554書き物。風見鶏八(ラスト)

「なあ。」
赤毛のルガディン。グリュックは。
「よかったのか?」と。

そう。なにがよかったのだろう?
黒髪に青い染物をした青年は確かにそう思う。

まず。
親友を巻き込んでいる。
これに関しては、分かってはいた。納得もできる。
しかし。

「ベルに。せいれいさん、せいれいさん、ちょっと寄り道していって。」

と。

銀髪のミコッテの少女が。

精霊の加護を受けるたびに罪悪感が。
だが、彼女の心情を思うに、・・・。
やがて薄紫の瘴気と呼ばれる戦場に。

「総員!まずは突破する。なに、敵陣ではない。敵陣を横から邀撃するために左翼の横手からの援護陣だ。」黒づくめのエレゼンの隊長から。


「よし。行くか。グリュック。」
「おう。」
「先陣は任せよう。」
「おう。」
「私は~?」とミコッテの少女。
「俺達は盾役だ。だから援護だけでいい。ついでに言えば、後ろを走る黒魔道士のサポートを頼む。彼らあっての隊だからね。」とにっこり。
(最前線でこの子にもしもの事があれば、自分で自分を許せないだろう。)


後衛、というか。陣自体が機能しなくなり。

このしばらく後に戦場の様相は様変わりする。

「なんだ?」「きゃああ!」「こいつは・」「・・・。」・・・・・!

左翼の銃撃、及び弓隊の射撃は実に効率的に敵を排除していく。
さらに特筆すべきは「水晶の魔力」と呼ばれる女性。
隊長に任命されるだけあって、その火力は凄まじい。
「かーみなり~。ぽん!」そんな冗談めいたものに。
解る者ならわかるだろう。
上空に展開された恐ろしいほどの緻密で莫大な構成に魔力が注がれ、そのひと言で発動されるのだ。

イカヅチが吹き荒れ、なぎ倒された帝国兵。
しかしながら。

圧倒的な兵力差は否めない。
「おいおい、グリュック、コイツはどうしたもんだろうな?」
黒髪の青年は青く染めた髪に手を。
「おう。」
はあ。
「やっぱ、それだけかよ!」とやつあたり気味に。
左翼の横からの突撃、それも不意打ちにも関わらず、敵は応対、というよりも待ってましたとばかりの。
槍と拳を振るう青年二人を少女が果敢に援護する。
なんだかんだで、LS風見鶏は上手く機能している。

「ベル!俺が突撃するから多少の穴ができるはずだ!」ルガディンの青年。
ナックルをはめ直し。
「お前、無茶しやがるな!」
と憎まれ口を。
正直。ここまで追い込まれるとは。
黒魔道士をメインにし、火力では負けるはずはないと。
そう思っていたが。
帝国は最後尾にとんでもないモノを。
大砲を積んだ獣。それも見たことも無いような。
そんなものを放たれては、防御に薄い魔道士達など、どうにもしようがない。
敵が一枚上手だった、そうしよう。
だからといって、自軍が全滅する理由にはならないはずだ。

シュナーベルはそう考える。まずは・・。生き延びることだ。
去り際の親友の言葉、「そんなコトより、ルーだ。しっかり護れよ!」

そうだ。彼女の想いに俺は応えることを全くしていない。

槍を振るう。

あまりに不誠実ではなかったか?

受け入れることを恐れて彼女の想いを無駄にしてきた回数は?

槍を薙ぎ、青い光に癒され。
この乱戦でも自分を。真摯に見つめ続ける彼女に。

でも。
彼女の純粋すぎるココロが。

そうなのか。

時間がかかってしまったな。俺は彼女を愛している。
解ってしまえば。
そろそろ答えを出すべきだろう。

威勢のいい声で親友が走り出した。「ああ!程ほどにしておけよっ!」と見送り。

獣が近くに。兵士も居る。
回復術式を使った少女は、少し疲れたのか肩で息をしているようにも見え、全くの無防備だ。
護らなければ。

槍を振り回す。
「てやあっ!」
薙ぎ倒すが・・・・。槍が2本。腹に。「あ?」
銀髪の少女が名前を呼ぶのが聞こえる。
・・・このくらい・・・。声に出せたのかどうか・・・

自身の槍を突き立て。
反撃としてもう一人が引き抜いた槍をさらに。
マジいな・・。意識が朦朧としてきた。
「やる・・じゃねえ・・か・・。この・・野郎!」
もう一度。胸に差し込まれる槍。


なんだか遠いところから、愛しい女の声がする。そんな・・そんな、感じだ。
「ベルっ!!!!!!」
ああ、そうだな。
俺は・・。あの子に。自分の気持ちを伝えていない・・・。
ごめん・・。

青い光が癒すのがわかる。だが。到底命は・・。だがせめて・・。
急激に冷えていく体に。
最期の力を与えてくれた。

「はは!相打ちなんて趣味じゃないんだがな。愛する女のためなら、何でもできちまう、って事かな。」
残された体力で自慢の槍の連撃を。
自慢の槍を握り締め。シュナーベルは笑みを浮かべながら崩れ落ちる。

「い!」銀髪の少女は。崩れ落ちる青年の背を。
「いやあああああああああああ!!!!!!!!」絶叫する。
「ベル!ベルっ!!!!!」

あ、そう、今の私なら蘇生術式が・・・
そうよ、これで・・・
構成を編んでいくが・・。上手くいかない。
どうして?おかしいよ?
構成を編みなおし。そして、ほどけていく。
え?
愛しい人の背中を見つめながら。
目の前の獣に気づかず・・・・・・・・・・・・
一瞬で目の前が赤く染まり。
意識は暗闇の奥へ。
べ・・ル・・
至近距離から左肩に直撃した砲弾は、ミコッテの少女の半身を吹き飛ばし、一瞬でその命を。


ルガディンの青年が駆けつけた時には遅すぎた。
「シュナーベル。わが永遠の友。」割れてしまったパールに敬意を。
そして、少し離れた場所に、在りし日の姿とは・・痛々しい姿に。
「ルー。お前ほど頼りになるやつは居なかった。」久しぶりに涙、というものが。
俺にできるのはこのくらい、か。
戦場を忘れ、親友の体を痛ましい少女の左半身の上に添えるように。
親友の背中を見続けたであろう、少女の目を閉じてやる。もう背中じゃない。横にいるのだから。
そして毛布を。そっと。優しくかけて。「お前ら、夫婦みたいだぜ。」
拳にナックルを。
「さてと。」
にっ、とルガディンらしく野生的な笑み。
ザスッ。
親友の槍を二人の横に刺し。
俺も仲間に入れてもらわないとな。
「風見鳥は俺らのモンだ。誰にも邪魔はさせねえ。」
不敵に笑い、敵陣に乗り込む。


そして、戻ってきて。
「ちょっくらお邪魔するぜ。まあくだらない話でもしようや。あの頃みたいに・・。」
そう言うと、墓標にした槍の横で立ち尽くし二人を見守り、護るように。


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感動しました。ありがとう。
Yupa Boleaz (Ragnarok) 2013年04月18日 11:16

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おおう;;
名シーンデジャヴ・・・w
トラウマデジャヴ・・・w
Fizz Delight (Hyperion) 2013年04月18日 11:30

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>ユパ様、どうも。
ありがとうございます。
もう少し上手く描けたらなあ、って読み直すといつも思うんですよね。
今回の「風見鶏編」も描きなおした理由はソコなんですが。
まだまだ手直しの余地はありそうです・・。
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年04月18日 13:48

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>フィズさん、たいちょう・・・。
隊長、体調がすぐれませんか?w
そろそろクライマックスな「決戦」ですが。
亡霊氏はどうしてるんでしょうねえw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年04月18日 13:53

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(´;ω;`)ブワッ
ネコッテ~、ネコッテ~;;

社長はネコッテ大好きです。
けしからん日記。
http://lodestone.finalfantasyxiv.com/rc/diary/entry?e=451908
キマシタワー

アリティアグループはネコッテを応援しています。
Marth Lowell (Durandal) 2013年04月18日 14:18

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>マルスCEO、今回は・・
あまりグロ表現はせず、心情をメインに。
ネコッテ大好きだからって面接で「即!」とか言わないでねw
けしからん日記には一応投稿している自分がいましたw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年04月18日 14:34

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>まゆりさん
孤児ッテのために職業訓練学校でも作りましょうかw
護衛サービスの事業拡大の一環としてw

マルス理事長の誕生である。
Marth Lowell (Durandal) 2013年04月18日 14:40

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>マルスCEO、ですか。
まあ決戦は金曜いやいやwその後の新生からですかねー。
理事長、ですか。まずは理事会つくらんとなあw
今のトコ幹部入れて4人だしw
とりあえず校長はレイ嬢だよねw
あとミコッテ自体、けっこうタフな種族だと思っていますので、校長になったレイ嬢は相当な苦戦を強いるかしらw絶対に学級崩壊とか引き起こしそうw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年04月19日 05:03

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追記。
LS風見鶏のリーダー。シュナーベルですが。
「嘴(くちばし)」です。
風見鶏の行く先を担った彼にふさわしいネーミングかと。
コレだけは、明かしておきたい話でしたので。
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年04月19日 06:42

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もういっこ追記。
グリュックは(幸せ)シュペヒトは(キツツキ)です。
グリダニアの方のネーミングには、主に自然にまつわるネーミングをしています。リムサですと海にまつわるのとか。フネラーレの家名はコスタ(湾)ですし。
そういえばウルダハのキャラってNPCばっかだなあwトリコロールは(三色)って意味だけど(フランス語)彼女は偽名をいろいろ使ってるので好き放題w
ちなみに旧14での某パートナーでしたw この十字架みたいな記号ってどう表記するのかしら?変換できにゃいw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年04月19日 06:53

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>マユリさん
トリコロールとか懐かしいなぁw、魔女に怒られてたけどw
「書き物。幕間。(ウルダハにて2)」でw

十字架って「†」これかな?「ダガー」ですね。
ちなみに自分は「†FF14」って書く派w

「†FF14」「旧FF14」「根性版」いろんな呼び方がありますね。

学級崩壊・・・。カオスw
苦労でヒューランのレイ嬢もネコッテ訛でるか?w(どんな状況だw)
Marth Lowell (Durandal) 2013年04月19日 07:39

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追記
孤児ッテは学費なんて払えないだろうから奨学金かなぁ。
返せなかったら尻尾で(ぇ
流石に尻尾ネタは嘘ですが・・・。

開校したらいろんな方を講師としてお招きしたいですねw
凄腕の人沢山居ますしw
あw、ネコッテだらけの学校だし、ぜひフィズさんを講師に招こうw
Marth Lowell (Durandal) 2013年04月19日 08:00

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>マルスCEO、そーですねw
トリコロールは、というか本名が出てませんがw
†、ダガー、これですね。ありがとうございます!
「根性版」ってのは知りませなんだw
学級崩壊、ってカオスはよく耳にしちゃうんですよ。これまた。
いろんな原因があって、治しにくいものですね。あたしなら、拳で黙らせる、と言いたいところができないw
子供の頃、小学校だったかな。先生に叱られて頭にゲンコツは当然で、しかも家に帰ってその事話したら、親からもゲンコツもらいましたw
だって、イタズラが楽しくってw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年04月19日 08:55

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>マユリさん
「根性版」とは
新生FF14がある以上、現行FF14の修正ソースコードや、
リソースは全部破棄される。
修正しきれない箇所もある。
それでもお客様のために「根性で開発しようぜ」。
ということです。
吉田直樹氏講演 『新生FINAL FANTASY XIV:ゲームを作り直すということ』より抜粋

対義語として「再生版」がある。
再生版=新生FF14
Marth Lowell (Durandal) 2013年04月19日 14:58

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>マルスCEO、にゃるる。
「きやい」ですねw期待しましょうw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年04月20日 02:54

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