555書き物。撤退戦。

「まずは撤退にゃ。」
オレンジ色の髪のミコッテが作戦内容を告げてくる。

妻の親友にして馴染みの顔をみて、ウルラは「了解した。」とだけ。
義母さんは・・。
そういう戦術をやはり・・・・。
だがしかし。
こちらも敵兵がいて、そうはやすやすと撤退の構えをさせてはくれない。

「おい!お前ら!」叫ぶ。
周りも乱戦状態。
「とりあえず尻尾まいて逃げるぞ!」と。

戦術的にはかなり無茶ではあるが、効果はある、と思う。
隊を編成しなおす余裕があればいいが、いまはとりあえず合流、というところだ。
分割してしまった義母の隊と後衛の術士達が気になるが、
引き際が肝心だという事は義母からもよく教わっている。

しかしながら・・・・さすがに魔女、か。
天魔の魔女といわれる彼女は、戦術の天才だといわざるを得ない。
個人戦においても、軍集団においても、常に相手の裏を衝きにかかる。
味方においては頼もしい事この上ないが、敵からすればやっかいこの上ないだろう。

でも。
頭の上にまで来ている、あの赤い月が気になる。
どうしたもんだろうな?撤退戦をしながらに気になって仕方がない。
「副隊長!」
「どうした!」
「隊はまとめて下がりつつあります!副隊長も!」
「まあ、なんとでもするさ。」笑う。
「しかし!隊長の部隊もまだ帰還していない今、副隊長まで倒れられると・・。」
「あの人はなんとでもするだろうさ。まずは中央隊に合流だ。」
「了解・・しました。」副官が去っていく。

この後。
「どうしたもんだろうな。」つい。
こんな独り言が出るようでは。

戦況は芳しくない。
単純に戦力差なのだが。これをひっくり返し同等にした魔女はまだ帰還していない。
「くそ、義母さんはまだか。」敵兵の剣を捌き、撤退の最後尾を勤める。

その時。

ララフェルの術士と共に義母が。
部隊を引き連れやってきた。

「義母さん!」が。
目を見開く。

ダメだ。それは。

わき腹に折れた槍を突き刺され。
血の気を失った、蒼白の顔色で。

「おい、ウルラ!・・・撤退戦、見・・事・・だ。この・・」
がふっ。血を吐き出す。
「この後、・・・・・」
見ていられない。
「もう撤退してください義母さん!マユだってこんなの見たくないはずだ!」
思いのたけを告げるが。
「馬鹿野郎。親友がまだ残っ・・・てる。アイツは甘ちゃんだ。
ちゃんと面倒見ないとダメなんだよ。それとな。魔女様をナメるん・・・じゃねえ。」
腹に刺さったままの槍をぽん、と叩く。それすら激痛のはずだが・・・。
「了解です、隊長。」略式の敬礼をし、抱き上げて走り出す。
「おい!テメエら!隊長様のお通りだ!さっさと走れ!」
「馬鹿・・・野郎・・・。」腕の中の女性は意識を失ったようだ。
「義母さん・・・。」

「早く治癒しないと~。」傍らを走るララフェルの女性。
「分かってる!だけど!」
戦況は変り、今は追撃してくる帝国兵を退けつつ、隊を一まとめにし、
かつ其処から敵に包囲陣を敷いて敵の片翼からツブす。
絶対的に足らない兵力だが、この戦術なら確かに効果はある。
少なくとも敵右翼は確実に潰せる。
そうなれば、敵も撤退もやむなし、となる可能性が高い。
痛み分けから一転、勝利とも取れるこの戦術。

でも。
その戦術を考案した魔女は今は意識も無く。
妻と同じくらい軽いその体をただゆだねるのみ。

わき腹を貫く槍。まずはこれを・・・だが。
激痛と共に大量の出血をともなう。
これは致命傷に繋がりかねない。
義母たる魔女だが、今は一人の女性として。
「なあ、これ抜いてすぐに蘇生術式組めるか?」とララフェルの白魔道士に。
「やってみるー。」
「ああ、頼む。」今はこれだけが頼りだ。

その時。

後ろから。

敵兵が彼の頭を斧で撃ち叩き。
防具の上からでもかなりの衝撃に青年は抱えていた女性ごと倒れ。

「な、何しやがるんですか!」
と。ララフェルの少女?は。杖を取り替える。
蘇生術式を編むのを断念し、最強の術式を編みこむ。

見えるものが居れば。上空に魔紋が展開し、そのあまりの緻密さに舌を巻くレベル。
構成はさらに緻密さと密度を増して。魔力と呪により開放される。
「焼かれろ!!」ララフェルの一言に。

轟音と爆炎。
巨大な火球が出現、転移。そして。

敵兵が消し炭となり、二人を見る。
「ああ。今すぐなおすからねー、ごめんねー、」だが、帝国兵はまだまだやってくる。

「でも、先にこいつ等からだね~。」

魔紋が展開していく。


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きゃーw
え・ら・る・無双ww開始www
Eraru Control (Hyperion) 2013年04月19日 12:57

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副長には社長がついてたんじゃなかったのかw
ちゃんと副長の援護してあげてw
Marth Lowell (Durandal) 2013年04月19日 15:00

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>えらっち、無双ですよ!
そこに萌えポイントあるんだねw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年04月20日 02:25

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>マルスCEO。付いてたけど・・・
彼も結構突っ走るところがあった、ですかね。
浮ついた、とも言いますが。
少し周りが見えていない彼は、暴走気味だったかも。
社長も戦闘馴れしていない(という設定ですよね。採掘とかで)なので、ある意味戦闘初心者二人(フネラーレもだけど)だから、タイミングが全くつかめていない、かしら。
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年04月20日 02:31

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