あー・・・何か予定あった?」
「いえ。特には。ただ、ダッルーってだけです。」
(うわ、超キレてる・・・せんちゃん・・・・)
飛空挺は海を越え、リムサ・ロミンサへ・・・


「ね。その。あの。」
綺麗なリングを眺めながら、オレンジに萌える髪を夕日に。
剣聖ミーランは、未だ嵌めていないリングを夕日に飾し・・
「これ、その・・・何時嵌めればいいのかな?」
先日の夕食で貰ったリングと、告白。
隣に立つミコッテの青年。薄茶色の髪を潮風になびかせながら。
「うん、そうだねえ・・いつでも、っていえば、いつでも嬉しいんだけど・・・。」
勢い?とは違う、彼の告白に素直に応えたのだ。本来なら、今すぐでもいいだろう。
こういう経験がほとんど無かった彼女は、どうしていいのか分からず、結局貰ったその日には嵌められず、
宿でいい感じに酔った相棒に話してみたところ「あいつの部屋にいったらどうや?」と言われて、慌てて寝台に潜り込んだ。

いきなりの展開には弱いミーラン・・・特に色恋沙汰に。

「じゃあ。」リングを摘み取り、左手の薬指にそっと。
リガルドが嵌めてあげる。
「これでいいよね?」
「あ・・・うん・・・。」


遠目に相棒の行く末を眺めていた相棒は
「やっとか。ほんまに面倒なやっちゃなあ。」と両手を後ろ頭に組んで、ぶらっと街中に歩き出す。
「お。」
飛空挺がやってくる。普通の便ではない。あれは、チャーター専用便だ。
「社長、やってくれるやん。うちのお願いも通してくれたんかなあ?」
あくまで「お願い」だ。依頼や仕事ではないので、料金はかからない。
そして、その手の「お願い」を聞いてくれる相手だと知っている。
発着乗り場に急がねば。エレディタは駆け足で・・・・・

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