125書き物。ZERO-3

「ああ、レティシア。息災か?」
黒衣森の片隅。
2年ほど経っただろうか。懐かしい顔につい声をかけてしまう。

「シ・ヴェテックトお師さん!お久しぶりです!!」
緑の濃い森の中。長い毛の尾を持つミコッテは優しい笑みで。
「ああ、そうだな。元気か?どうにも小難しい言い方をしてしまう。悪い癖だな。」
と少し照れたような、嬉しいような、申し訳ないような。

「そんなの!おかげでグリダニアの言葉も分かりましたし!」
グレイのストレートの髪は少し伸びただろうか?身長も伸びたみたいだ。
数年の間に成長する娘を見るのは、未婚の自身としては、まさに我が子のようでもある。
ましてや、二人の女性から託されて、しかもその手を引き剥がされては。
「いや、私の言い方は少し堅苦しいからな。」
「そうなんですか?お師さん。」と首をかしげる少女。

「ところで、私の家には行ったのか?」いまさらだが。
「はい、お師さんの考えはスグに分かっちゃたので!場所もすぐに分かりました。」
と自慢げ。
「本当に、よく出来た弟子だ。誇りに思う。」
「えへへw」
「ところでな。今日来たのは他でもない。」
「はい?」
「今日の修練は大丈夫なのか?」と心配する。
「ええ、こっちの師匠も偏屈なんですけど、おかげで時間は好きに使えるんです。」
「なんだ、偏屈なのは私だけでもないようだな。妹も笑うだろう!ハハハ!」
「お師さん。」
笑い声をあげる師に少しびっくりして。
「いやすまない。お前には悪いが妹は自由奔放なやつでな。期待を裏切るというか、な。
自分のしたいことをする子だった。私も実を言うとだ。その気持ちに今は共感できるんだ。」
「。。。」
「で。もしお前がよければ、妹の弔いについてきてくれないか?今回で3度目になる。」
「それって!!」
「ああ、おそらく。お前の母の弔いにもなるだろう。まだ行ってないのだろう?」
「行きます。」

暗い森を抜け、日が落ちるまでにはたどり着く。
「ここで・・。ぐぁう!」と少女は過去の記憶を引きずり出そうとするが、突然の頭痛に頭を抱える。
「大丈夫か?」とはミコッテの幻術士。優しく頭をなでてやる。
「はい、ありがとうございます。」
「無理に嫌なことを思い出すと、精神にキズを負う。やはり、やめておこう。私はグリダニアには入れない身だ。近くまで送る。」
「いえ。是非させてくだい。母にもちゃんとしたお別れをしていません。」

もう森は名前のごとく黒い衣を纏い始め、辺りには鳥や虫の鳴き声が時折響く。
この時間に森を行き来するなど、一般人ではまずありえない。

薄暗い森の中、精霊に声をかけ始める。ミコッテの幻術士は眼を瞑り、語り掛ける。

「鎮守の森の守護、偉大なる大樹、我が敬う精霊、この森の代弁者よ。今、少しの会話を所望いたします。」とミコッテが頭をたれる。

すると、街道?の近くの樹がのそりと、動き出す。
「ひっ!」と少女が倒れる。

「大丈夫?」「はい・・。」

「我が妹と同じく、御身に繋がれた魂の息女との謁見にまみえました。よろしいでしょうか?」
「どうなっているんですか?」と少女。
「お母さんに会いたいのでは?」と幻術士。

「ねえさん!」
いきなり。この声は。「ヴィント。ありがとう。今、やっとあなたの救った子を連れてこれた。」「気にしないで。」

「レティ?」ああ、母の声だ。
「ちゃんとしてる?」もちろんだ。声もない。
「母さん。」

「このヘンで終わりだクポ。」と3人目の声。

白い、そして丸い生き物が飛んできている。
「これ以上はダメだクポ。」
「・・・そうだな。」と幻術士。
「どうして?」納得できない少女。

「偉大なる森の守り手よ。この度は感謝をすること、極まりない。願わくば、また次の対話を許してくださるよう。」

ミコッテの幻術士は大樹に礼をし、弟子の非礼に詫びていた。

「トレントに取り込まれた人と対話をするのは、とても危険だクポ。同じく取り込まれてしまうクポよ。」
「そんなっ!」と激昂する少女に、ミコッテの師匠は言う。
「コレの言うとおりだ。私も最初は取り込まれそうになった。でも、逝った人に想いは伝えれる。
一言でも伝えたければ、私は悪くないと思っている。だが、お前はもう来るな。感情が激しいヤツは必ず取り込まれる。」
「そんなっ!」
だから、ダメだというのに・・・。
「モーグリ、悪いがこの子をグリダニア近くまで連れて行くが、先に記憶を消してやってくれ。」
「ちょっと!お師さん!」
「忘れるクポ!」
「お前のためだ。悪かった。もう二度と会うことはないだろう。」



目が覚めると、いつもの小屋だ。いつ頃からか使っていた森の木の中に作られていた小屋。陽はまだ昇っていないが、そろそろ昼食にしようか。
竿を持って部屋を出る。戸を閉める。あれ?
今日は格闘の鍛錬だったか?この時間だと師匠は怒るだろうか?
「うん、まあ、あの人ならどうもでもいいかな。」




遠くから一人のミコッテが。
「短かったが、楽しかった。後は活躍を聞いて、楽しむとしよう。」
淡い光に包まれて消える。


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あ、導師生きてたw(良かったー)
Alto Springday (Sargatanas) 2012年01月14日 13:37

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>アルトさん、いらっしゃい♪
はいw生きてます。
ただ、記憶の部分で自身との関係を切ってしまったので、やりきれないでしょう。その決断は・・・。
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年01月15日 08:12

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