916セブンス。二歩目の次の手

ウルダハにある、とある宿。
女子専用ながら、ちょっとした裏ワザで男連中を連れ込み・・・

連れ込まれた方は、「どうなってる?」な感じ。
しかも、そのトップたるヒゲの機工士は目覚めの言葉に「チューしちゃうゾ!」なんて耳に入って来たものだから、
飛び起きて(おそらくはあるであろう)洗面所に駆け込む事に。
あろう事か、女子の園で男の悲鳴が・・・

「まったく・・カレンのやつめ。」顔を洗い、今、自分がどこに居るのかを把握せねば。
シドは周りを見渡し。
どうにもこうにも、少なからず「男が居てはダメ」な環境、設備を見渡しながら。
「さっきの大声はマズかったな・・・・」
今更である。


「クク!あっはっはっは!」
カレンはイタズラが成功したので、意気揚々と寝泊りしていた部屋に。
そして出迎えたのは、グレーの髪のミコッテ。
彼女が一応の交渉相手。だが、その真面目すぎるところがとても気に入って・・・
「やー!おっはよーーっ!」なんて。つい張り切ってしまった。まあ、テンションが上がってるのは違いない。
「あの・・カレンさん、でしたよね?」硬い口調は、彼女の双子の妹や、社長と仰ぐ女性よりは、ナルホド、こういった交渉には向いてるのは分かる。
でも。
「うん。そうよ。そちらさんはセネッチさんでしたっけ?」
ワザととぼけてみる。
「セネリオ、です。」グレーの髪を揺らし、真剣な眼差し
「ああ、そっかそっか。ゴメンね。」ふうん。洒落や酔狂でこんなプラン出したワケじゃないんだね。気に入った!
「うちの親方に話するんでしょー?さっき起こしてきたから。」紫に染めた髪が揺れるミコッテの女性。年齢的に、自分よりは少し上かな?なんとなく、姐御肌、というか。
自分はこういう空気は作れない、とセネリオは感じる。そして、その「起こし方」も大体想像がつきそうだ。
なんせ、妹の親友にあんなマネをしたのだ。推して知るべし、というところだ。
あえて。
「あのカオスに行ったのか・・」顔色を伺うが・・
しれっと。
「起きなかったらチューするゾ♪て耳元で言ったら、喚きながら水飲み場まで走っていったよ♪」
さもありなん・・か。セネリオは頭を抱えたい衝動を抑えつつ。
「・・・・後は詰だけだな・・・」
実際のところ、破談にはならないはずだ・・この調子なら。しかし・・
「・・・ あんな子使うなんて。犯罪だと思うよ。」思いもよらなかった言葉がカレンから。
いや・・「彼女は・・・」
「天魔の魔女、でしょ?」その後に続く言葉に、返す言葉が難しい。知っていたのか、いや、彼女を知らない方がおかしいのかもしれない。
「Dead or Liveでしょ。」普通なら、犯罪者相手に「生死を問わず」という常套句を「乗るか、反るか?」という意味で問う。「あなたなら、わかるでしょ?」
彼女は髪を揺らし「素敵。滾っちゃうわぁ。是非、仲間に入れてね!」
満面の笑顔を浮かべる彼女。そして。
「あー!せんちゃん!」
衣服どころか・・・な格好の社長と、妹。
「ちゃんと服ぐらい着て来いっ!」手近にあった羽毛入りの枕を投げつける。
ぼふ、という音と共にひっくり返る社長、さらに剣の代わりに枕元にあったライトスタンドで妹を殴り倒す。
「いや、失礼した。カレン殿。どうにも、職業意識が足らないようで、お恥ずかしい。」
「あはははっ!いやいや、セネリオさん。このくらいじゃなきゃ、今回のプランは上手くいかないって!いいお話だよ?シドには、絶対やれって言っておくから。」
涙すら浮かべて笑い声で。
「そうか。それはありがたい。もう一つの件は、おそらく順調に進めてくれているだろうから、後は返事待ち、かな。」
「だよね。あの魔女がしくじる、って考えつかないわー。」にっこり。
「だろうな。私も彼女には足元にも及ばない「策」で、かなり引っ掻き回されたんだ。
今回も愉快な策で引っ掻き回して、成功に持って行ってくれると期待したい。いや、している。」
「じゃあ、まずはココでの取引の「条件」なんだけど、手伝って。」
「は?」
「オトコ共を窓から放り投げる、かな。」
「な!?」
「男子禁制の宿に、ね?しかも、絶叫あげるヒゲの旦那がいたから、すぐにでもしないと問題が起っちゃう。」
それは、貴女のせいだろう・・・・だが、社名にも関わる。
「わかった。」

「猿ぐつわかませてっと・・」
(それは、死ぬ可能性をふくんでるよな・・)
傍らのミコッテが布巾を男衆の口に詰め込んでいて。「早く窓から放り投げて。」
「ああ・・」一番軽いララフェルのウェッジ?とか言ったか。彼を一番落下ダメージの少なそうな場所に放り投げる。
「・・・・・・!!!!?」
「あー・・おし。大丈夫。一番ヤバい彫像の上に投げるなんて、結構遊び心あるわね!」
「え!?その・・」衝撃を減らそうとしたのだが・・
「串刺しララフェルができなくって残念だけどね~」
ぶは。そういうことか。言われてみれば・・・
「俺は悪いが、自分で落ちるぜ。」シドがさっと窓から身を翻す。
「あ~一番の獲物が~」心底残念そうに。
「じゃあ、コレ。」騎士は、大柄のルガディンを落ちていくシドの上に落とそうと。
「OK!」
下の方で「ぐあ!!」と悲鳴があったので、二人でハイタッチ。
この後、エレゼン親子を放り出し、憤懣やるかたない二人を伴って、宿を出る。

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