464書き物。それから・・・・・・終局。

「最高だネ。」
舌なめずりしながら。
白磁の人形のような美貌の少女は、返り血と黒髪に彩られ。
ダガーを握り締め、目の前の相手「天魔の魔女」に相対する。

フリューゲル邸。
グリダニアでも有数の富豪の館は、瀟洒などという形容詞が似合わないほど絢爛に造られていて、郊外にあるとはいえかなり目立つ。
その一室。黄昏が迫る中、二人の女性の戦い。


少し前。
「しくじった・・。あたしとしたことが。」一人毒づく。
「魔女」と呼ばれる女性はグレイの髪をゆらし、館に入る。
もちろん、まっとうには入れないので予め持っていた館の地図でアテをつけて。当主の愛妾の部屋から侵入しようとしたのだが。
窓は開け放たれ、カーテンが揺れる。そして。
鉄と生臭さが入り混じった匂い。
「ち、やられた・・。」
部屋に入ると壁の一面を塗りつぶすような深紅。
その紅い海に溺れるように一人の女性。
絶命しているのは一目で分かる。
「この娘は・・確か・・。」妊娠していたはずだ。
容赦ない惨殺に胸が痛む。
見開かれた目をそっと閉じてやり。黙祷をする。
この凶行をおこなった、おそらく「呪眼」を止めねばなるまい。
向うは先に当主の部屋にたどり着いただろうか?いや、まだだろう。
おそらく館の間取りは知らないはずだ。無用な衝突をしないように慎重に動いている、と思う。
少なくとも、この地図は持っていないはずだ。
リムサ・ロミンサのアイツ、「黒猫」こと、クォ・シュヴァルツはそう言っていた。「暗殺などしない。」と。
額面どおり受け取るのは危険だが、ならば暴走する可能性のある「呪眼」に情報は渡さないだろう。
ただ、暴走することを見越していたのは間違いないが。
「あのボンの手駒にされているのは苛立つけどね。これ以上死なせない。」
決意を新たに当主の部屋までの最短ルートを行く。
出会い頭の衝突は悪いけど・・・一撃の拳で気絶させながら。

そして。


「何日ぶりかしら?」
目の前の少女は、返り血を拭く事すらせず白磁の美貌のアクセントにすらしている。
「さァ?」
血に濡れたダガーを後ろに構え、不敵に笑う。
「引いてくれない?」
「どうしテ?」
「これ以上、死体を増やしたくないから。」
「ソレは僕の死体も入ってルのかナ?」
「そこの出来損ないの当主の事よ。こいつも殺させるわけにはいかない。」
「僕は海賊の流儀デもって、コイツラに報いるつもりダ。」
「そう・・。でも、断罪する権利はあなたにはあるとでも?」
「もういいジャないカ。魔女。ケリつけようゼ。レティシア・ノース・ヴィルトカッツェ。天魔の魔女、迷惑来訪者、黒衣森の賢者。」
「わかったわ。フネラーレ。呪眼、葬儀屋、黒衣の天使、背徳のリッラ。リッラ・コスタ。」
腰の長爪を、ジャリン、と音を立てて抜き出し。
「手加減はできないけど?」
ふふ、と獰猛な笑みで返す。「上等じゃないカ。」

まず第一手、呪を紡ぐ。小さな暴風が黒髪の少女を襲う。
「風よ!」
ふン、と軽くいなしダガーではなく、大弓につがえた矢を撃ち出してくる。
その距離、10歩ほど。
長爪で切り払うと、距離を詰める。
「アハハ!さすがだネ!社長とやらもそんな芸当したヨ!」
でもネ。
残り3歩。
弓につがえられているのは5本の矢。
「コイツはどうかナ?」
至近距離からの即射。
「それが?」
放たれた矢は、脚、腕、と突き刺さる。
が。致命傷になる矢は切り捨てて。
「さすガ魔女!」
長爪を振るう。が。
「そンな大振り、当たるものカ。」余裕でかわすが・・
大振りの爪の重さを活かし重心を変え、次に来た回し蹴りを。
まともに胴を捕らえられ、体を「く」の字に曲げる。
「ぐ、ほっ・・。」
「フェイント、って知ってるかい?」
「やルじゃナいか・・。」
もう弓の使える間合いではない。ダガーに持ち替えるが。
「ここらで止めときな。」と後ろ回し蹴りが少女の胸板を穿つ。
「あぐ・・。」数歩吹き飛ばされ。壁に背中を預ける。
「ったく、世話の焼ける子だね。」やれやれ、とばかりに少女を見て。


パアアアァァァン。



乾いた音。そして火薬の匂い。

後ろを振り向く。

蹴り倒したはずの当主、グランツ・フリューゲルの手には。
金属の筒から硝煙を吐き出す武具。

「銃」

「ははははは!ざまあみろ!俺は主だ!お前らなんかに・・っ」
銃を蹴り飛ばし、さらに頭にも蹴りを入れる。
振り返り。

壁に縫い付けられたような少女は「エ?僕・・。」
ごぶっ。
口から溢れ出す深紅。
ずるり。
壁に血の跡を残し、ぺたん。と冗談のような。
出来損ないの人形、あるいは至高のセンスで作られた人形。

手にしたダガーを今も振るおうと・・が。ゴトリ、と床に落ち突き刺さる。
「おいっ!フネラーレ!リッラ!」

「ア・・・。僕・・・。」ごふっ・・。
右腹を撃ち抜かれた少女は、力なく・・・
黒いチュニックに別の黒が混ざっていく。深紅。深すぎる赤。

明らかに致命傷だ。
「なんてこと・・。この後に及んで・・。癒しを!」回復術式。
しかし、少女の流血は止まる事無く床を侵食していく。
「癒しを!」続けるが。止まらない深紅。
「ええい、拉致があかない!」杖を取り出し、高位回復術式を唱える。
「我が手に光を!この者にその光を!」だが、深紅の泉は床に侵食を続ける。
蘇生術式。しかし間に合うだろうか?
「僕・・ネ・・。手を・・・パールに・・」
虚ろな目をした少女は、力の入らない手を魔女に託すように震えながら持ち上げる。
「ああ、わかった。」首から下がったチェーンの先にあるパールを。
少女の生命はもういくばくかの猶予しかない。おそらくは恋人に何か託したいのだろう。

(カルヴァラン?)
(どうした?リッラ?)
(あのネ。)
(ああ?)
(僕、謝らなくっちゃ。)
(何だ?)
(先に、逝くネ。)
(何を馬鹿なっ!)
(それとね。僕、ウソついてたんだ。)
(・・・。)
(あなたの事、ずっと殺そうと思ってた。みんなを殺した船だもの。許せるワケがないでしょ。)
(リッラ・・。)
(でもね。)
(ああ。)
(あなただけは許したい自分がいたの。)
(ああ。)
(こんな僕・・だけど・・・もういちど・・・・さいしょから。あなたを・・愛しても・・。・・いいかな?)

ことり。

少女の手がパールから離れて落ちる。
深紅の泉に濡れ落ちた手を握り。
「リッラ!!」
長い蘇生術式の詠唱を終え、少女を見る。

その命の灯は、眼の光とともに消えゆく・・・・足りないのか!


「リッラ!!!くそっ、こんなつまらない死に方がよかったのかっ!?」


----------コメント----------

とりあえず、弾が貫通してるかのチェックを・・・(えっ
Marth Lowell (Durandal) 2013年02月10日 09:59

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>マルスさん、ソコですかwww
貫通しています。至近距離ですし、「壁に血の跡」というところで表現しています。
フリントロック式だと思われる銃(リムサの)は弾丸が丸なので、貫通能力には劣りますが。
あとは致命傷ですけど、肝臓を射抜かれています。
とゆーか。シリアスな展開に突っ込みはそこなんだwww
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年02月10日 10:11

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追記。
フネラーレが出てくる回には「ALI PROJECT」をBGMにw
彼女のテーマとしては「赤と黒」あたりがいいかしら・・。「刀と鞘」もいいかも・・
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年02月10日 10:31

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変なツッコミですいませんw
フネラーレは書き物シリーズでも人気キャラなので
読者の衝撃は大きいと思います。
Marth Lowell (Durandal) 2013年02月10日 11:41

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デジョンで無問題?
俺なんか何回消炭にされたり鳥葬されたりしたか・・・
銃創なんか気合(内胆)で?
Bob Dalus (Hyperion) 2013年02月10日 12:58

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>マルスさん、いえいえw
そうですねえ。あたしとしても惜しいキャラ。
でも、このシーン無くしては、お話としてのケリがつかないもので・・。
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年02月10日 14:44

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>ぼびー、丸焼けに鳥葬は・・
戦闘不能と死は別物なのぜ。
銃創、気合で治せるモンクとかかっけーなあw
ケンシロウあたりなら・・www
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年02月10日 14:51

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FFが戦闘不能でドラクエが死亡の概念でしたっけ?(HP0)
Marth Lowell (Durandal) 2013年02月10日 15:03

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追記
呪術士ギルドで蘇生してもらおう。
Marth Lowell (Durandal) 2013年02月10日 15:04

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ツイッターってる間に、ずいぶん書いたんでしょうね…
早く、新生来てほしいものです。そしたら、ロドストを
毎日見るんですけどね。。。
Jouram Monde (Sargatanas) 2013年02月10日 18:59

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>マルスさん、どもw
そうですね。
戦闘不能、と死では明らかに差をつけていますね。書き物。ではFFなので・・死は死です。
呪術で蘇生って、なんかゾンビっぽくwww
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年02月11日 06:37

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>ジョーラムさん、おひさw
そうです、今回のお話は3つの視点から段々まとまっていきますので。
10とか書いてあっても、さらに数話があります・・。
新生かーまずはβでやってみたいですねえw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年02月11日 06:40

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