556書き物。二人、そして一人。

砂埃まう風と潮風が交互に。
そんな崖の上に。

フェリードック。リムサ・ロミンサとザナラーンを繋ぐ航路。
そして、ブルーグレイの髪の少女マユの実家、というか。
父親が露店を経営していて。
戦乱に、夫を母が参戦してはや3日が経つ。

先日、親友の金髪の少女がパートナーとして青年を連れて来て、びっくりしたものだ。
まあ、それを言えば自分とてその親友の双子の兄と結ばれたのだから。

二人は寝室を共にする事も無く、客室と自分の部屋で。
そしてじいっと。もしくはずっと。自分を癒すように語り掛けてくるマリー。
時には兄の失敗談、時には兄の自慢、など。

そうなのだ。
彼女はただ一人の肉親である、兄の事が心配で心配で仕方が無い。
そうなのだ。分かりきっていた。
だが、彼女はそんなそぶりを見せない。

だが、彼女は兄の事を自分に、こんな事があったんだよ。と。
寝台に二人横たわり、「うん、ヘンだよね!」と笑いながら泣いていた。
「だよね、お兄ちゃんったらさ・・・・」

更ける夜・・・・。


翌日、急に。
「長いことお邪魔してしまいました。そろそろお暇させて頂きます。」
こげ茶色の髪の青年、ファーネ。
どこかの高級な家の出だろうか?その仕草の一つ一つがとても綺麗だ。
慌てて金髪の少女が同じく腰を折る。

「あ、ええ!?いや、そんな!いいのよ。ねえ?父さん!」
「ああ、かまわんよ。ゆっくりしていけ。」
言葉はぶっきらぼうだが、気さくな父。

「いえ。これ以上は。お嬢さんの無事もわかり、私達はこれにて。」
二人そろって頭を下げ。

「ちょっと、マリー!」
つい。

「マユ義姉さん。ちょっといい?」
お腹をさわってくる。
「あ。」
「うん、ちゃんと産まれてくるんだよ?そういえば名前決めたんだっけ?」
いつの間にかカチューシャが無いのに気がつき。
ふわふわした金髪に手をあて。
そしてそこからあごにまで滑らせる。
「うん。女の子だったら母さんから、男の子だったらウルラから。それぞれ名前をもらっているのよ。」

「いいなあ。」金髪の少女は満面の笑みで。
「へへ、いいでしょ?」ブルーグレイの髪の少女は。
「じゃあ、マリーに子供ができたら、あたしが名前考えてもいい?」
「いいわよ。でも気に入らなかったら。」にっこり。
「気に入るの考えるわ。もちろんウルラと一緒にね。」にっこり。

「うん。」金髪の少女は優しい笑みで。待っている青年と共に去ってしまった。



ウルラ・・・。
今は戦場に身を置く夫。
そして、母も。


不安と不安と不安と不安と不安・・・・
潰されそうになる。

自分はこれほど弱かったのだ。
脆かった。
だが。

今、それを知ったところでどうなる?

今、お腹の中に新たに命を宿している。

今、自分が倒れるわけには絶対にいけない。

今、自分の成すことを成せば。それでいい。

だから。

答えはとても単純。

やり遂げる。それだけだ。
わかってしまえば、簡単だ。「やればいい。」シンプルだ。



「んー。でもなあ。どっちだろ?」少し大きくなったお腹をさする。

マユは結構、優柔不断である。

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