383書き物。いろいろな事情のー4。

移動術式。

テレポ、もしくはデジョンと呼ばれるこれらは、体を一度分解して、再構築、
という学者だか、魔道士だかが、かなり昔に考案、そして一般に認知された。
エーテライトという、不思議な魔道の青い石の力を使い、そこを基点として「飛ぶ」のだ。
ただ、その力の恩恵には「アニマ」と呼ばれる「何か」があり、それを使い切ると使用できなくなる。
そのアニマも数日すれば回復するらしく、使い切れば終わり、というわけでもない。

そして、そのエーテライトの付近は冒険者達のたまり場・・・(ギルド以上に)
そのど真ん中に、二人の冒険者が飛んできた。

一人はブルーグレイの髪を短めにした、10代半ばの少女。
もう一人は、クセのある金髪を同じく短めの少年。


ここはグリダニア。
静謐な森のなかの街。同じく街は他の街、ウルダハや、リムサ・ロミンサに比べれば静かな方だろう。

が。

二人は飛んできた瞬間、もう少し言えば、飛んできた数秒後。

唇を重ねていた。

「おおおお!」「やるね!」「にゃあ!」「すげえ!」「いいなあ・・。」「お・・。」

各種様々な声が聞こえ・・・。

少女、マユは現実に戻る。
ぐああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!
見られてるじゃないのよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!

相手の少年は気にせず唇は離さず、さらに抱きしめる。

「ん。」
もう、抵抗はできない。

少年ウルラは、しばらくキスをした後で、白々しく。
「いや、皆様方。お恥ずかしいところを。」と、のたまった。

パチパチパチパチ・・・・・
と、いくつかの拍手と口笛やなんだかんだで、歓迎される。中には妬む声も聞こえたがしれたものだ・・。

そして・・。

「あんた、バカ?」
ジト目で見てくる妻に対して。
「イヤならもうキスはしないけど?」と夫は平然と聞いてくる。
「うーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

真っ直ぐカフェに向かう夫の少年に、顔を上げることなく、というか、上げられずついていく。

「キスは・・・。その。・・・欲しいです!」顔を真っ赤にしながら、人の居なくなった通りで答え・・。
「式だと、それこそみんなの前でやるんだよ?大丈夫?」
「あ・・・・・。」
「だろ?」
「うーーーーーーーー!」
「まあ、とにかく式の衣装合わせだね。おれはオーダーするかもしれないから、少し予算の面でも話さないとね。
レンタルできれば一番だけど。家の事もあるし。」
「そうね・・。あたしは多分レンタルできるとおもうんだけど・・・。」
「それと、早めに決めて連絡しないと、みんな来てくれないよ。」
「あ、そうか・・・。」
「まあ、ミューヌさん、えらく気合入れてたから式場自体は、もういつでもOKな勢いじゃないかな。
後はおれ達の衣装ってところと、来客って感じかな。」
「じゃあ・・。3日後くらいにする?」
「そうだね、保険含めてそのあたりかな。」

カフェが見えてくる。


中に入ると。

純白のドレスが20着以上壁にかけられている。

「へ??」

「あ、マユちゃーん!」
カナーリエンフォーゲル、愛称カナル。エレゼンの少女が抱きついてくる。
普段の接客用語じゃなく、普段使いの言葉で。

「おめでとー!!!」と、さらに抱きしめる。
あ、あ、あ、ありがと・・。
とりあえずの返答と、このドレスまみれの店内を見回し。
「あ、これね。」と店内を同じく見回すカナル。
「えーっとね、イーリスのチョイスなんだけど、寸法直しが要るかもだから。あ、それと式はいつ?」
あ・・
「ええと・・・・。」
「そうですね、おれの服も考えて、3日後あたり、ですか。」
「ミューヌさーん!3日後だそうです!全力でやりましょう!」
エレゼンの少女は普段では見たことも無い元気さだ。



「それじゃ、張り切るかね。」と女主人。

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