463書き物。それから・・・・・・・・・

リムサ・ロミンサ。
海賊国家などと揶揄されるが(事実ではある)、海運に重きを置いているのももちろんである。
希少金属の産出や、その他、海産物であったり、食肉であったり。
巨大産業国家、ウルダハに輸出することで多大な貿易収益を上げている。

そして。その倉庫街。
「先輩、大丈夫かしら?」第一倉庫管理者兼秘書であるところのセネリオにしょっぴかれていったミコッテの女性を哀れみながら。
レイ・スコアットロは潮風に髪がなぶられるのを気にもせず作業にいそしんでいる。
そもそも、この仕事量たるや半端ではない・・。他人の心配をしているくらいなら、人足の一人でも雇った方が疲れが減りそうだ。
とはいえ。

「これ以上の出費は認められません。」と、秘書サマからのお達しである。
実は暴君って、彼女じゃないのかなあ?とか思いながら。
「ちょっと!そっちの荷物はウルダハじゃなくて、エールポート!ああ、それは・・もうっ!」
昼下がり、彼女はその才を買われた事をこれほど残念に感じたことがなかった。
「せんぱい・・・。」
この後に膨大な伝票を処理しなければならない。
あのひとはある意味、すごいなあ・・・。
会計能力は抜群に速い。サボり魔だが・・。


「ね。クォ。」
「はい?」
「結局どうしたいの?」
「それは、個人的な意見、ですか?」
「そうとも言えるし、そうじゃないとも。」
「ここにきてはぐらかしますね。」
「アンタの密偵を引き受けてるのは、あのショコラって子がかわいいからよ?アンタ個人の言いなりになるつもりは無くってよ?」
「承知していますよ、ウィッチケイオス。いや、「目」ですか。」
「好きに呼べば?ただしセンスはどうかと思うけどね。」
「結論からいいます。グランツ・フリューゲル氏にはご退場いただいて、ファーネ君に舞台の主役を張ってもらいましょう。」
「アンタ・・。暗殺とかはナシだからね。」
「もちろんですよ。そんな血なまぐさいマネはできません。
そして、「ファーネ君」はそこに居るんでしょう?「誕生日」には間違いなく連れて行ってあげてくださいね。」
「そりゃとーぜん。で?アリティアさんの方はどうなってるの?」
「そうですね、社長はご存命のようで。「物産」の方は少し停滞しているようですが。本社が問題なければいいんじゃないですか?」
「言うわね。「ご存命」が都合よかったんでしょ?」
「これはこれは。僕の方も手駒が少ないんです。社長を手駒だなんて大それたことは言いませんが、少なからず居てほしい人材ですし。」
「ほう。」
「というわけでよろしくお願いしますよ。」

伝心が切れる。

「なあ、坊主。」
「はい?」こげ茶色の髪の青年。
「お前、実際のところどうしたい?」グレイの髪を風にまかせながら。
「そうですね。やはりケリはつけないと。」
「ああ、わかったよ。」優しい笑み。「魔女」と言われているが・・



砂塵舞い散る一大商業都市。
ウルダハ。
その一角。

「おいっ!社長まだか!?」
「はい・・先ほどグリダニアに、その・・。」
「どうした!言え!」
「物見遊山を続ける、と・・・。」
「何考えてるんだああ!あの社長!!!」
「いえ、その・・。セネリオさんが・・。」
「・・・・・。」沈黙。
「あの?」
「セネリオさん!!!!!くーー!!!エリっさんよか、やっぱセネリオさんだよな!」
「はぁ・・(僕はエリスさんがいいかも・・。)ですよね。」
アリティア物産は今日も平和である。



かちゃり。
そんな音がしたのか?と聞かれればしていない。
窓を開け、身を翻す。
「家」は一階建てなので、身を躍らせることに躊躇は無い。
数分の仮眠の後、寝台を後にし黒髪の少女は「海賊の流儀」を貫くべく動き出す。
そろそろ陽も中天を越えた。
目的の場に。
「おイ。キーファー。」
「はいはい、どうしました?」
「今かラ。」
「はい?」
「ショータイムだ。」
「え?ちょ、ちょっと待ってください、フネラーレ!」

コフィンメイカー(棺桶製造者)を携え、瀟洒な造りとはいえない館に。
「フフ。騙されてあげタよ。その代わり綺麗に笑エよ。」

中天の陽かげりから黄昏を迎える中、グリダニアは仄暗い。
特に館の一室では。

「いやな天気ね。もう少し晴れてくれれば。」シャルロッテは独り言をこぼし、お腹をさする。
「この子がいれば。」
フリューゲル家の嫡男達を廃し、この子に継がせる。そのためには現当主グランツも要らない。
彼には明日調印されるべき書面にサインをすれば用無しだ。そして。
この子はフリューゲルの血を継いでいない。
グリダニアの皇族とも呼べる、カヌ・エ・センナの一族に連なるもの。この切り札はなかなかどうして使い物になる。そして。
グランツは、その事を知っている。はずだ。
知った上で愛妾として扱っている。これも切り札、だと勘違いしているのだろう。
「ふふ。」笑みがこぼれる。



「そろそろね。ベルクライス。」
「はい。奥方様。」
一室。
貴婦人と執事の会話は、これだけだ。


風が。
吹く。
カーテンがなびく。
薄暗くなった室内に蝋燭の燈がゆらゆらと。
「あら?窓は閉めたはずだけど。」
シャルロッテは窓の方に目をやり。
切り取られたような人影を。
いや、影。
「ひっ!」
悲鳴は声にならず、喉からの空気を出すだけに。
口元を手で押さえられ、喉に刃をあてがわれて。
一閃。

「まズ一匹。」
盛大な深紅を撒き散らすターゲットを放り出す。
ゴトリ、と音がしたが気にしない。
「スタッブしてやるから待っテろ。」
返り血が頬につくが気にも留めない。
もちろん脱出経路も作っていないが、気に留めない。「海賊の流儀」を通すのが先だ。
「久しぶりだネ。この感覚。」
昂ぶる血を抑えられそうにも無い。


「あちゃあ・・・。」
しくじった、か。
グレイの髪を翻し、魔女は館の中を走り出す。
侵入を許した。あのボンの思惑通りに事を進めないために半日前倒しにしたというのに。
ショコラからもらった地図(正確には間接的に)で、当主サマまで一直線。
この先はやらせない。
バンッ!ドアを開ける。間抜け面だがこれでも当主だ。敬意は感じないが、すべきことは分かっている。
「寝とけ。」
蹴りが。
豪勢な部屋だが、間抜けが倒れているだけで随分と間抜けな部屋になる。
そろそろ警備の連中も来るだろうが、その前にケリが必要だ。無駄死には避けなければ。

「ヲ。魔女サン。ようやっとノご登場だネ。」
鮮血の滴る短剣を手に。
「・・何人、殺した?」
「一人、だヨ。無駄な殺害は性に合わなイからネ。」
「二人、だろ?お腹の子もいたんだ!知らないとは言わせないわっ!」
「ありゃ。そうだネ。罪は無くとも断罪はあル。そうだろロ?魔女?」
「罰を受けるかどうかは、そうじゃないだろうがあっ!」
「じゃあ、その温イ罪に罰をやろうジャないカ。」
「やれるものならなっ!」
ひゅん。
がしっ。

放ったスローイングダガーを額で弾く。鮮血に顔を染めながら魔女が本気で自分を潰しににかかってくる。
「最高だネ。」


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もしかして、うちの女性幹部たちは社員に人気?w
Marth Lowell (Durandal) 2013年02月08日 17:47

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>マルスさん、どもw
セネリオさんが一番人気じゃないかしらw女帝だし(社長をさておきw)あとは、ショコラのお兄ちゃんと魔女の腹芸を楽しんでいただければ。
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年02月10日 03:45

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